レズ風俗店オーナー 橘みつさん インタビュー 最終回

どんな人がレズ風俗を利用しているの? 橘みつさんに聞いてみた

どんな人がレズ風俗を利用しているの? 橘みつさんに聞いてみた

新卒で入社したベンチャー企業で体調不良が続き、試用期間の3ヶ月でクビになってしまった橘 みつさん。銀座の高級クラブ、デパートの販売員などのアルバイトを経て、レズ風俗の世界に飛び込み、2018年に24歳で対話型レズ風俗店「Relieve」(以下、リリーヴ)を立ち上げます。

現在は同店のオーナー兼キャストとして働きながら、今年の5月には自身の半生をつづった『レズ風俗で働くわたしが、他人の人生に本気でぶつかってきた話』(河出書房新社)を上梓しました。

最終回となる今回は、レズ風俗を利用するお客さんについて伺いました。

「私、女の人が好きかも?」と迷うお客さんに伝えていること

——前回、サービス前に「どうして今日はレズ風俗を利用しようと思ったんですか?」と聞いていると伺いました。どんな回答が多いですか?

橘みつさん(以下、橘):何か平均値のような回答があるのかなと思って聞いていたのですが、理由はすごく多様ですね。結婚したけどセックスレスになった。恋愛的な彩りがないままずっと生活しつづけることに耐えられなくなった。パートナーとの関係性をもっとよくしたいと思って、本人と相談した結果、うちに来た。キャストといろいろなセックスを試して、その発見をご家庭に持ち帰るというお客さんもいます。

ほかにも、映画を観る、ショッピングに行くという感覚で、自分を幸せにする方法の一つとして来てくれる方もいますね。

——たとえば、自分の性自認に迷うこともあると思うんです。異性愛者だと思っていたけど、もしかして女性が好きなのかな、と。確かめる場所として、レズ風俗に来る人もいますか?

橘:そういう方もいらっしゃいます。でも、「性行為で恋愛の対象が女性かどうか分かるというのは疑問だよ」と伝えますね。セックスの相性がいいから好きになるとも、合わないから好きにならないとも言い切れないですよね。そもそも恋愛感情とは何かという話にもなりますし。

要するに、性行為と恋愛は別物だという認識も必要ですよ、と。ただ、男女の関係よりも同性同士のほうが性的な体験をする機会を得にくいので、お金を介してサービスとして試せるのはレズ風俗の価値だと思います。

——そうですね。セックスと恋愛って、イコールで考えてしまいがちなところがありますね。

橘:そこに「婚姻」も加わると複雑ですよね。今は、恋愛・性愛・婚姻を「同じ人とするものだ」と考える人が多いから、とってもややこしい。ふとした瞬間に「あれ、私って……?」と迷ってしまうことがあってもおかしくないと思います。

——「この人とセックスしたいけど結婚したくない」「恋愛感情はあるけど、セックスはしたくない」「結婚したいけど、恋愛感情はない」みたいな感情のゆらぎのようなことは起こりますね。

橘:以前、Twitterで明かしたのですが、私は婚姻関係に強烈なコンプレックスと、憧れを持っているんです。でも、私の中で「婚姻」と「性愛」と「恋愛」は全部違うものなので、この社会の枠組みの中で結婚すると、関係者全員が不幸になる気がしていて……。

——すごく真剣に考えているんですね。

橘:でも、このような悩みも発信していると、同じように悩んだり考えたりしている方が「実はね……」と話しに来てくれることがあるんですよ。私個人の悩みだけど、私だけの悩みではないんだなって思いますね。

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悩みは聞くけど、答えは出さない

——裸で向き合うと、胸が小さいとか、太い脚が気になるといった身体的なコンプレックスを打ち明けられることも多いのでは? その時はどのように対応していますか?

