“7坪のお茶会” 消費で終わらない土曜日の午後 第1回

女ひとり35年ローンで手に入れた一軒家 あらゆる“消費”の末に見つけた“豊かさ”とは

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女ひとり35年ローンで手に入れた一軒家 あらゆる“消費”の末に見つけた“豊かさ”とは

「消費で終わらない土曜日の午後」
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みなさんは土曜日の午後をどんなふうに過ごしていますか? 映画を観に行ったり、家具やインテリアを物色したり、7月の今ならいそいそとセールに出かけたり。どれも結構楽しい、でも、なんかつまんない。

そんなモヤモヤを抱えているみなさんと一緒に、「女性の30代」と「消費」をテーマに考える連載、「“7坪のお茶会” 消費で終わらない土曜日の午後」が始まります。

お茶会のホストは、雑貨店オーナーで編集者でもある塚本佳子(つかもと・よしこ)さん。第1回目は40歳で都内に7坪の一軒家を建てた彼女に、「家」を持って気づいたことについて聞きました。

(模型写真:鳥村鋼一/アーカイブ:オンデザイン)

(模型写真:鳥村鋼一/アーカイブ:オンデザイン)

家を建てたら、地に足がついた

ーー今日は“7坪ハウス”に初めてお呼ばれしました。あ〜、何だろう、この妙に落ち着く感じ。

塚本:そうなんです、“家”ってなんだか落ち着くんですよね。このホッとする感じは賃貸ではちょっと味わえない気がします。“自分の家”で暮らしてみて、やっぱり賃貸マンションは仮住まいでしかなかったんだな、と。壁に穴を開けられず壁かけ時計を買わなかったり、絵やポスターは床置きにしたり、そういえばそんなことにも気を使っていましたね。

ーー7坪ハウスには壁かけ時計もあるし、ポスターも飾られていますね。仮住まいと自分の家での暮らしは、やはり違いますか?

塚本:全然違いますね。壁に穴は開け放題だし、キズもつけまくりですよ(笑)。もちろんきれいに使いたいし、まめに掃除をするようになったけど、床や壁が色褪せていく感じやキズ・汚れにさえも愛着を感じてしまう。一緒に歳月を重ねているという感覚が“自分の家”にはあるのかもしれない。

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しかも一軒家の場合、外観も含めて“自分の家”。外から帰ってきて家が目に入ると、「あー、私の家だ」ってなんだか嬉しくなります。ちょっと大袈裟だけど、それまで地に足がついていないフワフワした感じが拭えなかったのに、地面に建つわが家を見ただけで私自身も地に足をつけて生きていると実感できるようになったというか。

きっかけは「マンション選びの失敗」

ーー「おひとり様女性がマンションを買う」という話こそ聞くようになったけど、一軒家というのはまだまだ珍しい。最初から一軒家を建てようと思っていたんですか?

塚本:とんでもない。そもそも「家が欲しい」という気持ちもなかったんです。きっかけは引っ越しの失敗でした。夢だったお店開店の資金作りのために家賃の安いマンションに引っ越そうと思っていた時、父の急死という出来事が重なって、人間いつ死ぬかわからないのだからやりたいことをやろうと。それで引っ越したんですが、ひと月も経たないうちにそこを出たくなった。

理由は不快な音です。マンションの出入り口のドアが閉まる音にドキッとしたり、住人がカギにつけていた鈴の音が不気味だったり、風の強い日には換気扇がカタカタ回ったり。だけど、引っ越したばかりなのにまた賃貸に引っ越すのはなんだかしゃくだったんです。それなら家を買ってしまえ、と。

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ーー飛躍しすぎな気もするけど(笑)、最初は家を「買う」であって、家を「建てる」というわけではなかったんですね。

塚本:家を建てるというもっとも難易度の高い方法を選んだのは、単に消去法でそれしか残らなかったからなんです。新築マンションは思ったより高いうえに毎月管理費や修繕費など賃貸と変わらない出費がある。それ以前にパンフレットを見てもなんだかピンとこなくて。

中古のマンションをリノベーションするという選択肢もあったんだけど、中古物件は借りられるローンの設定額が低かったりで。結局一番ハードルが高いと思っていた方法で家を持ったけど、土地探しから家が建つまで一貫して協力してくださるコーディネーターの方にお願いしちゃったんで、結果的には楽チンでした。しかも、夢だったお店までついてきたし。

家さえも“一生モノ”ではない

ーーところで、ローンは何年で組んだんですか?

塚本:35年です。

ーーじゃあ、少なくとも35年はここに住まわれるんですね。えーっと、その時、塚本さんは70……歳?

塚本:そんなに長く住む気はないですよ。この家は完全に反バリアフリーなんで、お年寄りには不向き。家を建てる時って、一般的には子どもが大きくなったらとか老後のためとか、将来を見越して設計すると思うんですけど、私の場合“今”住みたい家という考えしかありませんでした。

ーー確かにそういう考えで家を建てる人って少ないかも。家を建てるなんて一生に一度だと思うし、普通は「終の住処」と考えますよね。賃貸の月々の家賃と同じ金額でも、家を買ってローンを支払うとなると覚悟が違う。それで決断ができない人は多いと思いますが、塚本さんはそのへんどうでした?

