令和の婚活事情・第3回/止

「好き」を神格化しすぎてる…誰かと一緒に生きていくときに大事なこと【川崎貴子×川口美樹】

「好き」を神格化しすぎてる…誰かと一緒に生きていくときに大事なこと【川崎貴子×川口美樹】

2021年もあとわずか。コロナ禍での生活も2年が経とうとしています。コロナ禍で一変した私たちの生活。多くの人がライフスタイルや価値観の変化を感じているのではないでしょうか? 

マッチングアプリ「Omiai」を運営する株式会社ネットマーケティングが今年2月に発表した調査結果によると6割以上の男女が「コロナ感染拡大前と比べてパートナーが欲しいと思うようになった」と回答しました。

「結婚」はあくまでもパートナーと一緒に生きていく手段の一つに過ぎませんが、コロナ禍で自粛生活や緊急事態宣言の発令で思うように人と会えなくなった分、人とのつながりやパートナーシップについて考えるようになった人も少なくないのでは? 

そこで、婚活サイト「キャリ婚」を主宰する川崎貴子(かわさき・たかこ)さんと恋愛・婚活サイト「LoveBook」編集長の川口美樹(かわぐち・よしき)さんに「令和(コロナ禍)の婚活事情」をテーマに対談していただきました。最終回のテーマは「誰かと一緒に生きていくときに大事にしたいこと」です。

パートナーに「ピンときた」瞬間

川崎貴子さん(以下、川崎):川口さんは27歳で初めて彼女ができて、その人と結婚したと伺いました。

川口美樹さん(以下、川口):そうなんです。なぜ彼女と結婚したかをお話しすると、2回目のデートでカラオケに行ったときにアニソンを歌う流れになったんです。僕は小さいころから『ドラえもん』の映画がすごく好きで特に『ドラえもん のび太の宇宙小戦争』の主題歌が大好きだったんです。何の気なしに「多分知らないよな」って思いながら歌ったんです。そしたら彼女が「知ってる」って言ったんです。

『ドラえもん』の映画のエンディングを知っている女性なんていないと思っていたからすごく衝撃だったんです。兄にもその話をしたら「その子すごいね!」となって。兄弟でずっと『ドラえもん』と『クレヨンしんちゃん』とジブリ作品をずっと見てきたので兄にとっても衝撃だったみたいです。それが決め手だったのですが、人に話してもなかなか分かってもらえないんですが……。

川崎:人に分かってもらえないけれど、二人には分かるというか、そういう具体的なことが大事なんだと思います。通じ合うというか……。

川口:川口家の中で大事にされてきた文化が伝わる相手がいる安心感もあるし、いわゆる「ピンときた」なんですけれど、「何となく雷が落ちました」的なピンときたじゃないんですよね。あとで詳しく彼女に話を聞いてみると、6人きょうだいでそういう映画をいっぱい見て育ったそうです。家族大好きで僕も家族大好きなのでそういう部分でも話が合うと思いました。繰り返しになりますが、この話をしてもまったく共感されないです(笑)。

川崎:結婚は家族も関わってくるから家族の価値観が合うにこしたことはないですね。

川口:上から目線に聞こえるかもしれないですけれど、「人生のパートナーとして仲間に欲しい」と思いました。

川崎:分かります。私も自衛隊の勧誘みたいでしたもん。私は今の夫と会った時はシングルマザーだったのですが、自分には母性が少ないなあと思っていたんです。夫と付き合い始めたころ、初めてのお泊りのときに私は酔って寝ちゃったんです。そしたら、コンビニで化粧のクレンジングシートを買ってきてくれて、私の顔をふいてくれていたんです(笑)。夢うつつに「あれ? メイク落としてくれてる!」って。「君いいね! 一緒に家庭を築かないかい?」みたいな感じでした。

川口:具体的すぎて伝わらないかもしれないんですが、自分が求めていたところにバスっとハマる感覚ですよね。ただ、川崎さんの例もその行為そのものではなくて、その行為にいたるマインドだったり、その人のあり方とか、川崎さんがこれまで出会ってきたいろいろな人たちのデータベースがあってのそれだと思うんです。そこはやっぱり言語化しにくいかもしれないですね。

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誰かにどこかに連れて行ってほしい

川崎:そういえば、以前にAV監督の二村ヒトシさんがおっしゃっていたのですが、SとMだったら完全にS不足らしいです。みんな「私はM」というらしく。Sって聞くと大変なんですよ。Sがその場をコントロールして、Mがいいと思える空間を作って、Mが言ってほしい言葉を言う。ガチのSMの世界と婚活は違うけれど、それでも、M志望が多いなという感触はありますね。男も女もみんな受け身でみんなやってもらおうとしてて、みんな自分をどこかに連れて行ってもらいたいと思っている。