橘:あります。こんなところがイヤだと打ち明けられても、「そんなことないよ」とは言わないようにしていますね。本人が気にしているのは事実なので、そこは否定しないように、ほかの素敵なところを褒めるようにします。

たとえば、身体が丸いのがイヤだと言われたら「安心する印象があって、私は好きだけどな」とか、「でもどうしたって気になるよね。私も太ももが太いことをずっと気にしていたし」と。自分のエピソードを話したりして、気にする気持ちに深入りはせず、寄り添うようにしています。

——悩みを打ち明ける人の中には、橘さんに明確な答えや「救い」を求める人もいるのでは?

橘:そうですね。でも、うちは絶対に「答え」は出さないようにしています。決断するのはお客さん自身であって、私たちではないので。

自分で答えを出すために役に立ちそうな情報を手渡すこともあります。そのときは、自分の経験や他のお客さんから聞いた話を、個人情報は分からないように気をつけて伝えています。また、意思決定をするのはあなただよというメッセージは常に添えるようにしていますね。

——困っている人を目の前にすると、余計なお世話かもと思いつつ「こうしたら?」って言いたくなりますよね。でも、橘さんはお客さんの決定を尊重し、寄り添っています。そういうコミュニケーションができるようになったのはいつ頃からなんでしょうか。

橘:新卒で入った会社を使用期間で解雇されて、これからどうしようかと考えていた時期からでしょうか。『レズ風俗で働くわたしが、他人の人生に本気でぶつかってきた話』のなかに桜井という人が登場するのですが、実は私が会社を辞めて一番つらかった時期に助けになってくれた存在で。

当時は、病気のこともあって生きていくのに必死で「これもあれもやらなきゃ、じゃないと生きていけない」ってとにかくもがき続けていました。桜井はそんな私に「えりちゃん*は、何がしたいの?」っていつも問いかけてくれたんです。

(編集部註:橘さんの本名。井沢英里華の愛称)

——常に意志を聞いてくれた、と。

橘:私にとってその時間は義務感や焦りから解放されて「今、本当は何を求めているのか」と自分の声に耳を傾けられる瞬間になっていたんです。その時間があったからこそ、私は自分らしくいられたなと。だから、桜井が私にしてくれたようにお客さんに接したいという思いをベースに運営をしています。

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家族でも友人でも恋人でもない。第三者との息抜きの必要性

——コロナウイルスの影響で対面のサービス業にも大きな困難がありました。リリーヴはどのように対応されていますか?

橘:4月の半ばからオンラインサービスを始めました。5月いっぱいは指名料なしで30分3000円からという価格設定にしていました。

動画の盗撮や転売などのリスクを避けるため、性的サービスは抜きでの接客にしましたが、普段から利用している方は「お店を応援したいから」とか「キャストに会いたいから」と予約してくれることが多かったですね。

新規の方も多かったのは予想外でした。どこにも行けない状況のなかで、家庭や職場しか居場所がなくて閉塞感を感じる。たとえ30分でもいいから、友人でも、家族でも、恋人でもない人と話したいと、予約をしてくれて。今いる場所から離れてガス抜きをできる時間がこんなにも求められていたのかと切実さを感じました。

——雑談とかちょっとしたコミュニケーションが失われましたもんね。

橘:とはいえ、やっぱりオンラインではオフラインとは扱える情報量も違う。新規のお客様だと相手のことを知るだけの情報がなかなか得られなくて難しさを感じたというキャストも多かったです。

——橘さんとしては、オフラインのほうがいいなと感じましたか?

橘:個人的にはオンラインはオンラインなりのよさがあったなと思っていて。オンラインではプライバシーの関係もあって、私以外のキャストは顔出しをしませんでした。それでも新規のお客さんがつきましたし、リピーターさんがついたキャストもいました。

オンラインサービスを導入してみて、顔やスタイルがよくないと指名が取れないというような風俗業界の常識からは飛び出せたというか。この結果を得られたのは新しかったなと思いました。

(構成:岡本実希、撮影:大澤妹、聞き手、編集:安次富陽子)

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