ジェーン・スー×能町みね子トークイベント第3回・止

大人だからこそ、会いたい人には会っておく…【ジェーン・スー×能町みね子】

大人だからこそ、会いたい人には会っておく…【ジェーン・スー×能町みね子】

ジェーン・スーさんの対談集『私がオバさんになったよ』と、能町みね子さんが自身の5歳当時を描いた私小説『私以外みんな不潔』(共に幻冬舎)の刊行を記念したトークイベントが4月、「代官山 蔦屋書店」(東京都渋谷区)で開催されました。

『私がオバさんになったよ』の最終章に登場したのが、能町さん。同書は、ジェーンさんが過去に対談したことがあって「もういちど話したかった」という人との対談をまとめた一冊ですが、能町さんとは初対談で、「人生は有限。会いたい人には会ったほうがいい」というジェーンさんの思いが結実した対談だったといいます。

その“延長戦”として実現したのが、このたびのトークイベント。「大勢が苦手」という2人の友達付き合いについて、パートナーとの生活について、男女差別についてなど、トークの内容を3回にわたってお届けします。

【第1回】BBQもホムパも異業種交流会も…距離の詰め方って難しい
【第2回】「男って」「女って」は信用ならない…

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気が付けば、女がいない

能町みね子さん(以下、能町):ディスるつもりじゃないんですけど、ちょっとびっくりしたのがTBSラジオで始まった「ACTION」という番組。武田砂鉄さんや尾崎世界観さんたち5人がパーソナリティーに入っているんですけど、最初「あ、面白そうだな」って普通に思ったんですよ。で、今日初めて「男しかいない」と気付いた。こういうことが起きちゃうんだと思って、モヤっとした。

ジェーン・スーさん(以下、ジェーン):そういう意見は局内からも出てるようです。どこの局もそういう傾向はあるんでしょうね。

能町:NHKもそうです。私がレギュラーをやってる「すっぴん!」(NHKラジオ第1放送/NHKワールド・ラジオ日本)も、女性は私しかいないですから。「すっぴん!」には「アンカー」といって、他の局ではアシスタントと呼ばれるポジションで女性のアナウンサーの方が5日間入っているから、それも理由としてあるのかなとは思うんですけど。でも、パーソナリティーとして名前が出るのは、男4、私が女1。別に女×女でもいいのに。

ジェーン:「ジェーン・スー 生活は踊る」(TBSラジオ)はパーソナリティーの私が女、パートナーが女性が2人と男性が3人で、ギリギリ男女共学みたいな感じにはなってる。まだ女の数が増えることに慣れてないというか、意識しないとそうなっちゃうんでしょうね。

能町:無意識でやっちゃってるんでしょうね。

ジェーン:ラジオだけでなく、多くの場合、完全に無意識だと思いますよ。それを変えていくには数十年はかかるだろうけど、「あきらめない」というやり方しかないなと思う。

能町:津田(大介)さんなんて、すごく頑張ってらっしゃる。(芸術監督を務めた国際芸術祭の)「あいちトリエンナーレ」の参加アーティストを男女同じ数にして、(Twitterで)ディスってくるクソリプをちゃんと相手にしてる。

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“全日本クソリプ被弾選手権”に参加しているつもりになる

ジェーン:クソリプって、どうしてます?

能町:昔に比べれば、最近はだいぶ無視するようになりました。

ジェーン:私もいちいち腹を立てたり、反論してた時期もあったんですけど、最近、自分をうまくだます方法を思いついたんです。

「全日本クソリプ被弾選手権」に参加してるつもりになるんですよ。そうすると、クソリプがきても「ちょっと! そんなんじゃ勝てないよ!」という気持ちになってくる。著名人たちはもっとスゴイの食らってるから、私のところにくるようなクソリプレベルでは、勝ち目がないわけです。

そうすると、会ったこともないクソリプの送り主と共闘意識が生まれるんですよ。「おい、もうちょっと頑張れよ!」と……。なんとなく、今はそうやってごまかしています。もちろん、エゴサーチして出てくる作品や番組に対するまっとうな批評は受け止めますけど、的外れなクソリプに対しては「これでは入賞もできないぞ!」と思うように。

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能町:私はクソリプを送ってくる人の過去のツイートはかなり見ます。

ジェーン:私もやります。ホームを見に行くと、幸せそうな人がいない。

能町:日々つらいんだろうな……という同情も生まれるんです。

ジェーン:「もの言う女」って、文句つけやすいじゃないですか。精神が鍛えられますよね、ツイッターは。

女全般を呪ってるのでは? と思うこともままあります。最初は私の文句を言ってたはずなのに、最終的には「女め!」みたいなツイートになってたり。

あと、テレビに出たら「ものを言うなら化粧してからにしろ」というリプが飛んできたこともあります。もちろんメイクはしてたんですよ。顔がぼやけてきてるので、デーモン小暮くらい塗ってもTVだとノーメイクに見えがちなんですけど。

「赤い口紅」みたいなものがメイクだと思っている人たちにとっては、私はノーメイクに見えるんでしょうね。

その人のホームを見ると、人生に満足していないことが明らかでした。お金がないとか、仕事でイヤな思いをしたとか。うまくいかない自分を責めて、極端になると「自分はモテないから」という考えになる。そんな中で、メイクもそうですけど、「こうあるべき」と考える女と真逆な女が、偉そうにものを言ってるのが我慢ならないのかも。

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大人だから、会いたい人には会っておく

ジェーン:今回の本で、なぜお話ししたことのなかった能町さんに1人だけ対談をお願いしたのかというと、山内マリコさんと対談をした帰り道、たまたま(ライターの)雨宮まみさんの話をしたんですよ。

雨宮さんとは一度だけイベントで一緒になったことがあるんですけど、ちゃんとお話ししたことはなくて。でも、絶対にまた会えると高をくくっていたんです。

だからやっぱり、「タイミングが合えばそのうち」なんて言ってる場合じゃないと思いました。大人は「会いたい」とは口にしにくいけど、言わないと後悔する。大人になって友達をつくるのは面倒くさいけど、勇気を持って当たっていこうと。

能町:会いたい人には会ったほうがいいですね。

ジェーン:人生は有限ですもんね。対談を受けてくださり、ありがとうございました。

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(取材・文:新田理恵、撮影:宇高尚弘)

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