婚活や恋愛市場では、自分から声を掛けるとか自分からプロポーズするとかそっち不足なんです。責任が発生するかも? とか、みんないろいろ考え過ぎちゃって「あなたから声を掛けたんでしょ?」とか「君が言ったからでしょ?」と誰も責任を取りたがらないんです。仕事でもそういう人は多いですよね。

でも、逆に言えば「言ったもん勝ち」なんですよ。みんな待っているから。話しかけるだけで相手は喜ぶ。だから、自分から行けるとうまくいく確率が上がるんですよね。焼き鳥屋ぐらいバンバン誘ったらいいんです。

川口:そう、だから断られたらショックと思う必要はまったくないですよね。

川崎:全然。普通、大人は焼鳥屋ぐらい行きますよ。それは当たり前のこととして、一緒に食べてるとき、パートナーはいるのかいないのかを聞いて相手のことを知っていけばいい。彼女がいるのかいないのかを6年間待っていた人の相談に乗ったこともあるんですが、「彼女がいるか分からない」って言うから、「何で聞かないの?」「いいから聞いて来い!」って言ったんです。

川口:どうだったんですか? 

川崎:彼女いたそうです。「いました」って報告してくれました。

川口:6年かかったんですね。

川崎:そういう例が本当に最近多くて。そこは息を吐くように、息を吸うように聞けばいいっていう話で。女性たちは自分で意識して、自分から声を掛ける。自分からお茶に誘ってみるとか、それだけですごい確率は上がるし、世界は広がると思いますよ。男性は本当にうれしいもん。例えば彼にすごくうるさい彼女がいたとして「ごめん実は彼女がうるさくてさ。2人で行くのダメなんだけど」って言われたら、実際に行くか行かないかは別として「じゃあ〇〇さんも誘って3人で行かない?」って言えばいいだけの話で。断られたとか、大げさな話では全然ないんですよね。

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「好き」を形にしなければと思いすぎている

川口:今の川崎さんの話で思ったのは、自分が好きになった人からの好意を受け取れないと、ダメであるっていう認識がすごく強いというか。とりあえずいいなって思った人を誘うわけじゃないですか。それで、「自分の好きっていう感情が成就されなければならない」っていう思いがすごく強いんです。誰かを好きになって声を掛けるとか、お付き合いをするまでのハードルが上がり過ぎている。好きになったからには、この気持ちがちゃんと交際とかに結びつかなければならないっていうのがすごく強くあり過ぎて。

川崎:ああ、分かる気がします。

川口:「絶対好きになっちゃいけない人を職場で好きになっちゃって、どうしたらいいでしょうか? この気持ちを抑えるにはどうすれば?」みたいな相談もよくされるんですけど、「好き」っていう感情は無尽蔵に出てくるから、そもそも抑えるとかの問題じゃなくて、いろいろな人を好きになっていいんだよってことなんです。あの人もこの人も大好き、男も女も子供もおじいちゃんもみんな好きでいいんだよって。行動に移さなきゃいいからって伝えるんですけど。

「あの人が好き」ってなったときに、それを成就させなければならないって思うから誘えないんです。でも、好きっていう感情に対しての、恋愛とか、その期待値が低い人は、別に実らなくてもいいと思っている。いろんな人の「好き」にアプローチできるというか。この人も好きだし、あの人も好き。その中で、自分のことを「いいね」って思ってくれる人とやっていこうっていう感じなんですよね。

川崎:「好き」を何か形にしなければと思いすぎているのかもしれないですね。

川口:そもそも、相手にパートナーがいるのかどうかも分からない状態で恋愛に興味がない可能性だってある。好きの成功確率がどのくらいあるのかとか、調べないと分からないじゃないですか。これは実現する可能性が低いから、「いったんステイ」みたいな感じで、でも他にも魅力的な男性はいっぱいいるよねっていう頭になってなくて。自分の「好き」を神格化し過ぎている。人を不幸にすることすらある、まったくロジカルでない「好き」っていう感情を、よくそこまで信用できるねって思ってしまう。

川崎:「好き」の神格化……今日のパワーワード出ましたね(笑)。

川口:僕はパートナーシップに関してはあまり「好き」を頼らないんです。好きな人と仕事できるかって言われたら、別じゃないですか。どんなに好きなやつでも仕事できないやつはいっぱいいるし。どんなに好きなやつでも約束を破るやつもいる。

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「好き」は作れる

川崎:あと、「好き」って作為的に作れますからね。「〇〇さん好きです」って言ってアプローチして、やっとこっちを振り向いたと思ったら引っ込めるを永遠にやればいいだけですよね。そうすると、その「好き」が、とても欲しかったものに見えてくるってだけの話なので、非常に曖昧ですよね。

