ビジネスやIT、医療分野など、ニュースがよりわかりやすくなるための、メディアでよく見聞きする用語のその意味や使用例を連載で紹介しています。これまでの「ホールディングス」「エビデンス」「コンプライアンス」などの用語は文末のリンク先を参照してください。
今回・第13回は、「プラットフォーム」という用語の意味を、大正大学表現学部の教授で情報文化表現が専門の大島一夫(おおしま・かずお)さんに、編集スタッフ・藤原椋(ふじわら・むく)が尋ねました。
スマホやパソコンのアプリを動かすOS
プラットフォームは英語の「platform」と同じ語で、直訳すると「台、舞台」や「駅の乗り降り場」のほか多彩な意味があります。IT用語では、ハードウェア、ソフトウェアが動くための土台や基盤、環境全体を指します。
土台や基盤、環境という意味で「インフラ(インフラストラクチャー)」という用語もありますが、こちらは電気・水道・通信などといった社会基盤を指していて、行政などの場で使われることが多いでしょう。
IT業界では具体的には何を指すのでしょうか。
コンピューターは、ハードウェアとソフトウェアで成り立っています。ハードウェアとはディスプレイ、キーボード、マウスなど、物体としての本体と周辺機器のことです。
一方、ソフトウェアはパソコンやスマートフォンなどを動かすためのさまざまなプログラムのことです。中でも、実際に作業をするソフトをアプリケーションソフトといいますよね。そう、スマホで使っている「アプリ」のことです。
そのアプリを動かすためには、土台となるソフトウェアが必要なのです。具体的にはWindowsやmacOS、iOS、AndroidなどのOS(オペレーティングシステム)のことです。聞いたことがあるでしょう。
これらのOSを総称してプラットフォームということができます。つまりアプリを動かすための土台全体を指してプラットフォームと呼んでいるわけです。
ショッピングサイト、ニュースサイト、SNSも
最近は、オンラインショッピングや、映画や本の配信サービスのことも、プラットフォームと呼んでいますよね。
そうなんです。近ごろではプラットフォームといえば、OSのことをいうよりも、藤原さんが挙げたネットサービスを指すことが多いようです。
インターネット上のサービスも大きくとらえると、ひとつの巨大なコンピューターで動いていると言えます。世界中にあるコンピューターがインターネットという配線(通信)でつながって、多種多様なサービスを提供し合っているとイメージしてください。
そこでは、ニュースやショップ、官公庁や企業などの団体や個人のアピール、広告、SNSなどがプラットフォームとなって、ヒト、モノ、情報をつないでいます。
そうした仕組みを利用して、大手IT企業が躍進したそうですね。
ニュースでよく、「GAFA」(ガーファ)という言葉が使われているでしょう。これは、アメリカのIT大手企業の「Google」、「Apple」、「Facebook(metaに改名)」、「Amazon」の4社の頭文字をとった総称ですが、GAFAが作り上げた多数のユーザーとクリエーター、消費者と販売者を結びつけるサービスは「世界4大プラットフォーム」と呼ばれています。
プラットフォームがGAFAの巨額な利益を生み出していて、ビジネス戦略として大きな注目を集めています。そのため、いまはOSよりも、こちらの意味合いでプラットフォームという言葉を使う機会が多いでしょう。
プラットフォームとサブスクリプション
以前、音楽や本、映画、アプリなどの定額利用などを表す「サブスクリプション」(第10回参照)という用語を取り上げました。今回のプラットフォームと関係が深そうです。
はい、例えば、漫画をネット書店で購入する場合、1冊ごとに買うか、または一定期間に定額料金で読み放題のサブスクリプションを利用するかという方法があります。いまは後者の利用者が急増しています。有料のプラットフォームでの支払い法は、サブスクリプションが主になってきているわけです。そうしたことなどで、両者は深く関係していると言えます。
スマホやパソコンを動かすOSや、普段利用しているオンラインサービスもプラットフォームだと認識すると、新しい発見がありそうです。私も新たなプラットフォームを考えて、ビジネスに挑戦してみたいですね!
次回・第14回は「cookie」について伺います。
(構成・取材・文・イラスト 藤原 椋/ユンブル)
読者から、「IT用語のプラットフォームってどういう意味?」という質問が寄せられました。私は電車の駅のことと思っていましたが、IT業界ではどのような意味で用いているのでしょうか。