ひとり旅とカメラをこよなく愛する編集者兼ライターの宇佐美里圭(うさみ・りか)さんのフォトエッセイ、今回はスペインのバルセロナです。バルセロナはガウディだけじゃない。疲れた心身に効く白浜と“空白”があるのだそう。
バルセロナといえば“青い海”
バルセロナといえば、ガウデイ、ピカソ、ミロ、バルサ……人によっていろいろ思い浮かぶでしょうが、私にとっては青い海。1992年のバルセロナオリンピックで再開発された白い砂浜の人工ビーチ、“バルセロネータ”は街から歩いて行ける距離にあります。
大学時代(つい最近だと思っていたのに、気づけばひと昔前!)、1年間だけバルセロナに住んでいた頃は、春夏秋冬しょっちゅうこのビーチに来ていました。朝起きて、天気がいいとそのまま海へ。途中でカフェ・コン・レチェ(カフェ・オ・レ)とパンを買ってビーチで朝ごはんです。大学のお昼休みも、天気がよければ友達と海へ行ってランチ。夜も、二次会はビールを調達して、砂浜で飲むこともありました。
ビーチは、ダイニングであり、リビングであり、バー(以前もそんなこと書いていたっけ)。そういえば、ある暑い夏の明け方ビーチを歩いていると、なんと”寝室”にしているツワモノ一家が。シーツと枕を家から持ってきて、砂浜をベッドに家族四人が川の字になって寝ていました。なるほど、その手があったか……!(笑)
ビーチはやはり夏が一番にぎわっていますが、冬は冬でセンチメンタルな雰囲気が魅力的でもあります。
思うに、海や河や山の一番いいところは、その上には必ず“空白”があること。水上や尾根には高層ビルも住宅街もありません。刻々と移り変わる空があるだけ。“空中空白地帯”です。人にはやはり空白が必要なのでしょう。私たちは海をぼーっと見ながら、海そのものというより、場所や時間を超えた、はるか遠くを見つめている気がします。
ちょうど数日前、ある著名な建築家の方がこう言っていました。
「人の頭の上は “天使の領域”。だから教会の天井は高いんです。クリエイティブな仕事をする人は、頭上は高い方がいい。そこから“降りて”くるからね」
おっと、海の話をしていたら、ついつい話が飛んでしまいました。さーて、年末もすぐそこ。そろそろ“空白”を見に行かなきゃと思う今日この頃です。