「仕事もプライベートも充実させなくちゃ」「もっとスキルアップしなきゃ」なんて、日々全力で走り続けて、ちょっと疲れていませんか?
そんな女性たちに対して「誰かに拾ってもらいながら、ヌルっと生き抜いてもいい」と話すのは、2009年より単身でアフリカに渡り、アフリカ人の魅力を伝える写真を撮り続けてきたフォトグラファーのヨシダナギさん。
このたび『ヨシダナギの拾われる力』(CCCメディアハウス)を上梓したヨシダさんに、5回にわたって話を聞きました。第2回目となる今回は、「選択する力」についてお聞きします。
角を立てずにポジティブにかわす
——『ヨシダナギの拾われる力』には、誰かに拾ってもらったり、助けてもらったりしながら、ヌルっと生き抜く方法論が書かれています。その一方で、ウートピ世代の女性からは、助けの手を借りるのが苦手という声もよく聞きます。ヨシダさんは「助けてあげるよ」と言われたとき、受け入れるかどうかをどう判断していますか?
ヨシダナギさん(以下、ナギ):「助けてあげるよ」と言ってくれる人が誰かによります。仲のいい友だちや、マネージャーのキミノや、ある程度の信頼関係が築けている人に「助けてあげるよ」って言われたら、私は完全に乗っかります。なぜなら、逆に「助けて」と言われたときも、きっと助けてあげられるから。その人の性格や欠点を知ってもなお、その人のために何かしてあげられるかどうかを考えます。
——その人のために犠牲になってもいいと思えない場合、助けは借りない?
ナギ:そうですね。助けてもらったのに恩を返せないと、後々、気持ち悪さが残るんですよ。それから、相手がよく知らない異性の場合は、借りをつくることで面倒くさいことが起こる可能性があるので断ります。
——そういうときって、断り方も大事ですよね。「助けてあげるよ」と言われて、「ノーサンキューです」と思っても、角の立たない断り方をしたほうがいい。ヨシダさんの場合は、どのように断っていますか?
ナギ:私はそもそも、「助けてあげるよ」と言われたくない人に、弱みを見せません。たまに「一人でやってて大変でしょ?」と声をかけてくれる人もいますが、「手を貸してほしい日がきたら頼むね」と言って、ポジティブにかわします。頼まないつもりはないよというニュアンスを含めて、「今は自分でやれるから」「本当にしんどいときに相談させて」と、かわすのです。
好きな人としか一緒にいたくない
——いいかわしかたですね。
ナギ:昔は人を見る目がなくて、その時期は変な人しか側に寄ってきませんでした。でも、「好きな人としか一緒にいたくない」と割り切ってからは、基本的に変な人は寄ってこないかな。人間関係で嫌な思いをする機会は、昔に比べて明らかに減りましたね。ただ……マネージャーのキミノが、すごく人が好きなんですよ。
——キミノさんに言われて人に会わなきゃいけないこともある?
ナギ:そうなんです。「お前は好きじゃないかもしれないけど、一回会ってみたら面白いことになるかもしれないから会ってみよう」って言われて、渋々行くじゃないですか。自分の好き嫌いだけで仕事を選んではいけないと思うので、「じゃあやってみようか」と重い腰を上げるんですが、結局ロクな結果にならないことが多いんですよね。
その仕事をすることで、アマゾン旅行に1回行けるだけの報酬をいただけると言われたら、傷ついてでもやるべきだと思うんですよ。でもそうでなければ、不愉快な時間を費やすのは、何の得にもならない気がします。
いい人の額や頬にはツヤがある
——マネージャーさんに言われて人に会ってみたり、仕事をしてみたりして、よかったと思うこともあるんですよね?
ナギ:9割ないかな。大体、「その人気をつけたほうがいいよ」という感じで……(笑)。
マネージャー・キミノさん:ヨシダは、語学に頼らずアフリカに行っているだけあって、人を見抜く力というか、第六感的なものがずば抜けているんですよ。
——人のどんなところを見るんですか?
ナギ:日本人と話すときは、言葉の端っこを聞いています。私のことを「こういう理由で好きなんです」と言う人に限って、矛盾が生じることが多い。一生懸命、アピールをしてくれるんだけど、次に会ったときに「どこが好きだったんだっけ?」と聞くと、違う答えが返ってくるんです。
それから、表情を見るときは、口角の上がり方や目が笑っているかどうかはもちろんですが、額とか頬を見ますね。素直な人や正直な人は、額や頬に光があるというか、ツヤがあるんです。
——へえ、面白いですね!
ナギ:本にも書いたとおり、私は一時期、銀座の高級スナックで働いていたんですが、そのときにママが同じことを言っていました。「目の形とか口角のほかに、額や頬を見る」って。私のことを騙したアフリカ人も、全員、頬や額にツヤがなかったです。
選択肢を早く切り捨てるためにチャレンジする
——旅をしていると、多少胡散臭くても「付いて行ったら面白いかも」と思うこともありますよね。そういうときはどうするんでしょうか?
ナギ:以前、インドのサドゥーに弟子入りしたことがありますが、そのときは直感だけを頼りに付いて行きました。「外れるかもしれないけど、この人はきっと何かある」と思って付いて行ったら、やっぱり面白かったです。胡散臭さはずっと感じていましたけどね(笑)。
——そういう状況のときって、外れることが怖くて踏み出せない人のほうが多い気がします。
ナギ:なんで怖いんだろう? たとえ外れたとしても、選択肢が1個消えるだけじゃないですか。なんで「外れちゃった」「失敗しちゃった」と落ち込むのか、私はすごく不思議です。本にも書きましたが、私は中途半端に悩んでいる状態に耐えられないんです。一度チャレンジしてみて、「この選択肢はないな」とわかったら、早く切り捨てられますよね。だから、カブトムシだって食べるし、胡散臭いサドゥーにだって付いて行きます。
——「失敗してもいいや」と受け入れる力ですよね。この仕事には向いていないから別の仕事をしてみようとか、失恋したら次の恋にいけばいいやとか。ヨシダさんの場合なら、蕎麦が大好きだったけど、極めていったら蕎麦アレルギーになっちゃったから、悲しいけどいいやとか。そこで「じゃあもういいや、次」と切り替えるのは大事だなと、本を読んでいて思いました。
ナギ:それくらいのほうが、悩みが生じなくてラクだと思いますよ。
*次回は5月21日(月)公開予定です。
(取材・文:東谷好依、写真:面川雄大)