“なんでもない日”がほぼなかった今年に思ったこと

“なんでもない日”がほぼなかった今年に思ったこと

コラムニストの桐谷ヨウさんによる連載「なーに考えてるの?」。ヨウさんがA to Z形式で日頃考えていることや気づいたこと、感じたことを読者とシェアして一緒に考えていきます。第29回目のテーマは「C= Colorlesscalendar(カラーレスカレンダー)」です。

ほぼ緊急事態宣言中だった東京

今年の東京はずっと緊急事態宣言だった。この記事が出る頃は解除されているはずだけど、この原稿を書いている9月末時点までは、何も発令されていなかった期間は3週間ほどしかなかったらしい。

https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1354816.html

ワクチン接種が国民の過半数を超えたとはいえ、変異株に関するレポートを見ていると、まだまだワクチンパスポートを免罪符にできる状態にはならなさそうだなぁと感じる。

んー、それよりみんな思っていることだと思うけど、「いい加減にしてほしい」と「しばらくは我慢せざるを得ない」という感じである。この1年半ほど付き合ってきて思うことは、やっぱりコロナ禍の世界はぜんぜん楽しいものではないということだ。どんな前向きに捉えて、自分磨きをしていても、やっぱりそうだよ。つまんねぇ。

なんというか、カレンダーから色がなくなったような気分なのである。カラーレス・カレンダー。おお、ちゃんと両方ともCになっている。のっぺりとした灰色のカレンダーを、淡々と毎日めくっているかのような気分である。日々それなりに楽しさを見つけてはいるのだけど、それでもいろどり豊かにはならない。

ただ、それ以上に不思議なのは、なぜここまで季節を感じづらくなるんだろう? ということである。

春になれば、例年どおり桜はちゃんと咲く。それなのに春って感じのぽわぽわウキウキした感じがまったくしない。お花見は行かない年のほうが多かったくらいなので、自粛が関係しているとは思えないのだけれど……。

今年の夏も暑かった。だけど、終わってみると夏があったのかなかったのか曖昧な気分になってしまう。花火大会も帰省も確かになかったけれど、それだけが理由ではない気がしている。

とにかく不思議である。自粛することでイベントがなくなっているのは確かに影響している。だけど、毎年のようにやっていたわけでは(俺に関しては)ないし、なぜここまで季節感がなくなってしまったんだろう、と。何によって俺たちは季節を感じていたんだろう? と混乱しているのが、正直なところ。

花の名前を覚えたい

さて、少し話を変えてみましょう。みなさんは「花札」というものを知っているでしょうか?
日本に昔からあるカードゲームなんですが、古い映画とかでオイチョカブというギャンブルをやるときに使っているものです。これがですね、俺はすごく好きなんです。オイチョカブじゃないですよ、花札の表現の仕方です。

花札にはそれぞれのカードに数字がいっさい書かれていなくて、ただ花の絵が書かれているんですね。その花が旧暦上の「月」に対応していて、それがそのままカードゲームにおける「数字」として使われているわけです。列挙すると、こうです。

1月……松
2月……梅
3月……桜
4月……藤
5月……杜若(かきつばた)
6月……牡丹(ぼたん)
7月……萩
8月……芒(すすき)
9月……菊
10月……紅葉(もみじ)
11月……柳
12月……桐(きり)

歴史的なことをまったく調べずに書いているので間違った感想かもしれないんですけど、これがとても「粋」だなーと感じるわけです。その月に咲く花で、どの月かを連想させてしまう。その隠喩的な表現が、すごくカッコいいなーと思っちゃうわけです。

逆にいえば、この花が咲くのは何月である、という共通認識がかつては存在していたということです。いつからか花札のために覚える、というふうに変わっていったんでしょうけど。

そういえば花つながりで言えば、ここ数年なんとなく花の名前を覚えていきたいなーと思っているところだった。ろくに興味を持っていなかったので、道端や公園で花を見かけても、どんな花なのか分からないのである。もっと花の名前を知っていれば「この花が咲く時期になったのか」とか「こんなところに咲いている」とか「いつでもどこでも咲けるこの花の生命力はすごいなぁ」みたいなことを思えるようになると、もっと世界を見るのが面白くなりそうだから。

暦に躍動感を持たせるのは、自分の工夫ではなかなか難しいところがあるけれど、毎日のいろどりを鮮やかにしていくことは少しだけできる。そこに目を向けていきたいなぁと今日も思っています。

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