頭がボーッとして考えられない、カラダがダルくて腰が上がらない。そんな「やる気ゼロ」の日もたまにはありますよね? そんな時でも無理やり気合いを入れて乗り切ろうとする人は多いはず。でもそれは逆効果って知っていましたか?
心身のコンディションを目の体操で整えるメンタルビジョントレーニングを提唱している松島雅美(まつしま・まさみ)先生によると、「人の脳は不快な時に気合を入れると、ますます不快になってしまう」のだそう。「やる気ゼロ」の日に本当に効くのは、「気合」ではなく「目のトレーニング(メビトレ)」と断言する松島先生に聞きました。
目とアタマを動かせば、ココロも元気になる
ーー先生が提唱されているメンタルビジョントレーニングについて、簡単に教えてください。
松島雅美先生(以後、松島):「メンタルビジョントレーニング」とは、アメリカで開発された「ビジョントレーニング(目の機能を鍛えて脳を活性化させる訓練)」に、ココロの機能のトレーニングをあわせて構築したプログラムです。現在はプロのアスリートや企業研修にも取り入れられています。
私はもともと臨床心理士としてココロのケアを専門としています。その中で「ココロ」と「目」と「アタマ」が密接に結びついていることに着目しました。脳にインプットされる情報の8割は目から得られます。つまり、目の働きが鈍くなれば、脳に届く情報量も減るんです。その結果、ビジネスマンなら企画のアイデアや作業のスピード、正確さに影響が出てきます。
当然、それはメンタルにも影響を及ぼします。仕事がうまくいかなければイライラしたり焦ったり。そういった不快の原因を取り除くのがメンタルビジョントレーニング(メビトレ)です。
ーーメビトレでココロまでよりよい状態にしていくんですね。
松島:人間の行動は「思考ありき」。でも思考をコントロールするのはとても難しいですよね。そこで、「目の動き」を改善することでメンタルが改善され、思考が活発になるという逆の流れでアプローチしていきます
根性論では不快感が蓄積されるだけ
ーーメンタルの状態を、目のトレーニングで改善できるとは、本当に目からウロコ。まさか、そんな関係性があったとは……。
松島:そうなんです。メンタルというと、なんとなく曖昧で捉えどころのないものに思えますが、実はかなり科学的なメカニズムがあるんですよ。特に日本人には、メンタルの問題に関しては、「気持ちの持ちよう」とか「気合いで乗り切る」とか、いわゆる根性論で考えがちです。
ーー確かに、「頑張れば、なんとかなる」と考えちゃうことはありますね……。
松島:人間の脳は不快な時に気合いを入れると、さらに不快になる仕組みになっているんです。つまり根性論で続けても、より不快感が増すだけで、何らプラスにならない。それどころか、拒否反応で逆に思考は鈍くなっていきます。
ーー「苦手なことは努力でなんとかする」という風潮は社会全体にありますね。
松島:でも、それは逆効果。「今日はやる気が全然出ないな」という時は、15分間の簡単な活動で(散歩する、小さい範囲の掃除をするなど)脳内の側坐核という部位を活性化すると効果的です。そして、次に紹介するメビトレをあわせてやってみてください。
集中力を上げるトレーニングです。「スマホ老眼」の予防にもなりますよ。
①親指を立てたら、腕を伸ばす。
②指にピントを合わせしっかりと目で捉えたまま、少しずつ指を顔に近づける。
③ピントが合うギリギリの位置まで指を顔に近づけたら、①②を繰り返す。
④5往復を2セット行なう。
*常に指にピントを合わせる。
*近くに指を寄せた時、筋肉を使って寄り目にする。
松島:メンタルのコンディションを改善して脳を元気にしていくには、メビトレの他に、もう一つ意識して続けてほしいことがあります。それは、不快なものを取り除いて、ストレスを減らすこと。
たとえば、第2回で紹介したように、聴覚情報をうまく処理できないタイプの人は、「音以外の情報」を積極的に取り入れてストレスを減らしていくといった工夫です。つまり、「電話だけ」ではなくメールや口頭で情報をプラスして脳に取り込むようにします。
ーーライターをしている私の場合だと、インタビュー(聴覚情報)だけでなく、メール取材やカメラ撮影(視覚情報)を加えて原稿を書く工夫をするとか?
松島:そうです。結果が出るなら方法は何でもいいはず。どうしてもその方法でなければいけないというケースは意外に少ないもの。せっかく努力をするなら、結果が出る方法がいいに決まっていますからね。
自分自身のためにも、脳のためにも、ストレスはないのが一番。メビトレとストレス削減の両輪でココロのコンディションを整えていってくださいね。