ニュースを読み解く用語集/第18回 

「メタバース」って何? ニュースがわかるビジネス用語【専門家に聞く】

「メタバース」って何?  ニュースがわかるビジネス用語【専門家に聞く】

ビジネスやIT、医療分野など、ニュースがよりわかりやすくなるための、メディアでよく見聞きする用語の意味や使用例を連載で紹介しています。(これまでの記事は文末リンク参照)

今回・第18回は、数年前からメディアで見聞きする「メタバース」や「アバター」とは具体的に何なのか、大正大学表現学部の前教授・講師で情報文化表現が専門の大島一夫さんに、編集スタッフ・藤原椋(むく)が尋ねます。

ネット上の仮想空間

「メタバース」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。「ネット上の仮想空間」だということですが、そもそも、それが何なのか、その実態がつかみにくいです。

まず言葉の意味としては、「メタ(meta)」は「超~」「高次の」、「バース」は宇宙や世界を表す「ユニバース(universe)」で、それらを合わせた造語です。

現実の世界を模した空間や、それを超える世界をネット上につくり出して、利用者は「アバター」と呼ぶ自分の分身を操作しながら、その世界を移動したり、ほかのアバターたちと交流したりします。アバターは自分の好きなファッションにするなど、さまざまな形のキャラクターをつくることができます。

フェイスブックが「メタ」に社名変更して話題に

ずい分と前から映画や漫画の題材となっていましたね。2020年ごろから再びのブームだそうですが、登場の背景を教えてください。

メタバースという用語は1992年に発表されたニール・スティーヴンスンのSF小説『スノウ・クラッシュ』に初めて登場したとされます。

2003年にはアメリカの企業が「セカンドライフ」というメタバース、当時は3Dゲームと呼ばれることが多かったのですが、それを公開したことで大きな注目を集め、日本でもネットやPCに長けた人たちの間で一種のブームとなりました。

しかし、大容量のネット通信や高性能のPCが必要などで、一般化しませんでした。その後、SNSの登場やスマホの普及で人々の関心はそちらに移ります。

ただ、そうした状況の中でも、オンライン3Dゲームの分野では、ネット通信の大容量化や、PCやゲーム機、スマホの高性能化で、メタバースを利用するハードルは下がっていきました。中でも『マインクラフト』はメタバース系ゲームの代表と言えるでしょう。

そうした流れの中で、2021年10月にFacebook(フェイスブック)が「メタバースを事業展開の柱とする」として、社名を「Meta Platforms(メタ プラットフォームズ)」(通称:メタ)に変更しました。これを機に、メタバースの話題に再び火がつきました。当時の新型コロナ感染症の世界的流行で外出がしにくかったことは、メタバースを活用しようという背景にもなったわけです。

※画像はイメージです

「バーチャル・リアリティー」って何?

メタバースは、自分のアバターがほかのアバターとともに、ゲームや仕事、イベント参加、買い物や旅行もできるということですね。

現時点では、メタバースのビジネスが成功しているとは言いがたい状況です。それでも最近では、メタバース上で神社参りができるサービスや、メタバース上の「SIBUYA109」が限定公開になるなど、さまざまな動きがあります。

また、警視庁がメタバース上に「サイバーセキュリティ―センター」を設けたことも、メタバースの広がりを感じさせますね。

仮想現実という意味の「Virtual Reality(バーチャル・リアリティー)」(VR)の開発も進んでいます。

VRという用語もよく聞きますが、混乱してきました。メタバースとはどう違うのでしょうか。

メタバース自体は三次元の「空間」です。VRとは、メタバース空間で見たり触わったりと現実的な体験を生み出す技術や装置のことです。

具体的な装置にはゴーグル型のヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)やコントローラーがあり、それらを使うと360度メタバースの視界が得られ、コントローラーを介してメタバース内のものに触わることなどができます。現実世界と同じように、メタバースに入り込んだような感覚や体験が得られるのです。

※画像はイメージです

メタバースは社会のありかたに影響をもたらす

今後、メタバースのビジネス市場は拡大されるのでしょうか。

総務省は、「メタバースの世界市場は2021年に4兆2,640億円だったものが2030年には78兆8,705億円まで拡大すると予想されている。メディアやエンターテインメントだけではなく、教育、小売りなど様々な領域での活用が期待されている。」と、情報通信白書令和4年版に記しています。

先にもあげたように、さまざまな分野でのメタバースの活用が試みられていて、さらにいま話題のAIとメタバースは組み合わされていくので、その将来性は計り知れないと言われます。

リスクもさまざまにありそうですね。

AIも含めて、このところの技術革新はすばやく高度であるだけに、メタバースが一般化するにつれて、その機能不全や破綻は社会的危機を生むかもしれません。

単に技術的な問題だけでなく、社会のありかたに大きな影響をもたらすものであり、セキュリティをはじめ、そのリスクも多様で大きいと考えられます。

そうしたリスクと向き合うのは、現実世界の人間の思考、判断です。これまで以上に、個人レベルでのリアルな経験や知恵が求められるでしょう。最終的に判断するのは、私たちでなくてはなりません。

ありがとうございました。メタバースを具体的にイメージができて、アバターやバーチャル・リアリティのそれぞれの役割も理解できました。夢のような空間ですが、現実の人間が操作する仮想の体験であることをおさえておきたいと思います。

(構成・文・イラスト 藤原 椋/ユンブル

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