『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』ミョンソクが理想の上司だと言われる理由【大山くまお】

『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』ミョンソクが理想の上司だと言われる理由【大山くまお】

Netflixで配信中の韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』が世界で大ヒットしている。Netflixの週間視聴時間トップ10(8月15~21日)は7743万時間を記録して非英語ドラマ部門の1位。日本でもこのところずっと「TV番組TOP10」の1位を独走中だ。

ストーリーは、驚異的な記憶力を持つ自閉スペクトラム症の新米弁護士ウ・ヨンウ(パク・ウンビン)が、さまざまな裁判での弁護を通して、弁護士として、人間として成長していく姿を描くというもの。

Netflixシリーズ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」独占配信中

ウ・ヨンウの愛らしさ、法廷での活躍、ほのかな恋愛模様、周囲の人たちとの温かな交流などをコミカルな演出で見せつつ、彼女が関わる事件を通して、男尊女卑、家父長制度、受験地獄、障がい者や同性愛者への偏見など、韓国社会が抱える諸問題を見事に描き出している。

ウ・ヨンウの活躍には周囲のサポートが欠かせない。後に恋人になるイ・ジュノ(カン・テオ)、彼女を男手ひとつで育て上げた父親のビョンホ(チョン・ベス)、親友のグラミ(チュ・ヒョニョン)、同僚のチェ・スヨン(ハ・ユンギョン)など、ウ・ヨンウのまわりには良き理解者が何人もいる。

注目したいのは、直属の上司にあたるチョン・ミョンソク弁護士(カン・ギヨン)だ。いつも細い縁のメガネをかけてオーダーメイドのダークスーツで決めているミョンソクは、大手弁護士事務所ハンバダでシニア弁護士を務めるエリート。とはいえ、エリートの嫌味な部分はまったくなく、突拍子のない言動をする部下のウ・ヨンウに理解を示し、優しく指導している。

韓国ではミョンソクの人気が爆上がりで、“現実にはいない理想の上司”という意味の「ユニコーン・メンター」という愛称がつくほど。では、ミョンソクがどんな理想の上司だったのか? ポイントごとに振り返ってみたい。

部下を認める・否定しない

当初、ミョンソクは自閉スペクトラム症を持つウ・ヨンウの入社を歓迎していなかった。ところが、自分が気づかなかった裁判の争点をウ・ヨンウが発見すると、「お見事、すばらしい」と素直に賞賛。チームの一員として迎え入れる(第1話)。

その後も、ベテラン弁護士としてアドバイスをしつつも、ウ・ヨンウの意見や提案を認めている。自閉スペクトラム症の被告人とコミュニケーションを図ろうとしたときは、ウ・ヨンウの提案どおり、被告人の好きな曲をチームで披露。ミョンソクはラップまでやってのけた(第3話)。経験の少ない部下に対して頭ごなしに「そんなやり方じゃダメだ」「俺のほうが正しい」と言わない柔軟さが素晴らしい。

チェ・スヨンとミョンソク。Netflixシリーズ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」独占配信中

部下を守る

法廷は検事と弁護士、あるいは弁護士同士の激しい戦いの場である。ミョンソクはいつも盾になってウ・ヨンウを守っていた。

検事がウ・ヨンウの自閉スペクトラム症を繰り返し指摘したときは、「関係のない差別的な発言で弁護人を侮蔑しています」「何のつもりですか」と厳しい態度で異議を申し立てている。単なる法廷でのやり取りではなく、非難や偏見の目からウ・ヨンウを守ろうとしていた。依頼人がウ・ヨンウを外すよう要求したときは真正面から抵抗。ハンバダの代表に「差別です」とかけあった(第3話)。初めての裁判で緊張のあまり返事ができないウ・ヨンウの代わりにこっそり返事をしたこともあった(第1話)。

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ウ・ヨンウが自信喪失して無断欠勤したときは、彼女の立場を人知れず守っていた。部下を守るのは上司の重要な役割である。ちなみに、復帰を宣言したウ・ヨンウがミョンソクの優しい嘘の中にある矛盾点を指摘して去った後、ミョンソクが微笑みながら言った「一言多いな」というセリフはカン・ギヨンのアドリブなのだそう(第4話)。

