心身医学専門医で心療内科医、また診療に鍼灸を取り入れることもあるという野崎京子医師に、メンタルケアに覚えておくとよいツボについて連載で尋ねています。前編の「食事や睡眠がつらい…五月病ケアのための手と腕のツボ4つ」に続き、今回・後編は「上半身にあるツボ」について教えてもらいましょう。
6月の気圧の変化にも注意
前編で、「五月病は、医学用語ではなくて通称であり、医療機関を受診すると、症状によっては適応障害、抑うつ状態、うつ病などの診断を受けることがある」ということでした。近ごろでは、5月は何とか乗り切ったけれど、6月の梅雨の時期になって気分や意欲の落ち込み、食欲がない、不眠でつらいといった症状が強くなる「六月病」が注目されています。
野崎医師は、「六月病も五月病と同じく通称であり、医学用語ではありません。梅雨シーズンの気圧の変化や寒暖差など、気候が影響することもあるでしょう。5月、6月だからしんどいということにあまりとらわれずに、おいしいと思うものを食べて、早めに寝るようにして、ウォーキングやストレッチなど軽い運動をしながら、ツボ押しも含めて手軽に自分でできそうな方法を実践しましょう」と話します。
ツボを押しながらゆっくり深呼吸を
次に、自分で押しやすい位置にある体のツボを紹介してもらいましょう。「これらの『上半身のツボ』は、押しながらゆっくりと深呼吸をすると気持ちが落ち着くことがあります。寝つきが悪いときは、布団の中で試してみてください」と野崎医師。ツボの押しかたや位置については、前編の野崎医師のアドバイスを参考にしてください。
・膻中(だんちゅう)
「膻」は邪気をさえぎって心臓を守る、「中」は囲い込むという意味があることから、心臓を守るツボとして知られています。左右の乳頭を直線で結んだ中央にあります。
心臓のドキドキ、息切れ、気分の落ち込み、意欲の低下、不安感、恐怖感、憂うつ感、イライラなどの緩和に働きかけます。めまい、せき、たんなどにも有用とされています。
・鳩尾(きゅうび)
このツボの周囲が鳩の尾の形のようなので、こう呼ばれると言われます。いわゆる「みぞおち」にあります。左右のろっ骨が交わるいちばん下から、2~3センチ下へ移動したへこみの部分。
憂うつ感やイライラ、怒りによるこわばりが現れやすい場所で、ストレスがあって思い出すと眠りにつきにくい、消化不良だ、心臓がドキドキするというときに押す、さするなどしてみてください。
・中脘(ちゅうかん)
「脘」とは胃袋を意味し、このツボは胃袋の中心を示しています。上で紹介した「鳩尾」(みぞおち)とおへそを縦に結んだ線の真ん中にあります。また、おへそから、手の小指からひとさし指までをそろえた幅の分を上がったところ。
胃のトラブルの特効ツボとして知られています。憂うつ感を伴う胃もたれ、消化不良、胃痛、吐き気、便秘、下痢、全身のだるさ、めまい、立ちくらみ、不眠、疲れやすさなどの緩和に働きかけます。
・腎兪(じんゆ)
「兪」とは穴やくぼみを意味し、腎兪という名称は、腎臓の機能を調整するツボを示しています。背骨とウエストラインが交差するところから、おや指の幅2本分ほど外側。左右にあります。
ストレスや疲労による全身の緊張、こわばりをほぐして血流を促します。憂うつ感、だるさ、冷えによるトラブル、また、腰の重だるさ、痛みの緩和にも働きかけます。
このツボを中心に、手のひらで左右同時に上下にさするとよいでしょう。冷房による冷えが気になるときにもここを刺激してみてください。
聞き手によるまとめ
さっそく上から順に、胸の中央にある膻中から、みぞおちの鳩尾、胃の真ん中の中脘、背中側の腎臓付近の腎兪と、深呼吸をしながらそっと指圧をしたり、さすったりしてみました。緊張がゆるんで、ふわっと気分がほぐれるように思います。位置もわかりやすく、いつでもどこででも押しやすいので、すぐに覚えることもできます。試してみてください。
(構成・取材・文 藤井 空/ユンブル 画像:ユンブル 転載禁止)