『ロマンスドール』インタビュー・前編

夫婦は“他人同士”だから…誰かと関係を築いていくために必要なこと【蒼井優×タナダユキ】

夫婦は“他人同士”だから…誰かと関係を築いていくために必要なこと【蒼井優×タナダユキ】

平穏な日常の中でいつの間にか変わってしまった夫婦の10年間を描いたタナダユキ監督の最新作『ロマンスドール』が1月24日から公開されます。

ラブドール職人であることを妻に隠し続ける夫・哲雄(高橋一生さん)と秘密を抱えながらも“理想的な妻”である園子(蒼井優さん)の美しくも儚(はかな)いラブストーリーです。

『百万円と苦虫女』(2008年)以来、映画では約12年ぶりのタッグとなったタナダ監督と蒼井さんにお話を聞きました。

蒼井優さん(左)とタナダユキ監督

蒼井優さん(左)とタナダユキ監督

夫役・高橋一生は「親鳥のような存在」

——映画はタナダさんが2008年に執筆された同名小説が原作です。12年を経て映画化された経緯について教えてください。

タナダユキ監督(以下、タナダ):小説を書いた頃は、ラブドールという存在の認知度もそれほど高くありませんでした。その後、2017年に渋谷のギャラリーでオリエント工業40周年記念展「今と昔の愛人形」が開催されたのですが、お客さんの半分以上が女性でした。

長蛇の列を目の当たりにして、今なら映画化できる、純粋に作品として受け取ってもらえるのではと思いました。小説を書いた頃と比べると何て時代は変わったのだろうと思いました。

——蒼井さん演じる園子は、理想的な妻と思われているけれど、実はかたくなで弱い部分もある女性です。園子を演じてみていかがでしたか?

蒼井優さん(以下、蒼井):小説が出たときに「タナダさんご自身で映画化されないのかな?」「一緒にやれるといいな」と思っていたので、時間がたってからこうしてお話をいただき、今の自分で良いのだとうれしかったです。

最近、男性に寄生してばかりの役がずっと続いていたのでこういう自立した女性の役はありがたいなと思いました。

タナダ:オファーしても断られると思っていたので受けていただいてこちらが驚くっていう……(笑)。元々の設定で30代をメインに描きたいと思っていたので、蒼井さんが30代になったこのタイミングでよかったです。

——蒼井さんは高橋一生さんとの夫婦役はいかがでしたか?

蒼井:高橋さんとはデビュー作『リリイ・シュシュのすべて』(岩井俊二監督/2001年)でご一緒させていただきました。一緒のシーンはなかったのですが、当時私が15歳くらいで一生さんは20歳くらい。すごく大人で遠い存在だったのですが、デビュー作でご一緒した方は私にとっては親鳥のような存在なので、勝手に親近感を抱いていました。

そういう存在でありながらも、高橋さんは当時の何もできない自分を知っているという安心感がありました。

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「夫婦は他人」の“不思議さ”を描きたかった

——ラブドールに夫婦の物語を絡ませようと思ったのは?

タナダ:夫婦って絶対に他人ですよね。それで一緒に居続けるという“不思議さ”を描いてみたいなと思いました。この物語は、夫婦のある一つの形でしかないし、ちょっとファンタジーな部分もあるのですが、他人との生活の困難さも含めて(夫婦を)描いてみたいなと。

私は結婚していないのですが、持論として、子供が大きくなったら親子は離れたほうがいいと思っているんです。血がつながっているから離れたほうがいいと思っているのですが、夫婦は血がつながっていないので一緒にいることをなるべくしたほうがいいのかなって。もちろんお互いに努力をしてそれでも難しければ解散でもいいと思うのですが(笑)。

血がつながってないからこそ、よりお互いのことを「この人はこういう人だろう」という枠にはめちゃダメだと思うし、でも、家族になっちゃうと結構はめがちだよね、という部分を描ければと思いました。

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夫婦の数だけ夫婦の形がある

——蒼井さんは夫婦を演じてみていかがでしたか?

蒼井:演じてみて思ったのは、この2人の夫婦でしかないっていうこと。夫婦の数だけ、夫婦の形があるんだなと演じてみて分かりました。

——この夫婦を演じてみて、共感したところや、逆に自分は全然違うなと思ったところはありますか?

蒼井:隠し事かな。これだけそばにいるのに園子が夫の哲雄に対して隠し事ができるのはすごいなと。私は絶対に言いたくなっちゃうので(笑)

——バレちゃいます? 嘘(うそ)はつけない?

蒼井:クイズとか出しちゃうかも。「実は、私は落ち込んでいます。さて、なぜでしょう?」って(笑)。

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長く関係性を築いていく上で大切にしていること

——お二人に伺いたいのですが、夫婦やカップル、友人同士が長く関係性を築いていく上で大切にしなきゃいけないことって何だと思いますか?

タナダ:私は猫と一緒にいる10年が最長だからな(笑)。人間とまだ10年一緒にいたことはないので……。って言うと、すごく問題がある人間みたいですが、まあ何も問題がない人間ではないだろうとは思いますけれど(笑)、やっぱり人が一番難しいと思います。

友人関係は全然いいんだけれど、一緒に住んだり近しい存在になったりすると途端に難しくなる気がします。こんなことを話すとますますダメな人間だと思われるかもしれないですが、猫と10年間一緒にいて毎日飽きないんですよ。毎日飽きない存在ってほかにないんじゃないかって、猫を飼っている人同士でよく話していますね(笑)。

蒼井:猫と人間は何が違うんですか? 私は猫アレルギーで飼ったことがない。

タナダ:毎日かわいくて毎日発見がある。

多分、相手が人間になると過剰な期待をしてしまうのかもしれないですね。「自分の気持ちを分かってくれるはず」とか。でも、猫は分かってくれようとする気がないですし、むしろこっちが察してあげたいという気持ちになる。人間の場合はお互いに甘えが出てくるんじゃないかと気付きました。

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蒼井:私は、自分の家族を見てでしか答えられないのですが、父は何が何でも母を守ると腹をくくっている。それは父と母が血がつながっていないからこそなのかなと思いました。父は子供たちを敵に回してでも母を守るという意識が強くて、100対0で母親が悪くても私が責められるんです(笑)。きっと、子供たちは血がつながっているから時間が経てば理解してくれると思っているからなのかもしれない。

そういう意味で、父親は家族を信じているのだと思うし、母を守る父も一人の人間として素晴らしいと思います。

友人関係で言えば「あ、今はこの人のことちょっと好きじゃないかも」と思ったら一回離れます。向こうが支えてほしがっているときはいいけど、自分が過度に相手に期待しているときは逃げて距離をとる。

すべてが終わったあとに「あのときはすごく性格悪かったよ」と、お互い笑い話にして言い合えるくらいになったらいいですね。

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■映画情報
『ロマンスドール』 
公開表記:1月24日(金) 全国ロードショー
配給:KADOKAWA
(C)2019 「ロマンスドール」製作委員会

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※後編は1月24日(金)公開です。

(構成:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘)

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