「技術だけでは女性の心はつかめない」 パナソニック「レッグリフレ」ヒットの裏側

「技術だけでは女性の心はつかめない」 パナソニック「レッグリフレ」ヒットの裏側

パナソニックのブーツ型足用エアーマッサージャー「レッグリフレ」。1台約5万円という高価格ながら、9月に発売された最新モデルは初動売り上げが好調で、前モデル比1.5倍以上を記録しているそう。

モデルや芸能人の中でも人気が高いというレッグリフレ。しかし、今でこそ女性の心をわしづかみにしていますが、2010年に発売された初代から売り上げが好調だったわけではありません。

なぜ、レッグリフレが「簡易マッサージャー市場をリードしている」と言われるまでになったのか。パナソニックで同商品の企画マーケティングを担当する山下恵(やました・めぐみ)さんに話を聞きました。

「レッグリフレ」の企画マーケティングを担当する山下恵さん

「レッグリフレ」の企画マーケティングを担当する山下恵さん

「ダサピンク」だった!? 初代モデルが売れなかったワケ

レッグリフレの歴史は6年前にさかのぼります。2010年に誕生した初代のレッグリフレはふくらはぎのマッサージだけの仕様でした。その後、登場した2014年モデルでは足先もカバーするブーツ型に。そして今回発売された太ももまでカバーする仕様にと“進化”を遂げてきました。

山下さんは今回発売されたモデルから開発・マーケティングを担当しています。

「初代のモデルもとてもよい商品だったのですが売れていませんでした」と明かす山下さん。性能が悪かったわけではなく製品自体はパナソニックとしても自信作だったと言います。それがなぜ売れなかったのか。

「初代は主に男性が開発に携わっていたんですが、技術さえしっかりしてれば売れると思っていたんです」

色を一つとっても一見、女性に好まれそうなピンク色の製品があるものの、それは「男性が思う」ピンク。

「『女子はこういうピンクが好きなんでしょ?』っていうおじさん目線のピンクだったんです」と山下さんは振り返ります。

女性プロジェクト、発足!

「いくら技術が優れていても、女性がいいと思う部分をとことん突き詰めないと売れない」と気づいた同社は猛省。徹底的に女性の声を聞いて商品開発をしようと、山下さんの前任者が2013年、社内の女性10数人からなる「女性プロジェクト」を立ち上げました。

まず取りかかったのがリアルな女性ユーザーの声の掘り起こし。キャビンアテンダントや看護師といった立ち仕事をしている女性100人以上に聞き取り調査を行って地道に女性のニーズを聞いていきました。また、男性が多い技術チームとLINEグループを作り、女性の間で何がはやっているか、気づいたことを共有していったと言います。

「同じ『気持ちいい』でも女性の気持ちよさと男性の気持ちよさって違うんです。そこを事細かに突き詰めてトランスレート(翻訳)していきました」

「女性プロジェクト」がハブ(拠点)となって技術とユーザーをつないでいった末、2014年モデルが誕生しました。

SNSで広がった2014年モデル

2014年モデルが発売された後もそれで安心というわけにはいきませんでした。「一度使えば製品のよさは必ず伝わる」という自信があったため、製品のよさをより多くの人にわかってもらおうと、量販店などで製品を試す体験の場を増やしていきました。

その努力が実を結び、実際に試したユーザーがSNSやネットに製品の使い心地を書き込んだことで一気に拡散しました。

国内マッサージ器市場から見ても、マッサージチェアの売り上げが年々減少している中で、「簡易マッサージャー」の売り上げは年々増加。2014年には累計売り上げ台数100万台を突破しました。2014年発売のレッグリフレも約2年間で販売総数約30万台を売り上げ、簡易マッサージャー市場をリードしたと言えます。

売れたからこそのプレッシャー

大成功を収めた2014年モデル。あとを引き継ぐことになった山下さんはすぐに次回の製品開発に取り組むことに。「2014年モデルが売れて、自分はそれ以上の結果を出さなければいけない」とプレッシャーもありました。

その上で苦労したのは「2014年モデルで満足した女性たちのまだ見えていない不満点を掘り起こすことだった」と山下さんは振り返ります。

ユーザー調査を繰り返し、持ち前の根気強さで女性ユーザーから製品の不満を引き出し、出てきた不満をひとつひとつ技術的に解消しながら今年9月の発売にこぎつけました。

使命は「女性の欲望を叶えること」

最新モデルは、足先から太ももまでの脚全体をしぼり上げるようにマッサージができます。また、1台で「ひざ巻き」と「太もも巻き」の2つの巻き方で脚全体に対応したアタッチメントを新開発し、約40種類もの多彩なマッサージパターンを実現しました。

今回、開発をする上でこだわったのが「ひざ周り」。マッサージコースの参考に様々なエステやマッサージに通う中で、ぽっこりした“ひざ裏”やひざのダルさ、ひざのお皿の上に乗るプニャプニャしたお肉など、女性の脚の悩みが「ひざわまり」に多いことに気づきました。キャッチコピーも「足先からひざ周り、太ももまで」と「ひざ周り」のマッサージを強調しています。

「色味にもこだわりました。女性が好きな気持ちが上がるピンクです。リモコンも、ネイルをやっている女性が操作しやすいように裏側に凹みを入れました。使わないときの収納にもこだわり、簡単にコンパクトに畳めるようにしました。女性の欲望すべてを叶えたいと開発した商品です」と山下さんは胸を張ります。

ターゲットは「働く女性」

さらに、今回のモデルで意識したのは「ながらマッサージ」と言います。

簡易マッサッジャーを使う働く女性のライフスタイルは、マッサージチェアを使っている層が多い団塊の世代のそれとは違います。髪を乾かしたり、スマホを見たりなど、何かと忙しい女性のニーズを考えて生まれたのが同商品です。

山下さんは「働く女性が少しでも癒されて、翌日もがんばろうと思ってくれれば」と力を込めました。

「これ欲しい!」と思ったら大丈夫

「もっともっと成長させたい。ここから先何ができるのだろうと日々考えている」という山下さん。山下さんが手応えを感じるのはどんな時なのでしょう。

「自分自身がターゲットだと思ってます。『これは私も欲しい!』と思えた時はきっと大丈夫と思います」と顔をほころばせました。

働く女性を陰から支えるレッグリフレ。次は、どんなヒット商品が生まれるのか注目です。

(パツワルド敬子)

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