まさかの糖尿病予備群…健診で指摘されたら/第13回

失明に至ることも…糖尿病性網膜症が怖い理由【専門医に聞く】

失明に至ることも…糖尿病性網膜症が怖い理由【専門医に聞く】

読者から届いたお悩みの声、「健康診断でまさかの糖尿病予備群と指摘されました。どうすればいいのか…」にお応えし、糖尿病専門医・臨床内科専門医で、『糖尿病は自分で治す!』(集英社)など多くの著書がある福田正博医師に連載でお尋ねしています。

第11回は糖尿病の何が怖いのか、三大合併症の「糖尿病性神経障害(主に足)」「糖尿病網膜症(眼)」「糖尿病性腎症(腎臓)」とは何なのか、また第12回では、足の切断を余儀なくされることもあるという「神経障害」について聞きました。今回は、眼に強いダメージが現れて失明にいたることもあるという「網膜症」について詳しく伺います。

なお、これまでの内容の、「糖尿病の診断基準」「血液検査のどこを見て判断するのか」「3年後に糖尿病になるリスク」「内臓脂肪と皮下脂肪のどちらがどう体に悪いか」「体重を3カ月で3%ダウンする方法」「腹やせウォーキング」「ゆるいスクワット法」などについては、文末の一覧からリンク先の記事を参考にしてください。

網膜は毛細血管が多くて糖尿病の打撃を受けやすい

——糖尿病を発症すると、眼の障害である「網膜症」を合併することが多いと聞きます。まず、網膜とはどういう働きなのか、また網膜症とはどういう症状なのでしょうか。

福田医師:網膜は目の中の組織のひとつで、光の刺激に反応して電気信号に変換する働きがあります。その信号が視神経を刺激して脳に視覚情報を伝えます。網膜はカメラでいうとフィルムの役割があり、その中心部分が視力にもっとも関係しています。

網膜には無数の毛細血管が張り巡らされていますが、その血管が損傷したり変形したりして視力が低下する、また、ものがゆがんで見える、目の前に黒いもやのようなものが見えるなどで眼の機能が損なわれていくことを網膜症と言います。

——糖尿病の場合、網膜症を発症しすいのはなぜですか。

福田医師:糖尿病は、血液中のブドウ糖の割合が高い状態が慢性的に続き、そのブドウ糖が全身の大小の血管に障害を与える病気です。網膜は毛細血管が多いために糖によるダメージを受けやすく、血のかたまりや出血などの損傷が起こります。このように、糖尿病が原因で網膜症を発症することを「糖尿病網膜症」といいます。

糖尿病でなぜ失明する?

——糖尿病網膜症を発症すると失明にいたることがあるということですが、いったいなぜそうなるのでしょうか。

福田医師:糖尿病網膜症が原因で失明した人の数は、中途失明のうち第2位で15・4%という報告(日本眼科学会・2014年)があります。第1位は緑内障で21.0%、第3位は網膜色素変性で12.4%となっています。

糖尿病の患者さんの場合、視力が1.0あったけれどある日突然に著しく視力が低下し、失明する場合もあります。

——とても怖いことです。知人に、「健康診断で糖尿病だと言われて8年め。昨日までくっきり見えていたのに、急にものがゆがんで見え、同時に足に潰瘍ができていることもわかってすぐに4週間入院した」、「糖尿病の祖母が突然に失明して半年後に亡くなった」と言う人がいます。なぜ急に失明するようなことになるのでしょうか。

福田医師:これまでにもお話ししたように、糖尿病は発症しても数年は痛くもかゆくもないため、血液検査を受けない限り気づかないという特性があります。網膜症もまた、進行していることに気づかず、ある日突然、視界に違和感が現れたときに検査を受けて、「これは5年ほど前から進行していただろう」と判明するケースが後を絶ちません。

網膜には神経がないので痛みを感じないこと、また、視力に大きく関係するのは網膜の中心部分(黄斑部)なので、ほかの部分が出血などで障害を受けていても視力に影響が出にくいのです。さらに、出血は眼球のもっとも奥側(眼底)で起こるので、自分で鏡を見ただけでは気づくことができません。

網膜症は3つの段階で進行していきます。初期(単純性網膜症)は血管が傷んでもろくなったりコブができたり(血管瘤)します。次の段階(増殖前網膜症)では血管がつまって出血が増え、漏れ出た脂質成分が沈着した白いシミ(硬性白斑)が生じます。この段階ではまだ視力に影響が現れず、自分の眼で起こっていることに気がつきません。

さらに進んだ段階(増殖網膜症)になると、眼の中で大量の出血が発生します。また、血管がつまることによる酸素不足を補おうとして「新生血管」と呼ぶ新しい血管がつくられるようになります。この血管が困った存在で、非常にもろくて破れやすく、大きな出血を起こします。

その出血は眼の硝子体(しょうしたい)というジェル状の組織を損傷します。この時点で、突然に視野にもやや霧がかかったようになる、視野が欠ける、またまったく何も見えないようになることもあります。さらに、網膜剥離が起こると失明にいたります。患者さんの自覚では急な事態ですが、実は糖尿病の発症と同時にじわじわと静かに始まっていた症状なのです。

糖尿病網膜症の眼

糖尿病網膜症の眼

正常な眼 画像提供:ふくだ内科クリニック

正常な眼 画像提供:ふくだ内科クリニック

初期の段階で発見し、血糖コントロールを実践する

——自覚したら治療で回復はするのでしょうか。

福田医師:発見できたタイミングによります。眼底検査で血管にこぶが見つかったという初期段階ならば、血糖値をコントロールすると進行が止まって回復することがあります。それを過ぎて出血が多い場合は、レーザー治療や硝子体手術などで視力低下を抑えることはできても、視力の回復は望めません。

——一般の網膜剥離は、治療や手術で回復すると聞きますが、糖尿病の場合はそれがかなわないのですか。

福田医師:糖尿病網膜症の場合は、剥離した部分だけではなく、網膜全体の毛細血管がダメージを受けて出血をもたらしているので、回復は非常に難しいのが現実です。

——糖尿病の影響から眼を守るためにはどうすればいいのでしょうか。

福田医師:いち早く気づき、糖尿病を進行させないことが第一の予防であり、治療となります。健康診断で糖尿病や予備群だと診断されたらすぐに、糖尿病内科や眼科で眼底検査を受けてください。そして、そのときは結果が良好でほっとしたとしても、その後、半年に1度は定期的に検査を受けることも重要です。

「眼? は? どこも悪くないですが」という人も多いのですが、放置すると数年後にある日急に著しく視野が悪くなること、失明という事態もあることを念頭に、積極的に受診や検査をしましょう。

聞き手によるまとめ

糖尿病が原因の網膜症では、進行すると視野に著しい問題が出て失明することもあるということです。前回紹介した「神経障害」による足のトラブルは、重症化する前に自分で気づくこともあるようですが、眼の場合は、視野にも見た目にも何の症状も現れないとのことで、より怖いことではないでしょうか。「眼は体の窓」と知っておきたいものです。

次回・第14回は、糖尿病の合併症のうち命に関わる可能性が高い「腎症」について伺います。

(構成・取材・文 藤井 空 / ユンブル)

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