恋人になったらシビアに彼を見る
前回、アバンチュールは相性をはかるバロメーターのひとつとお伝えしました。パリジェンヌたちが最優先するのは相手との相性。
付き合うまでの段階でフルに働かせた「直感」ですが、恋人同士になったらスイッチが「現実を見る」ほうへ切り替わります。
それまでひとりでしていたあれこれを、2人一緒にします。仕事をする大人のカップルで、自由になる時間は夜と週末。アペリティフ(ディナーの前にお酒を飲みながらするおしゃべり)、夜食(遅い時間に食べる食事)や散歩、ショッピングなどで同じ経験を重ねるのが基本。そうすれば、相手の生活感、価値観、金銭感覚などが透けて見えてきます。
ほかは、行き先を決めた「デート」。だからと言って「アミューズメント施設にでかけ、刺激的なアトラクションで楽しんだ」という話を私は今まで聞いたことがありません。代わりの「刺激的な場所」に当たるのは、たとえば美術館の特別展示。日ごろから、期間限定エクスポやイベントの口コミが多いのも、パリの特徴です。
ふだん見られないものを一緒に見たり、特別な体験を一緒にしたりと、盛り上がりたいという気持ちは日仏一緒。「面白そうだから行ってみよう」というデートのきっかけは、私たちのアミューズメントと同じ感覚だと思います。
“いい男”の条件は…?
カフェでは、会話の少ないカップルはゼロと言ってもいいくらいに、しゃべっています。内容はささいな「身の回りを報告しあっている」レベルなのが私には不思議ですが、逆に刺激的な話題でないと盛り上がれないのは、相性として違うということだと思います。
美術を生業(なりわい)としている私の目には、(まるで彫刻のような美男の)「イケメン」でもセンスが「おしゃれ」でもなく映る男性とパリジェンヌのカップルは、失礼ながら、不釣り合いに思えることもしばしば! しかし彼女らは恋人を横に誇らしげです。
それは外面でなく、内面を見ているから。おしゃべりが続くのは、互いの自然で会話が成り立ち、退屈しない人。その証拠は、パリジェンヌの表情の豊かさに現れています。彼女側が無理しないでいられ、女性の潜在的魅力を引き立たせるのが上手な男性。それがパリでの“いい男”の条件です。
パリジェンヌが「コケティッシュ」と言われる理由
以下は暮らしてみて実感したことで、私個人の考えです。
男女平等とは言え、どうしても体力的な部分で女性が男性に劣ってしまうのは事実。
荷物を男性が率先して持つ。家族で食べる丸ごとチキンを切り分けられるのが男性ならば、重いワインのフルボトルを持って注ぐのも男性が係。女性への助けを率先する、レディファーストの文化は、理にかなっているとつくづく思いました。
何でも自力でできるつもりで渡仏した私には、苦い思い出があります。重い荷物を持っている私に、当然のように男性が手を差し伸べてくれた際、「大丈夫」と持ち上げ、力自慢したつもりが、「それは悲しい」と引かれてしまいました。
パリジェンヌの様子を見渡すと、(人にもよるけれど)堂々としたふるまいで強い面を見せる一方、か弱さも見せるコントラストがはっきりとしています。いわゆる「ツンデレ」。それは意図的というよりも、女性優先の習慣がもたらすものとも知りました。
恋するパリジェンヌ的コケティッシュさは、世界の女性の憧れ。でも、それは女性だけの努力のみでは完成しない。男性の役割が大きいことを、私はパリで学びました。
レディファーストが100パーセント定着していない日本では、無理があるかも。でもあなたの目で、彼をしっかりチェックしてください。たとえ10パーセントでもパリジャン的レディファーストを持つ人は安心できる上、あなたを引き立ててくれる、最高のパートナーになるに違いありません。