塚本:う〜ん、そんな覚悟はなかったな(笑)。35年ローンもなるべく長く借りて、月々の返済金額を抑えたいという理由だし。お金の心配もそうだけど、覚悟といえば住む場所についても同じですよね。建てる時点では、ずっと住む可能性も考えているわけだから、どこに建てるかは結構大事。

ーーそういえば、この場所(東京都・豊島区)にしたのには何か理由があったんですか?

塚本:私の場合、絶対条件ではないものの、当時はまだ会社員だったので「自転車通勤できる場所」がいいなと。それをクリアする場所が見つかって、結構あっさり決めちゃいました。

そんな経緯を考えると、私にとっては家さえ“一生モノ”ではないのかもしれない。満足度120%の家だけど、いずれは貸したり、売ったりしてしまうという選択肢もあると思うんです。ここは場所も駅から近くて悪くないし、ちょっと変わった家だけどおもしろがってくれる人はいる気がするので。

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ーー結局、会社も辞めちゃったし……。

塚本:(笑)そうそう。この場所を選んだ唯一の条件が「会社に通いやすい」だったのに。

“自分の家”に暮らすことで人は変わる

ーー“家でさえも一生モノではない”という考え方が影響しているのかなあ、35年ローンを抱えて会社も辞めちゃったのに、塚本さんのこの“明るさ”は何なんだろう……。悲壮感が微塵もないですね。

塚本:自分でもおかしいと思うけど、将来への不安は不思議なくらいないんです。お金に関しては桁が大きすぎてマヒしているのか、そんな先のことまで具体的にイメージできない。何かあった時に実家に迷惑がかからないように保険に入っておく程度のことしかしていません。その一方で、日々の暮らしは地に足をつけてきちんとしなきゃ、と思うようになりました。

ーー家を建てたことで、暮らしは変わりましたか?

塚本:大きく変わりました。仕事もプライベートもなく、すべてをひっくるめて丁寧に楽しく暮らしたいと思うようになりましたね。その気持ちの延長線上に、会社を辞めるという選択がありました。会社を辞めることで経済的には不安定になるのに、気持ち的には地に足をつけて自分の力で歩いている実感が持てるようになった。それはこの家を建てて、この家で暮らしたからこそできた決断であり、得られた結果なんだと思います。

ーーそういえば、ある方がこんなことを言っていました。「立派な家に住めば、その人も立派になっていく。どんなにやせ我慢をしてもちゃんとした家に住まないといけない」って。

塚本:まさしくその通りだと思う。この家で暮らすようになって「地に足をつけてちゃんと生きなきゃ」と思ったのは、家に見合った自分になりたい、ならなきゃという気持ちのような気がします。

ーーある意味、家は住む人の体現。この7坪ハウスって、塚本さんそのものが建っている感じがしますよね。

塚本:こじんまりしているところがね(笑)。冗談はさておき、そんなことを言われると余計にちゃんとしなくてはいけませんね! 私の場合は40歳直前というタイミングだったけど、家が欲しいと思ったら若いうちに買ったほうがいいと思います。早い年齢で家を持つことで、家を整えると同時に自分自身を整えられるようになる。

そういう習慣はなるべく早く身につけたほうがいい。私ももっと早く家を持っていたら違う人生もあったかもしれません。会社のストレスでムダな消費を山ほどしてきましたからね(苦笑)。

ーーその時代の“ムダな消費”についても、今後の連載でぜひ聞きたいですね。

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【お茶会のメニュー】
〈器〉
・マグカップ&プレート(マグカップ3240円・プレート2700円)
・やきしめプレート(2160円)
*金額掲載の器は「Fika」にて取扱中。

〈お菓子とお茶〉
ハッロングロットル(ラズベリーのソフトクッキー)
フレーバーティー(ベリー系)

☆ハッロングロットルの作り方

[材料]直径6cm×高さ2cmの型10個分
薄力粉……140g/ベーキングパウダー……小さじ半分/グラニュー糖……40g/バニラエッセンス……数滴/バター……90g/ラズベリージャム……適当
[1]バターとラズベリージャム以外の材料をボウルに入れて軽く混ぜる。
[2]直前まで冷蔵庫で冷やしておいたバターをさいの目に切って[1]に加える。
[3]スケッパーなどでバターを切るようにして粉類と混ぜ合わせる。バターが溶けないように素早く行う。
[4]バターと粉類が馴染んだら、手で生地をまとめてラップに包み、冷蔵庫で30分〜1時間程度寝かせる。
[5]オーブンを180度に設定。
[6]4を10等分にしたら、丸めて中指で中央にくぼみをつける。
[7]成形した生地を型に入れて、中央のくぼみにラズベリージャムをのせる。
[8]オーブンで約10分焼いたらできあがり。
*ハッロン=ラズベリー、グロットル=洞窟。ジャムを変えたら「シルトグロットル」(ジャムクッキー)。ジャムはベリー系がおすすめ。

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「北欧雑貨と日本の器 Fika」
関連リンク:公式HPFacebook

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消費で終わらない土曜日の午後

40歳の時、おひとり様で都内に「7坪ハウス」を建てた雑貨店オーナーの塚本佳子(つかもと・よしこ)さん。バリキャリ編集者だった30代には、家具、インテリア、服、旅行、習い事……とあらゆる“消費”に手を出したそう。そんな塚本さんと編集部が「オンナの30代」と「消費」の幸せなバランスについて語り合います。

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