メディアで見聞きする、知るとよりニュースがわかりやすくなるビジネスやIT、医療分野などの用語について、その意味や使用例を連載で紹介しています。これまでに、「ホールディングス」「エビデンス」「ダイバーシティ」「人新世(ひとしんせい・じんしんせい)」「パブリシティ」「コンプライアンス」「ステークホルダー」「個人視聴率」について配信しました(リンク先は文末を参照してください)。
今回・第10回は、「サブスクリプション」という用語の意味や具体的なサービス内容について、大正大学表現学部の教授で情報文化表現が専門の大島一夫(おおしま・かずお)さんに、編集スタッフ・藤原椋(ふじわら・むく)が尋ねました。
定額料金でサービスを利用し放題のビジネスモデル
このごろは日常会話でも広く使われて「サブスク」という言い方が定着していますね。英語で「subscription」のことで、直訳すると、「予約購読」、「定期購読」、「会費」などの意味です。
1ヵ月や1年などの「一定期間」に、メーカーや企業が提供する「ある一定のサービスや商品」を「定額料金」で利用するビジネスモデルのことです。そう言うとこれまでもあったように思いますが、ネットで音楽や映像作品が配信されるようになって、その意味合いも大きく変化したように思います。
「定額制サービス」ですね。いま、たくさんのサービスや商品があるようですね。
音楽、電子書籍、映画、車、宿泊先、交通機関、食品、洋服、住宅、家電、飲食店でのメニュー、歯科での自由診療など、エンタメから衣食住まで、サービスも商品も幅が広がってきました。
音楽や電子書籍、映画、テレビ番組などは、料金を支払っている期間中は加入サービスが扱っている作品なら何度でも視聴や読み放題という仕組みです。音楽の場合はApple Music、Spotify、書籍はKindle Unlimited、楽天マガジン、映画はAmazonプライム・ビデオ、Netflixなどのサービスがあります。この分野では、すでにサブスクが定着していますね。
テレワーク時代で選択肢が広がった
「旅のサブスク」も、テレワークやワーケーションに便利だと話題になっています。
例えば、「一定額で毎月3泊、そのサブスクに登録された複数のホテルや旅館が利用できる」など、プランに応じてお得に宿泊施設が使えるシステムがあります。
複数の交通機関を合わせたサブスクも登場しているそうですね。
従来からの通勤通学定期の範囲を超えて、電車、バス、タクシー、車、バイク、自転車のシェアをスマホのアプリで一括予約・決済するサービスの「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」が知られてきました。サブスクの進化型とも言えるでしょう。
数年前からヨーロッパで取り入れられていて、日本でも期間限定の試みがありました。また、交通機関と、沿線の駅そば店やパンなどの食べ放題、生花、映画館の利用などを組み合わせたサブスクなども実施されていましたね。今後の広がりが期待されています。
所有ではなく「サービスを利用する権利」を買う
サブスクは、商品を購入して所有する消費スタイルとは異なるのですね。
そうです。先にも少し言いましたが、ネット時代になって、音楽や映像がパッケージのないソフトだけで配信されるようになりました。それらのサブスクでは、モノを所有しているわけではなく、利用する権利を買っていると考えてください。モノを購入する時代からモノを利用する時代になって来たのだと思います。
例えば、映画を視聴したい場合、かつてはDVD1枚・数千円で購入して、それだけを観ていました。サブスクを利用すると、1ヵ月1,000~3,000円ほどで、大量のタイトルから選んで視聴することができます。
そうすると、サブスクの利用には、向く、向かないがありそうです。
モノの管理の手間を省きたい人、サービスをより多く利用したい人に向くでしょう。
例えば、音楽なら興味がなかったジャンルでも気軽に視聴できる、本なら定額で月に何冊も読めるので、読書習慣を身に付けることができそうです。宿泊先や住居の場合は、旅をしながら働くことや多拠点居住が可能になります。これはサブスクのメリットでしょう。
私は映画鑑賞が趣味で週に3~5作品は観たいので、サブスクは費用的にお得なのと、モチベーションアップにもなります。一方で、デメリットもありますね。
もうサービスや商品が不要と思ったときに、解約を忘れると、利用していなくても費用がかかります。また、「利用するサービスや商品が増えて、いつのまにか月々の固定費がかなりかかっていた」と言う人もいます。これはサブスクのデメリットです。
避けるには、「毎月、何をどれぐらいの頻度で利用して、いくら支払っているのかを見直す習慣をつける」必要があります。私もけっこうサブスクを利用しているので、一覧表にして、定期的にチェックするようにしています。
サブスクを用いた会話例は
サブスクという用語を日常会話で使うには、「私はたくさんの映画を観たいので、見放題のサブスクを利用している」とか、楽曲を配信していなかった歌手が全曲を配信開始したときに「○○が『サブスク解禁』した」などでしょうか。
そうですね。気になるサービスがある場合、友人や知人に「○○〇のサブスク、知ってる?」などと訊ねることもできるでしょう。
いろいろと調べると、「こんなサブスクもあるのか」と驚くことがあります。メリットとデメリットを理解して、有意義に使いたいサービスです。
次回・第11回は「アサイン」「ASCII」についてお尋ねします。
(構成・取材・文・イラスト 藤原 椋/ユンブル)
最近、メディアで「サブスク」という言葉をよく見聞きします。「サブスクリプション」の略だそうで、音楽番組では、「サブスク再生回数ランキング」という特集も組まれていました。どういう意味なのでしょうか。