川口:脳ってバカなので、「好き」は強化できるんですよね。これは夫婦関係の話なんですけど、夫婦仲が悪い人って、「好き」を強化するのをサボるんですよ。「ありがとう」って言わないとか、「何々してくれてありがとね」っていう、自分が好きとか尊敬している人にしか使わない言葉ってあるじゃないですか。それを意図的に言う努力をサボるんですよ。

川崎:自然にしてたら絶対言わなくなりますからね。

川口:だから「何々してくれてありがとね」とか自分がその人のことを好きになるように自分に言うんですよ。DVやモラハラしてくる相手は別ですが、健全なパートナーシップを築いているカップルにおいてはこの人のことを感謝してるんだなとか、尊敬してるんだなというのを自分も認識していく努力をしていかないと、パートナーシップって絶対に続かない。バチンってハマる人がいて、その人のことを50年愛せるんだって思った人がいても無理です。だから、意図的に私はこの人が大好きであるっていう表現をするのって大事なのかなと思います。

川崎:自分がだまされるっていう。

川口:そういう意味で、僕も「好き」は信用してないんですよね。それは“良い勘違い”というか。だって一緒に住んでいて、嫌いよりも好きのほうがいいわけなので、わざわざ相手を嫌いになる言葉を使う意味はまったく分からないし、だったら別れればいいじゃんと思うので。そういう意味で、「好き」という感情をやっぱり信用しない部分はありますね。

川崎:「好き」に期待しない。

川口:仕事もそうですよね。例えば服が好きだからアパレル店員になったけれど、いざなってみたら思っていたのと違ったとか。それは着るのが好きなわけで売るのは好きじゃないんですよ。だから「好き」って曖昧な言葉で、何が好きなのかとなぜ好きなのかが言語化されない中で「好き」に対しての期待値が上がりすぎているというか、過剰に「好き」を大切にし過ぎているのかなって。

川崎:うんうん。

川口:極論ですけど、僕はどんな仕事でも好きになれると思っているんです。僕もメディアで原稿を書くことがあるのですが、原稿を書いていてつまんなくてしょうがないときもあるんです。この時間は苦痛じゃないですか。でも、記事を読んでくれたフォロワーさんがすごい長文のメッセージをくれたりすると、やって良かったなって思う。結局、1の感謝をもらうのに99のルーティンがあるってことなんですよね。

パートナー関係も同じで、99パーセントはルーティンなんです。ゴミ袋を換えるとか、トイレ掃除をするとか。でも、たまにある1を「わー!うれしい!!」って思えるかどうかですよね。話が広がり過ぎてすみません。

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非日常感を出してくる人には注意

川崎:私も流派は一緒です。なので、赤べこのようにさっきからうなずいているだけなんですけど。でも、本当にそうで、“憧れの君”ではなくて「この人と一緒だったらすっぴんでダラダラしてても幸せだな」とか「この人とだったら2人でラーメン屋さん入って幸せだな」とか、何でもない日常を一緒に過ごせる人を探したほうがいい。男性慣れしていない女性はつい遊び人に心をとらわれたりするのが非常に多いんですけど。遊び人は非日常感を出すのが非常にうまいので。非日常感を出してきたら、逆にヤバいと思ったほうがいいくらいです(笑)。

川口:またすごい言葉が出てきましたね(笑)。「刺激を感じる」とかね。ロマンスはパートナーシップにまったく重要じゃないんで。入口くらいにちょっとあってもいいかもしれないけど、50年間ずっとロマンスされてもウザいだけじゃないですか。だから、ロマンスじゃない部分で合うかどうかっていう。そういう意味で、パートナーシップの文脈に関しては、「好き」は全然信用できないし、いくらでも後から足せる。

川崎:確かに「好き」は足せる。

川口:ドラマとか、歌とかもそうですけど、ドキドキすること、興奮することがやっぱり日常にあふれ過ぎているんでしょうね。非日常が自分を違う世界に連れていってくれるって期待してる人が多いんだと思うんですけど。人生って99.9パーセント日常なので、その日常にどれだけ喜びを感じられるかとか、どれだけ感謝できるかとか、そういう視点からスタートしていかないと。

特にコロナで、人生のロールモデルが全部吹っ飛びましたっていう時代になったときに、自分が何に幸せを感じるのかとか、何を良しとして生きていくのかを毎日訓練して意識して生きていかないとと思います。人間って希望的なものにやっぱり目を奪われるし、年収がとか、キャリアがとか、世間体がみたいなところでしか判断できなくなると、仮に結婚できても、結局ラベルでしか見られなくなる。99.9パーセントの日常に感謝できなくなって前向きじゃない離婚を迎えてしまう。だから、最初の振り出しに戻っちゃうんですけど、やっぱり自己分析がすべてだと思います。私という人間に対する解像度がどれだけ高いかっていうのが、後の人生も全部決めていくのかなって。

川崎:生涯自己分析ですね。

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