14年連続で離婚率が全国1位*、シングル親率全国1位**、それに加えてオメデタ婚率も全国1位***。沖縄がそんな記録を保持していたことを、知らない人は多いだろう。
*出典
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***厚生労働省 平成22年「人口動態統計特殊報告」
私もそのうちの一人だった。先日、「ウートピ」編集長としてAbemaTV『Wの悲喜劇〜日本一過激なオンナのニュース〜』の収録で沖縄を訪れ、スタジオで3人のシングルマザーから話を聞くまで、沖縄が結婚や出産に関してそれほど特別な状況に置かれているとは考えもしなかった。
沖縄の女性は結婚や子育てについて、私たち首都圏で働く女性とは、何か違う価値観を持っているのだろうか? それが知りたくて3人のシングルマザーの取材後、ご自身も非婚シングルマザーとして現在5歳の女の子を育てている「琉球新報」エディター、玉城江梨子(たまき・えりこ)さんに聞いた。
「嫌なら別れる」沖縄のシングルマザー
——沖縄で3人のシングルマザーの方から話を聞いて印象的だったのが、「不安はありませんでしたか?」などいろいろな質問をぶつけても「なんとかなる」という言葉が返ってくる場面がとても多かったことです。
玉城江梨子さん(以下、玉城):そうなんですよね、沖縄ではシングルマザーになっても、なんとかなるんです。それは一番大きいと思います。沖縄の所得水準は全国的にもとても低いので、シングルマザーの場合お金の面だけを考えるととてもやっていけない。でも「目に見えない横のつながり」が支えてくれている面がすごくあるのかな、と。近所に親戚や友達が住んでいるなど、「頼れる人」がそばにいるから離婚してもなんとかなると思えるんです。
——沖縄の言葉でいう「ゆいまーる(助け合い)」ですね。夫と別れても、友達や近所の人、両親が子育てを手伝ってくれる。経済的に苦しいことがあっても、人のつながり、「ゆいまーる」の中にいればなんとかなると考えて、それほど悩まずに「嫌なら別れる」ときっぱり決断するケースが多いようです。
実際、沖縄で新聞記者をしながらシングルマザーとして子育てをするのは、大変ではないですか? 東京で記者をしながらのシングルマザーはかなり過酷な生活になりそうです。
玉城:やっぱりなんとかなっちゃうんですね。「非婚でシングルマザーになる」と決めた時に、「私にできなかったら誰にもできない」と思いました。シングルマザーに不可欠なものは、経済力、つながり、情報(福祉へのアクセス)の3つだと取材を通じて実感していました。生活が大変になっちゃうシングルマザーは、3つのうちのどれかが欠けているんです。でも、記者という職業柄、幸いにも3つとも揃っている。だから非婚シングルでも大丈夫だろうと、決断しました。
私も、出張の時は娘を友達に預けます。私が病気になった時も近所のママ友に娘を見てもらう。その意味で沖縄は「助けて」と言いやすい社会ですね。
——東京で仕事をしながら子どもを育てていると、まずは延長保育やベビーシッターさんをあたり、それが全滅なら夫の仕事の予定を調整して、それもダメなら親を頼り、最後の手段として保育園のママ友や友人にお願いしてみてもらうという順番になりそうです。できるだけ周囲に「迷惑」をかけずに解決しようとするというか。
玉城:そもそも沖縄には、社会資本がないという問題もありますね。東京だとお金を出してサービスを買いますが、沖縄にはそういうサービスが少ないから「横のつながり」を頼ります。お互いに持ちつ持たれつなんです。ただ、深刻な貧困に陥ったシングルマザーを取材していると、沖縄でも人間関係の希薄化は起きているのかな、と感じることはありますね。
「男性には何も期待しない」
——沖縄のシングルマザーの方々からは「(結婚相手の)男性に期待しない」という声もよく聞かれました。養ってもらうつもりがそもそもないから自分で働く、育児や家事の分担もそれほど求めない、離婚しても養育費をもらわずに自力で子どもを育てるという女性が多いようです。
玉城:「男性に期待しない」はありますね。沖縄は男女問わず所得水準が低いですから、男性だけが家計を支えるのではなく、共働きが昔からあたり前。それに性格的にあまりキチキチしていなくて、おおらかな人が多いですし。
——今回取材したシングルマザーの中からは「沖縄の男性はだらしない」という声も実際に聞かれました。沖縄の男性が置かれている特殊な状況があるのでしょうか。
玉城:たとえば、沖縄には「トートーメー問題」があります。トートーメーとは仏壇に置かれた位牌のこと。これを誰が継ぐかが遺産相続に大きく関わってきます。基本的に長男がトートーメーを継ぐので、やはり男の子の誕生を待ちわびる風潮は今もあります。長男には親があれこれ世話を焼き、それは彼が成人しても続きます。現在では多少変化してきていますが、まだ「男に甘い文化」はあると感じますね。
——なるほど、その文化がシングルマザーの方々が口にした「沖縄の男はだらしない」という言葉につながっていくのかもしれませんね。
養育費はもらわない?
——経済的に心配だから「結婚できない」「子どもが産めない」「離婚できない」という声は、「ウートピ」で30代の女性と接しているとよく耳にします。でも、沖縄で会ったシングルマザーの皆さんは、全員お金の面では、ダブルワーク、トリプルワークでも楽ではないという状況にもかかわらず「経済的に心配だから○○できない」という発想がそもそもない。その点はとても新鮮でした。
玉城:ただ、経済的には沖縄のシングルマザーはとても大変だと思います。それこそ、ダブルワークは当たり前。別れた夫から養育費をもらっていないシングルマザーも多いです。これほど養育費の割合が低い理由の一つに、DVが原因の離婚が少なくないことが挙げられます。「養育費は要らないから、とにかくこの暴力から離れたい」というケースですね。
——「嫌なら別れる」ときっぱり自活の道を選ぶ沖縄シングルマザーの姿には、ある意味清々しささえ覚えましたが、一方では、そういう暴力を経験したシングルマザーもいらっしゃいました。
沖縄のシングルマザー事情から見えてくるもの
シングルマザーが貧困状態に陥りやすいという問題は、沖縄に限らず全国で見られますが、それに加えて、沖縄では10代の出産率が高い、配偶者によるDV被害が多い、待機児童が全国第2位と多いなど、さまざまな問題を抱えている。
沖縄のシングルマザーのリアルに迫った『Wの悲喜劇〜日本一過激なオンナのニュース 沖縄スペシャル』は本日23時放送。シングルマザーの他にも「沖縄メディア」(玉城さん出演)、「沖縄移住女子」を取り上げる。お楽しみに!
(ウートピ編集長・鈴木円香)
■番組情報
『Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース~』
男子は見なくて結構! 男子禁制・日本一過激なオンナのニュース番組がこの「Wの悲喜劇」。今回は沖縄スペシャル。現在産休中のSHELLYさんに代わり、お留守番MCのいとうあさこさんが各テーマから沖縄のオンナの本音に迫ります。「そんなことテレビで言っちゃっていいの?」……いいんですAbemaTVですからタブーに挑戦します。
放送日時:2018年4月7日(土)23:00~25:00
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