始まってもないのに「しまい方」なんてわからない
サムソン:最近自分と同世代の50代くらいの人のインタビューとかを読んでいると、「しまい方」がテーマとしてよく出てくるじゃないですか。ちょっとまだ「しまう」のは難しいなって思うんですけど。
スー:まだね。
サムソン:始まり方もわかってないし、そもそも始まってないのにもう「しまい方」かよって思います。それにしてもゲイって死亡率高いんですよ。
スー:そうなんですか? それはなぜ?
サムソン:なぜでしょうね。ゲイバーに行くたびに「誰々ちゃん死んだらしいよ」って聞くのよ。
スー:体感として、ということですね。
サムソン:一人暮らしだと、独身の男でも普通の既婚者より10年くらい寿命が短いって言うじゃないですか。だから能町さんと、一緒に暮らしているのはお互い生命維持装置だねっていう話はよくします。
スー:たしかに、中年後期から緩やかな自殺みたいな生き方をする人いますね。サムソンさんは能町さんとの生活がこのまま続けば、聞いている限り規則正しい生活をしているし、結構いけるんじゃないですか。
サムソン:どうでしょう。持病があるからね。糖尿病なんですよ。それで片足がダメになったり、目が見えなくなったりしてみね子の世話になろうとは思わないね。
スー:能町さんに介護させたくないってことですか? 優しい、なにそれ。気持ち悪いほどいい話じゃないですか。サムソンさんにお金を残すために結婚しようって言う能町さんと、いや私は持病があるからあなたとは結婚できないと言うサムソンさん。O・ヘンリーじゃん。
サムソン:いやいや、結婚するのがイヤというわけじゃなくて責任がイヤなの。あと介護されるのがイヤ。気性として、愛されると逃げたくなるタイプなの。
スー:追いかけたいタイプ?
サムソン:そうそう。私今まで恋愛って本当に上手くいかないタイプだけど、たいてい「好きです」って言われると冷めちゃうの。
スー:それはなぜですか?
サムソン:親に愛されなかったからかな?
スー:育成環境。だいたいその一言で片づけちゃうのもアレですけど。
サムソン:50過ぎてまでそんなこと言うとは思わなかったけど。
スー:自尊感情は低いほうですか?
サムソン:低いよー。でもこれ高くするためには5歳くらいからやり直さないといけないから。そんな面倒臭いことはしたくない。
スー:自尊感情が低い人が50歳近くになってから同棲を始めて、そこそこ上手くいっている、ゆるい連帯として機能しているというのは、素敵な話だと思いますよ。
サムソン:能町さんが「出来た人」ということに尽きます。