まさかの糖尿病予備群…健診で指摘されたら/第17回

うつ病は糖尿病の新合併症…専門医に聞くその理由と対策

うつ病は糖尿病の新合併症…専門医に聞くその理由と対策

健康診断で糖尿病予備群だと言われた…と言う人は後を絶ちません。現在の日本では国民の10人に1人が糖尿病であると推計され、国民病と言われています。そこで、「まさかの糖尿病予備群…健診で指摘されたら」と題し、糖尿病専門医・臨床内科専門医で、『糖尿病は自分で治す!』(集英社)など多くの著書がある福田正博医師に連載にてお話しを聞いています。これまでの内容は文末の一覧からリンク先の記事を参考にしてください。

第14回・第15回・第16回はそれぞれ、糖尿病の三大合併症のひとつである「糖尿病性腎症」の症状や原因、また人工透析の必要がある場合も……といったことについて聞きました。今回は、糖尿病と同様に国民病と言われる「うつ病」が糖尿病の新合併症とされる理由や対策について尋ねます。

糖尿病専門医の福田正博先生

糖尿病専門医の福田正博医師

糖尿病になるとうつ病発症のリスクが高まる

——糖尿病とうつ病は相互関係にあると言われます。合併することが多いのでしょうか。

福田医師:国内外からの複数の研究結果によって、「糖尿病の人の25~30%がうつ病を併発している、またはうつ病の疑いがある」と報告されています。この数字は糖尿病とうつ病が相互に影響しあっていることを示しています。

ストレスが強いと分泌されるホルモンの作用で血糖値が上昇する

——なぜそうなるのでしょうか。

福田医師:まず、うつ病の原因となるストレスと、血糖値の関係があります。ストレスが強い人はそうでない人にくらべて、運動不足、アルコールをたくさん飲む、摂取カロリーが高いことが明らかになっています。こうした生活習慣は当然、糖尿病の大きなリスクになります。

またストレスを感じると、脳の視床下部(ししょうかぶ)からホルモンが分泌されて、下垂体(かすいたい)が刺激を受け、副腎からコルチゾールというホルモンが放出されます。このコルチゾールはストレスから体を守っているのですが、一方で肝臓から細胞のエネルギー源でもある糖の放出を促し、各臓器にストレスに負けないようエネルギーを充填する働きがあります。しかしこれが、結果的にインスリンの働きを阻害し、血糖値が上がることになります。 

インスリンは糖を筋肉などに取り込むように働き、糖を細胞内でエネルギーとして利用できるようにするホルモンです。ただし、このインスリンの作用が低下すると血糖が利用されなくなるため、血糖値が上昇します。

糖尿病の人の場合はとくに、インスリンの作用が悪くなっています。ストレスが強いと、健康な人に比べて血糖値の上昇が著しくなります。

210412_糖尿病・膵臓・インスリン

——ストレスが強いと、自律神経のバランスが乱れてそれも糖尿病に関係すると聞きます。

福田医師:ストレスや緊張、興奮によって自律神経のひとつの交感神経が優位な状態が続くと、副腎髄質から血中へと、アドレナリンというホルモンが放出されます。アドレナリンもコルチゾールと同じように、肝臓から糖の放出を促し、インスリンの効きかたを悪化させます。

このような作用から、うつ病につながるストレスは糖尿病を引き起こしやすい、また悪化させやすいことがわかっています。

長期間の治療、食事の自己管理からプレッシャーに

——糖尿病と診断された場合の精神的ショックも関係しますか。

福田医師:糖尿病に関わらず、大病を患うとメンタルの打撃は大きいでしょう。糖尿病の場合は治療が長くなること、食事や運動について自己管理をする必要があるなどからプレッシャーが強く、生活や仕事への意欲をなくす、ストレスを感じるなどでうつ病を併発しやすいと考えられます。

——うつ病を併発すると、糖尿病の症状はどうなるのでしょうか。

福田医師:糖尿病は悪化し、これまでの回で話した三大合併症の「糖尿病性神経障害」「糖尿病網膜症」「糖尿病性腎症」のリスクも高まります。また、糖尿病の治療への意欲が低下するため、規則正しい服薬、食事、睡眠、運動ができなくなる可能性が高まります。

また、食べすぎはよくないとわかりつつ、つい食べてしまって後悔するといった繰り返しがさらに気分を落ち込ませるという悪循環になります。

——予防や改善の方法はあるのでしょうか。

福田医師:現実として、「身の回りに起こることすべてを悪いほうに考える」「自分を責める」「どうしてわたしが…という怒りや否認の感情に支配される」「食欲がない」「趣味だったことに関心がなくなった」「気分の落ち込みが激しい」といった症状に見舞われる患者さんは少なくありません。

ただし、うつ病を発症していることに気づいてない方も半数近くおられることがわかっています。こうした症状が1日中、2週間以上継続する場合はうつ病の可能性が高いという診断基準があります。

タイミングとして危険なのは、とくに、「糖尿病や予備群と診断されたとき」「治療法の強化が必要になったとき」「合併症を発症したとき」などです。

対策として、思いあたる場合はかかりつけ医に率直に伝えることが大切です。うつ病は、抗うつ薬や行動療法によって改善や治癒が可能です。それを知っておき、身近な人にも相談してほしいのです。また、患者さんの家族や職場などの身近な人は、ご本人にこうした心の状態が見て取れた場合には理解をして、適切な受診を勧めてください。

なにより、できるだけストレスを避ける生活が糖尿病もうつ病も予防し、改善することにつながります。

聞き手によるまとめ

糖尿病の人はストレスが強いとホルモン分泌などの関係でうつ病を併発しやすく、発症すると病気の悪化や合併症のリスクが高まるということです。症状があれば医師と身近な人に相談し、症状がない場合でも、できるだけストレスが少ない生活を送りたいものです。

次回・第18回は、糖尿病とがんの関係について尋ねます。

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(構成・取材・文 藤井 空 / ユンブル)

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