怒らない・叱らない

とにかくミョンソクは怒らない。怒らないだけでなく、部下を叱りつけることもない。注意すべきところは注意するが、そもそも声を荒げないのだ。たとえば、部下がいきなり真夜中に電話をかけてきたらどうだろう? いくら仕事の話とはいえ、腹を立てたり、非常識な振る舞いを叱ったりする上司は少なくないだろう。

しかし、ミョンソクは怒らない。ある日の深夜午前3時過ぎ、裁判のポイントについてひらめいたウ・ヨンウは、いきなりミョンソクに電話をかけてまくしたてるが、彼は「みんな寝てる時間じゃないかな。鳥も子羊もミョンソクも」と可愛いことを言い、「昼間にやるべきでしょ。では明日。おやすみ」と穏やかに電話を切る(第8話)。この「鳥も子羊もミョンソクも」もアドリブらしい。

なお、一度だけミョンソクが感情を露わにしてウ・ヨンウを怒ったことがある。このときはかつて弁護をした相手に逆恨みで狙われていると感じていたミョンソクがノイローゼ気味になっており、その上、大きく体調を崩していた。普段は大声を出す相手を見ると極端におびえるウ・ヨンウが「怒ってますか?」と不思議そうに尋ねているが、彼女もミョンソクの異常を感じ取っていたのだろう(第12話)。

責任を取る

ミョンソクは部下に弁護を任せることはあるが、彼女たちに任せっぱなしにすることはない。必ず自分でサポートし、何かトラブルがあれば責任は負う。

脱北者の女性についての裁判では、ウ・ヨンウが法廷で女性に不利な証言をした医師の偏った考えを引き出すが、そのせいでハンバダは医師の団体との莫大な取引を失ってしまう。同僚のスンジュン(『愛の不時着』でヒロインの兄役だったチェ・テフン)に怒鳴りつけられたミョンソクだが、弁護を行ったウ・ヨンウとチェ・スヨンを責めず、「新人が謝るな。私のせいだ」と責任をかぶった上で「“たかが公益案件”とか“たかが脱北者”と考えるのはよそう」「頑張ろう」と彼女たちの熱意を認めて励ましてみせた。

ショックを受けつつ立ち去るミョンソクの背中をチェ・スヨンは「胸がいっぱい」のポーズで見送り、他人にあまり関心を払わないウ・ヨンウでさえ「ワオ」と感嘆の声を漏らしている(第6話)。責任を取る上司は部下の尊敬を集めることがよくわかる感動的な場面だった。

公正である

大手弁護士事務所のハンバダにとって、弁護の仕事は必ずしも社会正義のために行うものではない。依頼人に後ろ暗い部分があっても、それがビジネスなら当然弁護を行う。ミョンソクもそう考えているが、その一方で弁護士らしい公正さを忘れてはいない。

大きな利益に結びつかない脱北者の裁判についてウ・ヨンウらを「頑張れ」と励ますのは彼の公正さの表れ。知的障がいのある女性に性的暴行をはたらいた男性を弁護する際は、被害者の陳述の信憑性を落とす戦略について「弁護士としては気が進まない」と話していた(第10話)。

暴走気味のウ・ヨンウに罰を与えることを望む部下のクォン・ミヌ(チュ・ジョンヒョク)に対しては、彼がウ・ヨンウを匿名で告発をしたことを踏まえて、「仕事中に意見が合わず問題が生じたら話して解決すべきでしょう。いちいち賞や罰を与えるのは私のやり方じゃない」ときっぱり告げた(第9話)。偏った考えを持たず、常に公正であろうとするミョンソクの姿勢があるからこそ、部下のウ・ヨンウらは彼を慕うのだろう。

ミョンソクのような上司は“幻想”かもしないけれど…

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部下のことを理解し、守り、怒らず、叱らず、指導して育てる。これが“理想の上司”として視聴者に称えられたミョンソクの姿だ。

たしかに、こんな上司は“ユニコーン”級の幻想上の生き物かもしれない。だが、実はウ・ヨンウとともにストーリーの中で大きな変化を遂げたのがミョンソクだった。ウ・ヨンウたちがミョンソクから学んでいたのと同時に、ミョンソクもウ・ヨンウたちから学んでいたのだろう。ならば、誰もが変わることができるはず。部下と接する上司、年下の相手と接する年長者にとって、ミョンソクの態度や振る舞いは間違いなく役に立つはずだ。

(大山くまお)
*トップ画像クレジット:Netflixシリーズ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」独占配信中

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