東京大学准教授・赤川学さんインタビュー(後編)

婚活に疲れた貴女へ 東大・社会学の先生が贈る現実的なアドバイス

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る
婚活に疲れた貴女へ    東大・社会学の先生が贈る現実的なアドバイス

そろそろいい歳だから一応婚活はしてるけど、いくら合コンに顔を出しても「いい男」いないし、もういい加減疲れた……。

そう感じている女性は少なくないはず。

そもそも、私たち、なんで結婚したいんだっけ?

婚活に疲れたら、一回くらい合コンはキャンセルしてちょっと考え直してみませんか?

「いい男がいない理由」を社会学の観点から解き明かした前回に引き続き、今回も、歴史社会学やセクシュアリティ研究がご専門の東京大学准教授・赤川学(あかがわ・まなぶ)先生と一緒に考えていきます。

photo2-1

キャリア女性におすすめは「アカヒモ」?

——前回「私たちのまわりにいい男がいない理由」を痛いほど理路整然と教えていただきました。私たちが求める「フツーにいい男」がどれほど要求水準の高いものか、よーくわかりました。今回は、前回の前提をもとに、私たちがとるべき戦略を教えていただきたくて……。

赤川:わかっていただけましたか。それはよかった(笑)。

——「フツーにいい男=3高のイクメン」は諦めるとして、私たちはこれからどのラインを狙っていけばいいのでしょうか?

赤川:ということでしたら、「アカヒモ」とかいかがですか? 結構おすすめですよ。

——アカヒモって何ですか?

赤川:「アカデミック・ヒモ」の略称です。つまり大学の研究者志望だけど、まだアカポス(アカデミック・ポスト)に就けていない男性たちです。みなさん軒並み高学歴ですし、草食系が多いのでわりとマメに家事をやります。職に就いたとしても一般の会社員ほど忙しくないので、育児をやる余裕もありますし。なかなかのおすすめ物件ですよ。

——なるほど、前向きに検討する余地がありそうですね。

赤川:実はこのあいだ私が所属している東大の卒業式がありまして。その時、これから就職していく東大女子のなかで、「アカヒモ」でもいいという人が、少数ながらいました。もし彼女のような方がいるなら、「アカヒモ、飼ってみませんか?」とおすすめしたいです。

——で、どうでした? 恋は実りましたか?

赤川:いいえ、残念ながら(笑)。「合コンやろうよ」とお誘いしてみたんですが、立ち消えになりました。やっぱりキャリア女性(予備軍)にとっては、高学歴で家事と育児ができるだけの男性はダメみたいです。

——ああ、やっぱり(笑)。いくら高学歴で家事と育児ができても「ヒモ」は求められていないんですね。

赤川:ですね、なかなかに世知辛い。

でも、「家事ができる」は絶対条件

赤川:とはいえ、東大女子を見る限り、「家事ができる」というのは絶対条件のようです。

——わかりますー! 自分だって結婚しても出産しても、ずっとやりがいのある仕事は続けていたいので、家事や育児は五分五分で分担してくれる人じゃないと困ります。「ゴミ捨てやってエッヘン! オムツ替えてドヤ顔!」みたいなイクメンぶりっ子はムリです。

赤川:でも、家事と育児が完璧にできるだけでも、ダメなんですよね?

——ダメです(笑)。

赤川:私、思うんです。ひとりで生きていける条件を身につけた女性が、このまま増え続けたら、結婚する人がいなくなるんじゃないかって。だって、自分で稼げてシングルライフを楽しんでる女性が、結婚するメリットって、どこにあるんですか? 家事や育児をしてくれるという理由だけで、男性を飼うなんていう面倒くさいこと誰もやりませんよね。

——まあ、家事も育児もお金を払えばアウトソーシングできますから、わざわざそのために結婚するメリットは正直ないですね。

赤川:「収入と学歴は自分も手にしちゃってる」「家事や育児ができるだけの男は要らない」となると、あとはもう純愛の世界になってきます。「この人と一緒にいたいから」という気持ち一つ。その場合、もはや条件は関係なくなってきますよね。

photo2-2

結婚はリスクでしかない

赤川:最近、学生の中に「離婚保険」なるものを提案している人がいました。

——離婚保険ですか……?

赤川:離婚した時に、保険金が下りるという制度です。自動車保険に加入して、事故が起きた時に保険金がもらえるのと同じ仕組みですね。

——確かに、子どもができてから離婚した場合、女性が親権を持ってシングルマザーとして育てていく場合が大多数ですから、保険金がもらえるのは助かるかも。最近は元夫から養育費がもらえないケースもよく聞くし。

赤川:ポイントは、「保険でもないと、結婚する気になれない」と考えている女性が少なくないという点です。

自動車保険がなければ、いくら快適でも怖くて誰も車の運転なんかしませんよね。それと同じで、保険でもないと結婚も出産もリスキーすぎてできない、と。結婚はリスクでしかないという考えかたです。

みんな、ホントに結婚したいの?

