恋愛経験をある程度積み重ねてきて、酸いも甘いも知っているオトナだからこそ、パートナーにあえて「言わない」ことをあえて拾って、恋愛コラムニストの桐谷ヨウさんにアドバイスをいただく連載「◯◯って言わない女子」。
ヨウさーん! 今回はこんなつぶやきを発見しましたよーー!!
【今回のつぶやき】
「私、仕事が好きなの」
付き合って半年の2歳年下の恋人がいます。私は企画職、彼はメーカーの総務で働いています。
私は基本的には仕事が好きで、休みの日に仕事をすることもしばしば。一方、彼は「仕事よりもプライベートが優先」というタイプです。それはまったく構わないのですが、なかなか仕事の話ができないのが辛いです。
休みの日も「仕事があるから会うのは難しい」と言いにくく「用事があるの」と言ってしまいます。私が仕事の話をするとあまり興味がなさそうなそぶりをするので、いつの間にか彼の前では仕事の話をしなくなりました。
仕事の話を聞いてほしいというよりは、彼に自分が受け入れられてない感じがしてしまい、モヤっとします。
「仕事が好き」は趣味です
こんばんは! 本当に「仕事とあたしのどっちが大事なの?!」って言われることあるんでしょうか? ヨウさんです。もっと仕事したほうがいいんだろうか……。
これはウートピの読者さんっぽいご相談ですね。仕事をがんばっている女性ならではの内容というか……。
例え話から始めたいと思うのですが、「趣味のちがい」ってありますよね。
自分は映画が好きだけど、友人は音楽が好き。あるいは、自分はヒューマンドラマ系の映画が好きだけど、友人はアクション映画が好き、とか。そもそもカテゴリーちがいの趣味が好きとか、カテゴリーが一緒でもジャンルが違うとかあるじゃん。
なんかそういう話だと思います。
いやいや、全然ちげーよ!と感じるかもしれないけど、実際そうなんです。
もうね、はっきり言って会社員の仕事なんて自己満足なんですよ。「アップ・オア・アウト(昇進するかクビか)」な職種もありますが、基本的に会社員というのは優秀だろうが、のらりくらり仕事をやっていようが大差がない給料が出る仕組みになっています。
よっぽどのインセンティブが出ないかぎりは、最低限の仕事をやって副業をしたほうがトータルの収入は大きくなります。
では、なんで仕事をがんばろうと思ってしまうのか? それは「がんばらないと気持ち悪いから」の一言に尽きるんですよ。
例えば俺自身はコストパフォーマンスの意識が非常に強いタイプですが、仕事に関してはなんやかんやで意地になって必要以上にやってしまうところがあります。そのときに考えているのは損得ではなく、「ここまでやらなくては自分が自分を許せない」という思いです。
俺よりもっと仕事が好きな彼女は「報酬は関係なく、自分の充実感」のために仕事に情熱を燃やすタイプです。なんかプロフェッショナルな魂を持ってます。正直すげーな、と感じます。
ご相談者様がどういうタイプなのかはさておき、おそらく「このラインをやらなくては自分で自分を許せない」という線引きがあるタイプなんだと察します。そして、同時にその水準は(おそらく)世の中の一般的なラインよりもかなり高い位置にあります。「エリート・オブ・仕事好き」です。
彼が「仕事の話」に興味がないのは当たり前
ここに彼氏の「仕事への意識」との感覚のギャップがあります。
俺から見るに、お相手はごくごく一般的なサラリーマンの感覚に見えます。求められれば最低限の仕事をする、強制されない限りはそれ以上のことをやりたくない。
こういう仕事への意識はかなりマジョリティの感覚のように思えます。サラリーマンでクビになるのはよっぽどのことですが、よっぽどのことになっていないということは、おそらく勤務中はしっかりやってるんだと思いますよ。
そう、会社に求められる最低限の仕事「以上」の時間をどこに費やしたいかは、その人の趣味の問題なんですよ。彼は「会社の仕事」ではなく、「自分の趣味」に使いたいだけなんだと思います。ご相談者様は(そうではないとおっしゃるかもしれませんが)休みの日もやってしまうくらい「会社の仕事が自分の趣味」になっているんです。
乱暴に聞こえるかもしれませんが、ここを理解しないと彼氏との温度差の原因は本当の意味で理解できません。「趣味」という言葉を<損得勘定を抜きに、情熱を注ぎ込む対象>と置き換えてくれて結構です。
そう、彼にとって「私が仕事の話をするとあまり興味がなさそうなそぶりをする」のは当たり前です。彼が興味のない「仕事という趣味」の話題なんですもん。もっと言えば、彼自身が自分を怠惰だと責めてしまう「意識高い系」の話題ですもん。
恋愛で「趣味の一致」は重要?
では、恋愛において<趣味の一致>が最優先課題になるのでしょうか?
これは明確に「ノー!」です。趣味が合わないけれど、仲良くできているカップルが存在します。
そういったカップルの特徴は「趣味の話を活き活きとしている相手を、愛おしいと思える」と双方が思っていることです。そして、残念ながらご相談者様はこれに該当していないようです。
重要な答えはご自身で書かれています。「仕事の話を聞いてほしいというよりは、彼に自分を受け入れられてない感じがしてしまい、モヤっとします」という最後の文章です。
ご相談者様は「私」ではなく「仕事をしている私」を抱きしめてもらえないかぎりは満足ができないようです。つまり仕事を趣味にしている私を、愛してほしいんです。ならば、いまの彼にそれを望むのはミスマッチです。
ただし、「仕事をしている私」を理解してくれる「自身も仕事に情熱的な男性」は往々にして、おたがいの予定を合わせるのが難しくなるケースが多いです。こうなればまた別の不満が出てくるかもしれません。
「趣味」について語るのは恋人じゃなくてもいい
個人的な意見としては「仕事をしている私以外の私」を彼が大事にして、愛してくれているのであれば、そこをもっと認めてあげても良い気がしますよ。ないものねだりではなく。
価値観は人それぞれです。すべてが奇跡のようにハマるような相手は存在しません。本当に「仕事をしている私」があなたにとって最重要で、そこを尊重してもらわなければすべての前提が崩れるようなボトルネックならともかく、一緒に仕事をしている仲間なわけではないですし、人生のパートナーに求める部分ではないような気がします。
「仕事という趣味」を熱く語る仲間は、女友だちでも、男友だちにでもできることだと思います。
もしそれが不満なのであれば、方法はひとつ。彼を「仕事大好き人間」に価値観を変えさせることのみです。んー、やっぱすげー労力がかかるわりにムダな気がするので、オススメはしないかな(笑)。