人生100年時代と言われる現代ですが、長生きをしても「健康」でなければ自分の満足のいく人生を送れないかもしれません。健康を維持しながら長生きができれば、より自分らしい人生プランを考えることができるのではないでしょうか。
健康に生きるためにいま注目されていることのひとつが「睡眠」です。睡眠時間の長さだけではなく、「睡眠の質」について気にしている人も増えています。スマートウォッチのようなウェアラブルデバイスで睡眠の状態をチェックしたり、運動やストレッチ、サプリメントや飲料などで睡眠の質を向上させたりしている人もいます。
「健康長寿」を目指し、最先端の研究を学ぶYoutube番組「生命科学アカデミー」では、今回、ゲストに筑波大学の柳沢正史先生をお迎えしました。同プログラムのHIROCO学長が聞き手となり、「睡眠」の奥深さについて迫ります。

柳沢先生(左)とHIROCO学長(右)
昼間に眠くなるのは病気!原因4つ
柳沢:昼間に眠くなってしまう原因は、頻度の高いものでいうと、だいたい4つくらいあります。ひとつは、働き世代の日本人で一番多い「睡眠不足」。これは要するに、夜の睡眠を十分に確保しない生活習慣が睡眠不足だと考えていいです。「行動誘発性睡眠不足症候群」という名前までついていますので、睡眠不足はもう病気だと考えたほうがいい。
──はい。
柳沢:それから「不眠症」ですね。不眠と睡眠不足の区別ができない方が多いと思うのですが、不眠症と睡眠不足は全然違います。不眠というのは、「睡眠時間は自分なりに確保しているけれども、思うように眠れない。寝ようとしても思うように眠れない」という状態です。これはこれで、非常につらい。患者さん本人にとってはつらい疾患で、それをともなっているために昼間眠いという方もいるわけです。
それから、これもよく聞くと思うんですけど、3番目は「睡眠時無呼吸」と呼ばれている状態です。いびきの酷いやつですね。いびきをかいていて、吸気のとき、息を吸ったときに、呼吸が止まってしまいます。
──柳沢先生も無呼吸っぽいと。
柳沢:実は、私も軽症の無呼吸があって、主に仰向けのときに症状が出ます。仰向けでの吸気のとき。吸気のときは、気道の内圧がマイナスになるわけですよね。だから息を吸えるのですが。内圧がマイナスになったときに舌が後ろに落ちてしまい、仰向けの状態で気道がピタッとふさがってしまう。それが睡眠時無呼吸です。
──そういうときは、いびきも大きくなるのですか。
柳沢:いびきが聞こえる人がほとんどだと思います。ただ中には、いびきらしいいびきをかかずに無呼吸になっている人もいるので、要注意です。8~9時間眠っていてもすごく眠い……と感じる人は、これを疑ったほうがいいです。「パートナーがいびきをかきます」とパートナーに言われているような人は、無呼吸の可能性がかなり高いですね。
──そういう方は、一度ちょっと病院に行かれたほうが良いかもしれないですね。
柳沢:そうですね。簡単な検査ができるので。それから4番目は、これは若者に多いんですけど「リズム障害」です。
──リズム障害?
柳沢:体内時計が狂ってしまうことです。特に、時計が遅れるほうが多いのですが、朝起きられないんです。それで夜は、深夜になってもなかなか眠れない。要するに、酷い夜型が高じていってしまう。そうすると、昼間眠くてしょうがない! となります。
──それも障害だったわけですね。
柳沢:そうですね。実は、いわゆる不登校になってしまう日本の中学生、高校生の半分くらいはリズム障害ではないかと言われています。朝起きられないっていうのがひとつのきっかけだと、よく言われているのです。
──先生のご研究の経験から、「昼間の眠気は病気」という衝撃的なキーワードが出てきました。眠ることというのは本当に大事な、健康長寿の要になります。軽視せず、しっかりと自分で整えて、日々過ごしてまいりましょう。
◆まとめ
①睡眠不足 ②不眠症 ③睡眠時無呼吸 ④リズム障害
→どれも病気として扱われる。だが自覚症状がない場合も多い。
何か心当たりがあれば、一度診察を。
(第8回へ続く)
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