赤川:今って、よく少子化対策が叫ばれるじゃないですか。女性活躍社会しかり、保育園問題しかり。政府がやろうとしていることのすべてに、「みんな結婚して子どもを作りたいのに、それができないからなんとかしなきゃ」っていう前提が埋め込まれているんです。でも、本当にそうなのかな?って私は疑っていて。

——どういうことですか?

赤川:みんな、政府が考えてるほど、結婚もしたくないし、子どもが欲しいわけでもないんじゃないの?と。

——ああ、それはあるかもしれませんね。ウートピ読者も、「結婚しなきゃ」というプレッシャーに晒されてはいるけれど、妥協してまで結婚したいかといえばそうじゃない。適当に結婚するくらいなら、このままおひとり様で自由を謳歌するのも悪くないな、って感じです。今も十分楽しいんで。

赤川:そうでしょ。実際のところ、そうなんですよ。政府が考えてるほど、みんな結婚したいわけじゃない。

——ちょうど先日生涯未婚率が過去最高を記録して「男性23%、女性14%」になったという調査結果も発表されましたしね。

女性は婚活市場から降りたがってる?

赤川:みなさん、お気づきでないかもしれませんが、これでも世界的に見て日本って、結婚しない人にやさしい社会なんですよ。よくフランスや北欧が「理想郷」みたいに語られますよね。子育てに関する社会保障が充実していて、長時間労働がないのでみんながワークライフバランスを実現できてる、みたいな。

——確かに、よく見ますね。

赤川:でも、あれって、「みんなが結婚して子どもを産むこと」に最適化した社会なんです。逆に言えば、それ以外の生きかたをしたい人は居づらい社会、子どもを産むことに対するプレシャーがとても強い社会ということ。どこに行くにもカップルが前提ですし、納めた税金のかなりの部分が子どもを産んで育てることに回されちゃう。

——そう考えると、私たちみたいに東京でおひとり様を謳歌している女性にとっては、かなり住みにくい環境かも……。

赤川:みなさん「結婚したいのに、いい男がいない」とおっしゃるけれど、本心から結婚したいと思っているんでしょうか?

——なんか、わからなくなってきましたね(笑)。

赤川:おもしろいデータがあるんです。スウェーデンは政府が子どもの社会福祉に関する支出を増やすと、子どもは増え、減らすと子どもも減るんです。つまり出産、保育、教育などにいろいろと手当がつくことが、女性にとって産むインセンティブになっているわけです。ところが、日本って、全然そうじゃないんですよね。少子化を食い止めようと、結婚して子どもを産みやすくなるような経済的施策をしても、結婚する人も出産する人も全然増えません。

日本の女性はそんなに甘くないと思うんです。「いろいろ手当がついておトクだから、結婚して子どもを産もう」とはならない。

——確かに、「手当がついておトクだから結婚しよう」はないですね。

赤川:でしょ。本当はもう婚活市場から降りたい女性も少なくないんじゃないか? そう感じるんですよね。今の時代は「少子化対策=善」みたいな空気なので、「結婚したくないし、産みたくもない」という声が圧殺されちゃってますけど、案外、「面倒くさいだけだし、別に結婚しなくていいや」という女性はいるんじゃないかな。

——ああ、なんか、今めっちゃ心にずしんときました。人生のパートナーは欲しいけど、絶対に結婚したいかといえば、そうでもないかもしれません、私たち。もう、「合コン行け」とか、「婚活しろ」とか、「妥協するな」とか、いろいろ言われすぎて疲れちゃったんです。ただ、今日あったことを笑いながら話して、夜ごはんを一緒に食べてくれる人がいればいいだけなんだけどな、ホントのとこ……。

赤川:まあ、まあ、まあ。アカヒモなら、いつでもご紹介しますよ(笑)。

前後編でお届けした赤川先生のインタビュー、いかがでしたか? まわりが次々に結婚して焦りますが、ホントのところ、「なんで結婚したいんだっけ?」「どんな相手が欲しいんだっけ?」という根本部分を一度見つめ直してみてもいいかもしれませんね。

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

婚活に疲れた貴女へ    東大・社会学の先生が贈る現実的なアドバイス

関連する記事

編集部オススメ

後悔のない30代を過ごしたい。ありとあらゆる分野のプロフェッショナルに、40歳から自分史上最高の10年を送るために「30代でやっておくべきこと」を聞いていきます。

記事ランキング