『だから私はメイクする』ひらりささんインタビュー(後編)

「メイクやファッションを自分とかけ合わせると楽しい」劇団雌猫ひらりささん

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「メイクやファッションを自分とかけ合わせると楽しい」劇団雌猫ひらりささん

極論、メイクなんてしたくなかったらすっぴんでもいいのに、なんで「やらなきゃいけない空気」なんだろう? みんなは息苦しく感じないのかな? 何をモチベーションにメイクを楽しんでいるんだろう?そう気になった時に、おすすめしたい本があります。

だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』(柏書房)です。本書に収録されているのは、SNSでは言えないような女性たちのメイクやファッションに対する本音。その言葉に触れるたびに、「正解のメイク」の前に、「私はなんのためにメイクをしているんだっけ?」と考えたくなります。

前回に引き続き、『だから私はメイクする』を上梓した劇団雌猫のひらりささんに、自身のファッション遍歴や美意識について伺いました。

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メイクは自分を総合的に見せる手段だと気がついた

——今回のメイク本企画、ひらりささん自身がコスメ沼にハマったことで動き出したそうですね。すごい量のコスメを買い集めているんだとか。

ひらりさ:ちまたのコスメ好きのみなさんに比べたら全然ですが、オタク気質なので、限定品が出るたびに買っちゃいますね(笑)。「モノ」としてのコスメ萌えもあります。昔はコスメも服も、手にするだけで満足していました。「ファッションとして自分とかけ合わせていくと楽しい!」と思えるようになったのは、メイクの基本を学んだ20代後半からですね。

——それまでは、ファッションにどんな意識を持っていたんですか?

ひらりさ:少女漫画の影響で、お人形みたいな服が好きで、雑誌『KERA』から派生したファッションムック『ゴシック&ロリータバイブル』(バウハウス)を読んでいました。深キョンがロリータ少女を演じていた、映画『下妻物語』も好きでしたね。当時は「この服が好きだから着る」って感覚で、服を買ってもメイクをしないからまったく着こなせていなかったです(笑)。メイクと服も連動しているんだと気が付いて、総合的に自分を見せることを知ってから、おしゃれがグッと楽しくなりました。本当に、20代後半になってからなんですけど……。

——全体の調和を考えてのオシャレ、大切ですよね。

ひらりさ:お化粧も服も、基本ルールを身につける前に、好きなものを選べる自由だけ手に入れてしまって、迷子状態でしたね。中学時代からずっと私服通学だったし、就職後も服装自由な会社に勤めているのですが、オフィスコードなど、多少の制約があると、失敗は少ないような気がします。初心者が突然フリースタイルに挑戦するのは難しいので。

ファッションやメイクはあくまでオプション

——制約があるのも大変だけど、自由で選択肢が多いからこそ迷ってしまう、という気持ちはよくわかります。

ひらりさ:スティーブ・ジョブズみたいに効率を考えて自分の定番を決めている人を除けば、ファッションやメイクって、やっぱり娯楽だと思うんですよ。「おしゃれ」と「身だしなみ」は別もので。身だしなみは必須だけど、おしゃれはあくまでオプションですよね。

——メイクだって、どちらかといえばオプションですね。

ひらりさ:ただ、そのオプションによって、さまざまなシーンで有利・不利がうまれてしまうのは事実なんですよね。ここが難しいところでもある。

——仕事の時のファッションなど、ひらりささん自身が気をつかっていることはありますか? 

ひらりさ:基本的には自由な職場なのですが、肌の露出を調整したり、メイクの濃さを考えたり、マナー上の試行錯誤はしています。堅めの取引先に行くときはタイトスカートを履いて、OLのコスプレをしている気分で楽しんでいます。TPOプラス、自分のテンションが上がることも大切かなと。

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美意識は生い立ちも大きく影響する

——美容やファッションに対するこだわりって、育った環境が大きく関係することも多いですよね。

ひらりさ:母親や姉妹と自分を比較して迷ってしまう人は、多いですよね。親との関係によって美意識ができている場合もあります。同人誌版に寄稿してくれた女性の中に「呪いをかけられた女」がいました。

——呪い?

ひらりさ:二重まぶたのぱっちりした目の子どもが欲しかった母親に、お腹にいるころから「二重の子が産まれますように」ってトイレ掃除しながら念じられていたそうなんです。そんなころから美意識にとらわれている人もいるのかと、衝撃でした。

——トイレ掃除しながら神頼みっていうのも、リアルですね……。ひらりささんは、どんな環境で育ったんですか?

ひらりさ:私の場合は親からもずっと「可愛い」と言われて育てられたんですよ。だから、自分の容姿に疑問を持つこともなかったし、「可愛くなりたい」と悩むこともなかったんです。

——自己肯定感を大切に育ててくれる親御さんだったんですね。

ひらりさ:でも、そううまくいくわけではなくて。中学から女子校に入って、同じ年代の女の子がいっぱいいる環境に身を置くようになってから「あれ? 自分、もしかして世間的には可愛くないのでは?」と思っちゃったんですね(笑)。ずっと肯定されて育ったからこそ、迷子になっちゃったんです。

——クラスの女子と比較してしまったんですね。その気持ち、ひきずりませんでしたか?

ひらりさ:社会人になっても数年は「自分がおしゃれしても意味ない」って思っていた部分がありましたね。そうなると、余計に難しくなっちゃって。化粧っ気がなかった人が急にメイクすると「急に色気付いて」って言われたりしますよね? あれも嫌だったんですよ。

——会社でも、普段薄化粧の人がしっかりメイクすると「今日デートなの?」って聞かれるのはあるあるですね。

生産者としての顔出し

——ひらりささんは、今は堂々とおしゃれやメイクを楽しめるようになったんですよね。

ひらりさ:そうですね。前は写真を撮られるのも嫌だったのですが、ライターとしての仕事でも、メディアで顔を出して活動することも増えてきました。ネットに顔を出すのには抵抗があったけど、今は「生産者の顔」としての顔出しだなと思っています。

——生産者の顔?

ひらりさ:りんご農家みたいな。「このりんごは私がつくりました」っていう。記事に対しての生産者表記だと思ってやっていますね。顔出し記事を見た人が容姿を勝手に判定してくることもあるけど、「顔出ししているから自信がある」というわけでもないんですよ。

——自信のあるなしでなく、発言に説得力を持たせるための顔。それはリアルの世界にも通じるものですね。年齢を重ねるにつれて顔つきやファッションに生き様が出てくると思います。

ひらりさ:年齢によって合わなくなってしまうファッションあるけど、自分が変にビクビクしていると、周囲にも「そのおしゃれ変じゃない?」って言うのと同じことになってしまうような気もしていて。このあたりは付き合い方が難しいですね。

——年相応のファッションって何だろう? って思いますよね。わかってはいるけど、押し付けられたくもない。「X歳でミニスカートは痛い」とか、ネットでも定期的に燃えるトピックですよね。

ひらりさ:ベースとしては「どんなおしゃれも応援したい」って気持ちですね。書籍に収録した座談会では、「子どもの頃に憧れていた、強くて図々しい自由な女へ」をキャッチコピーにしています。読んだ方が「図々しく自由に生きよう!」って思ってもらえたらうれしいです。

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(取材・文:小沢あや、撮影:青木勇太)

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