まさかの糖尿病予備群…健診で指摘されたら/第18回

糖尿病の人はがんの発症リスクが高い【専門医に聞く】

糖尿病の人はがんの発症リスクが高い【専門医に聞く】

「健康診断で糖尿病予備群ですよと言われた…いったいどうすればいいのか」と悩む読者の声にお応えし、糖尿病専門医・臨床内科専門医で、『糖尿病は自分で治す!』(集英社)など多くの著書がある福田正博医師に連載にてお話しを聞いています。これまでの内容は文末の一覧からリンク先の記事を参考にしてください。

第14回から第17回までは、糖尿病の三大合併症である神経障害、網膜症、腎症と、新合併症といわれるうつ病との関係について聞きました。今回は、ここ10年ほどでわかってきた「糖尿病の人はがんにもかかりやすい」ことについて尋ねます。

糖尿病専門医の福田正博先生

糖尿病専門医の福田正博医師

糖尿病のがんのリスクは1.2倍

——糖尿病、うつ病はその人数からして国民病と言われますが、がんも同様です。現在、糖尿病とがんの関係はどのようなことが明らかになっているのでしょうか。

福田医師:日本人の2人に1人はがんにかかり、3人に1人はがんで死亡しています。また、糖尿病は6人に1人だと推計されています。そのため、糖尿病もがんも国民病と呼ばれ、それぞれが日本人にとって身近な病気と言えます。

糖尿病とがんの関係については国内外で多くの研究発表がされていますが、日本では、日本糖尿病学会と日本癌(がん)学会による合同委員会「糖尿病と癌に関する委員会」が設立され、2013年、2016年に詳細な報告書を発表しています。

これによると、「日本人の糖尿病患者のがん発症リスクは1.2倍」であり、がんの種別では、「肝臓がん1.97倍」、「膵臓(すいぞう)がん1.85倍」、「大腸がん1.40倍」と高くなっています。

実際に、糖尿病の患者さんがあまり理由が思い当たらないのに血糖値が高くなってきたと思っていたら、実は膵臓がんだったというケースもしばしばあります。

また、糖尿病ががんで死亡する危険度を上昇させることを示した研究や、新規の糖尿病患者よりすでに糖尿病と診断されていた人のがん死亡率が高いという報告もあります。調査ごとに数字の誤差はあるものの、糖尿病は将来のがんの発症に影響を及ぼす可能性が高いことが明らかになっています。

糖尿病ががんのリスクを高める原因は

——なぜ、糖尿病ががん発症に影響するのでしょうか。

福田医師:そのメカニズムについては研究途上で、まだ明らかではありません。ただし、前回(第17回参照)のうつ病との関係で説明したように、膵臓から分泌されるホルモンのインスリンが関係していると考えられています。

糖尿病はインスリンの働きが悪化することで発症します。インスリンの効きかたが悪くなると、膵臓はインスリンを増産し始め、血液中のインスリンの量は必要以上に多くなります。これを「高インスリン血症」といいます。この状態が内臓の細胞のがん化に大きな影響を与えています。

また高血糖の状態では体内に活性酸素が生じて、それがいろいろな臓器の細胞のDNAを傷つけることにより、細胞のがん化につながると考えられています。

膵臓の位置(イメージ)

膵臓の位置(イメージ)

——糖尿病もがんも生活習慣病です。生活習慣も関係するのでしょうか。

福田医師:大いにあります。「加齢・肥満・運動不足・過剰な食事、過剰な飲酒、喫煙、ストレス」は糖尿病とがんの共通の危険因子です。これらの要因から、体に脂肪が増えると先ほど話したインスリンの作用が悪くなり、高血糖になります。

とくに、肥満の放置は糖尿病とがんの両方にとって危険です。脂肪組織では慢性的な炎症が起こっていて、がん化の可能性が高いのです。

生活習慣を改善してがん検診を

——糖尿病の治療では、生活習慣の見直しが必須といいます。がんの発症リスクも下げることは可能でしょうか。

福田医師:そう考えられています。糖尿病治療での「適切な食事、充実した睡眠、適度な運動、節酒、禁煙、ストレスの回避、体重と血糖値のコントロール」はがんの予防につながります。

——治療でがんの発症を予防することはできますか。

福田医師:国内外の研究で、「メトホルミンというインスリンの作用を改善する薬を服用する糖尿病の人は、がん発症のリスクが低い」という報告が多くなされています。大腸がんの発生率が有意に低いこともわかっています。

また、糖尿病の患者さんは、定期的にがん検診を受ける必要があります。日ごろの糖尿病の血液検査ではがんを発症しているかどうかはわからないからです。そうしたことを知っておいて、かかりつけ医に相談しながら血糖値をコントロールして、定期的に会社の健康診断や市民健診などに含まれるがん検診を受け、糖尿病の進行とがんを予防していきましょう。

聞き手によるまとめ

糖尿病の人は健康な人に比べると、インスリンの状態や高血糖、内臓の炎症、生活習慣が原因でがんを発症するリスクが高いことがわかりました。予防するには、糖尿病の治療と定期的ながんの検査、そして食事や睡眠、運動、ストレス回避などの生活習慣の改善を継続しようということです。

次回・第19回は、糖尿病と認知症の関係について尋ねます。

fukuda

(構成・取材・文 藤井 空 / ユンブル)

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