「逆流性食道炎」で悩む人の声が数多く届いています。そこで、消化器病指導医・専門医、内科指導医で、著書に『胃は歳をとらない』(集英社)がある三輪洋人(みわ・ひろと)医師に連載で詳しいお話しを聞いています。
前回は、逆流性食道炎の症状への東洋医学によるアプローチについて、漢方薬やヨガのポーズを紹介しました。今回は、医学的にエビデンスが報告されるツボケアについて教えてもらいましょう。(これまでの記事の、症状、診断法、検査法、治療法、処方薬や市販薬、セルフケアなどについては文末のリンク先を参照してください)
ハリやお灸は胃もたれ、胃痛、胸やけを改善する
——近年、医療におけるハリやお灸が注目を集めていると聞きます。胃の不調にも有用なのでしょうか。
三輪医師: 昔から、ハリやお灸でツボをケアすると胃腸の不調を改善すると言われています。近年では、その有効性に関する医学的エビデンスが、国内外から数多く報告がされています。
とくに、内視鏡で検査をしても病変が見つからないのに、胃酸が逆流するように感じる「非びらん性胃食道逆流症」(第3回参照)や、胃もたれや胃の痛みを感じる「機能性ディスペプシア」の治療に関して、エビデンスレベルが高い報告が発表されています。
そのことから、ハリやお灸はツボに行うものなので、逆流性食道炎や機能性ディスペプシの改善、食欲不振、消化不良、胸やけ、胃もたれ、みぞおちの痛みなどに、患者さんが自分でツボを押すなどでケアすることは有用と考えられます。ただし、押しかたや押す回数が過度にならないように注意してください。
胃の不調に試したいツボ3つ
——セルフケアとして実践できるツボはありますか。
三輪医師: 次のツボはどれも、胃もたれ、食欲不振、消化不良、胃痛、おう吐、けん怠感などに加えて、精神的イライラや憂うつ感のケアに作用するとされます。
それぞれ自分でそっと押してみて、イタ気持ちいいところを探してください。押しやすい指の腹で、5~10秒を1回として、3~5回押し回しましょう。また、ツボの周囲を指先や手のひらでなでる、カイロで温めるのも有用です。
・中脘(ちゅうかん)……おへそとみぞおちの真ん中あたり、体の中心線沿いにあります。このツボ付近は、食べ過ぎたときなどに、普段から何気なく手のひらでなでている人も多いでしょう。
・胃兪(いゆ)……背中側、両手を降ろして左右のひじを結んだ線と背骨の交差点から、おや指の幅2本分ほど外側に離れたところ。左右にあります。胃に不調があると、このツボや周囲に緊張がみられるといわれます。また、胃の背中側に両方の手のひらをあてて、上下にそっとさするのもよいでしょう。
・足三里(あしさんり)……ひざの外側の下にあるくぼみを見つけ、そこから手のひとさし指から小指までをそろえた幅の分だけ下がったところ。左右にあります。
足三里は数多いツボの中でも万能であり、とくに、胃腸の不調に対応することで知られています。吐き気、下痢、おなかの痛みにも作用します。
江戸時代の俳人・松尾芭蕉が著書『奥の細道』で足三里について記していることも有名です。手の指で押すほか、デスクワーク中などには、もう一方の足のかかとでさする、押すのもよいでしょう。
聞き手によるまとめ
胃の不調ケアとして、ハリやお灸はエビデンスが豊富だということです。そこで、3つのツボ押しを自分で1日に3~5回、2週間試してみたところ、消化不良、胃もたれ、胸やけが緩和したように感じます。日常の胃の不調ケアとして、自分ですぐにできるこれらのツボを覚えておきたいものです。
(構成・文 品川 緑/ユンブル 画像・ユンブル 転載禁止)