ショルダー:ウートピ×LDK編集長対談(後編)

ネットも雑誌も信じられない貴女へ トコトン本音で応えるテスト誌『LDK』

ネットも雑誌も信じられない貴女へ トコトン本音で応えるテスト誌『LDK』

ボーッとスマホを見ているとタイムラインに流れてくるネットの記事。「結婚できる女性の特徴」「男が思う本当にいい女の特徴」なんて記事を(興味がなくても)ついクリックしちゃう。雑誌を手に取ると相変わらず「今年はこれがはやる」「マストバイの化粧品」といったコピーが躍っている。

「くだらないなー」なんて思いながらもつい読んじゃうけど、そもそも私、結婚したいんだっけ? 有名ブランドのコスメってなんとなく安心感があるけれど、本当に私にとって「マストバイ」なの?

そんな女性たちのモヤモヤや本音に応えているのが、女性の生活に関わるすべてをテストする女性誌『LDK』です。出版不況の中、グングン売り上げを伸ばしてまさに「一人勝ち」の状態。

今、なぜ女性たちから支持されるのか? その秘密を、同じく女性に向けて日々情報発信を続けているニュースサイト「ウートピ」編集長の鈴木円香が、前編に引き続き『LDK』の木村大介(きむら・だいすけ)編集長に話を聞いてきました。

ステレオタイプ企画に読者も疲れてる

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木村大介編集長(以下、木村):前半は広告の話だったので、後半はコンテンツの話をしていきたいなと。前半で「ウートピは既存の価値観に乗らない企画を作っている」というお話がありましたが、読者をラクにする以外にも理由はあるんですか?

鈴木円香編集長(以下、鈴木):そうですね、ステレオタイプに乗っちゃった企画ってやっぱり読まれないんですよ。モテテクはさすがにやらないけれど「合コンでうまく振る舞うコツ」みたいな記事を出しても読まれない。読者も食傷気味になっているんでしょうね。

最近は原点に戻って読者ヒアリングを大事にしています。20代後半〜30代の女性を20人くらい呼んで「恋愛で悩んでいることは?」とか「SNSはどのくらい見ているの?」とかいろいろ聞くんです。編集部員も読者と同世代なので雑談して、そこから出たリアルな意見をもとに企画を立てています。

木村:うちも読者モニターさんたちを活用して同じようなことをしていますね。会社にお越しいただいたり、こちらから伺ったりして、ヒアリングや座談会を開催しています。これらを通して、主婦の興味の核となるものを探っていく。「収納」って主婦のキーワードなんですが収納の不満などを聞いて、拾ってきたものを切り口にしていますね。

鈴木:リアルな声は本当に大事だなと思いますね。

木村:読者も疲れているんですしょうね。何が本当か、本音かわからない。ウェブも雑誌も信じられない。そうした時にスタンスを主張して出すというのが大事だと思っていて。「誰のために出すか?」って言われた時に「あなたのためです」って言い切れるメディアは少ないと思うんです。

決めるのは読者、そのための情報を届ける

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鈴木:今年に入って「編集長コラム」の連載を始めたんです。「産むことにメリットって、本当にあるんですか?」というタイトルで、ウートピの32歳のプロデューサーに「産むことのメリットとデメリット」を教えるっていう企画なんです。

木村:読んでいます。あれ面白い企画ですよね。なぜあの連載を始めようと思ったんですか?

鈴木:産むことに対する本音を明らかにしたいなと。少子化の中で「産むことが良し」とされる風潮が強くなっていると思うんですが、産むデメリットもリアルに知りたいし、誰も言えなくなっている。子どもを産んでいない人はそもそも発言権がないですよね。何を言っても「産めばわかるよ」っていう魔法の言葉で口を封じられちゃう。

木村:なるほど。あの連載で書かれているのは読者が本当に知りたい情報ですよね。どんなことを意識されて書いているんですか?

鈴木:読者が何を言われたがっているかを突き詰めて考えて書いていますね。煽ることにならないように細心の注意を払いつつ。読者が産まない選択をした場合に「あの記事を読んで子どもを産まなかったけれど、後悔した」みたいにならないように。読者の判断材料になるかを考えていますね。

あとは、タイトルを考える時にも釣りワードは入れないようにしています。「このワードを入れれば10万PVは固いんだけどな……」っていう誘惑もあるんですが(笑)。

この連載に限らず「産む」「産まない」、「結婚する」「結婚しない」などたくさん選択肢ってあると思うんですが、そのあたりを納得して選べるような見せ方をしています。読者がジャッジできるように。

木村:「ウートピ」と『LDK』の共通点は、読者がちゃんと決められるようにするための情報をごまかしや嘘偽りなく提供していくという部分ですね。

これからやっていきたいこと

木村:『LDK』にくる前は『MONOQLO(モノクロ)』といった男性向けの批評誌をやっていたんです。面白いなと思ったのは、男性は見たことがないものを提案すると喜ぶんですが、女性は『LDK』が「よい」と判定したものを自分が持っていると嬉しいという反応なんですね。「やった!私が使っている化粧水が1位だ!」っていう反応なんです。

鈴木:それは面白いですね。読者は「私が使っている化粧水は大丈夫なの?」って確認したいのかな。

木村:雑誌をカタログとして見ているわけではないってことなんでしょうね。

鈴木:ウートピの記事でも、ただ単にアイテムを紹介する記事は読まれないんです。女性誌のようなキレイなコンテンツを出しているだけだとウェブは難しい。「アラサーが使ってよかったグッズ」とかひねりを入れたり、切り口を工夫したりしないというのはありますね。

木村:読者の生活スタイルに刺さるかを考えるという部分は一緒ですね。

鈴木:木村編集長はこれから『LDK』をどうしていきたいですか?

木村:いろいろなジャンルにおいて、ものの本質に触れられてこなかった世界がたくさんあると思うんです。その一例がビューティー。ファッションや「今年のトレンドはこれ」とか。誰が言い始めたかわからないけれど。やっていないジャンルは山ほどあるし、広告まみれでよくわからない世界はまだある。そのあたりのことは読者からも望まれているんじゃないかなと思うので、いろいろなジャンルに挑戦したいですね。

鈴木:なるほど。ウートピは、目指す方向は見えてきたので、それに向けて着実に一歩一歩進んでいきたいですね。読者のほうをまっすぐ向くというのは本当にそう思います。読者にまっすぐ向くのは一番かな。これまで以上に突き詰めて。

ウェブって、一つのボールを投げるコストが低いから寄り道が許される世界ではあると思うんですが、これまで散々寄り道をしてきたので、これからは寄り道はあまりしないで目標に近づいていきたいですね。
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前編はこちら)

(構成:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:池田真理)

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