「そろそろお金のこと、ちゃんと考えなきゃ」とは思いつつ、実際には何もできていない……。そんな30代女性はきっと多いはず。
「何もできていない」大きな理由の一つに、「何も決まっていないから」があるかもしれません。結婚するかしないか、今の仕事を続けるか辞めるか、子どもを持つか持たないか、どれ一つ決まらないのに、お金の計画なんて立てられない! そんな揺れる30代女性でも明日から実践できる「お金の基本」を、5回シリーズでファイナンシャル・プランナーの中村芳子(なかむら・よしこ)さんに聞きました。
第1回は、人生、どう転んでも身につけておきたい「お金の4原則」です。シングルでも、子ナシでも、子アリでも、女性みんなに覚えておいてもらいたい基本とは?
結婚してもしなくても生活費は自分で稼ぎ続ける
――「お金の4原則」とは何ですか?
中村芳子さん(以下、中村):「稼ぐ」「貯める」「守る」「使う」の4つですね。
「稼ぐ」とは自分の生活費を自分で稼ぐということ。一昔前まで「女性の仕事は結婚前までの腰掛けだ」なんて風潮がありましたが、その影響が現在にも続いていると感じますね。というのも、女性自身がどことなく「結婚・出産したら、いつまで働き続けるかわからない」「今の収入は低いけど、ずっとこの仕事を続けるかわからないから、まあ、いいか」と考えてしまっているふしはあります。
そうではなく、最低でも公的年金がもらえる65歳、もしくは70歳くらいまではがんばって働き続けようと意識を切り替えてほしいんです。
――「70歳まで働き続けるんだ」と思ったら、5年後、10年後どういう形で仕事をしているのか、そのためにどんなスキルが必要になるかなど、具体的にイメージしやすくなりますね。
中村:そうでしょ。会社員でいえば定年の65歳まで、できればプラス5年、10年は働くキャリアプランを持っておくと、今の仕事を続けるか転職するかに悩んだ時も、決断しやすくなるはず。
40年ずっと「手取り年収の15%」を貯め続ける
――「貯める」というのは貯金のことですよね?
中村:そうね。これはダイエットと同じで、無理しても続きません。そんな時は目標がはっきりしていると貯めやすいですよ。基本は「手取りの15%」を貯蓄に回すこと。これを働いている間ずっと続けるんです。
たとえば、年収300万円の人が「手取りの15%」を貯めようとしたら、毎月約4万円弱で65歳までの40年間で1800万円貯金できます。さらに退職金があったり、株や投資信託で資金運用ができれば、貯蓄額も増えます。働いている間は無理なくコツコツ貯め続けること。それによって、今やりたいこともできるし、将来の生活も安泰になるんです。
必要なのは、死んだ時の保険ではなく「生きるための保険」
――次の「守る」とは?
中村:これは保険です。
――病気になった時のために医療保険は入っておく必要があるなと、最近すごく思います。
中村:そうなんですよ。30代の頃はまだ健康な人が多いですが、40代になると乳がんなど大きな病気にかかる人が増えてきます。日本はアメリカなどに比べて医療費が安いんですけど、それでも運悪く異常に治療費が高い病気にかかってしまうこともあります。死亡保障よりも「病気に備える」という意味で入院1日5000円、月に払う保険料2000〜3000円ぐらいはかけておいた方がいいですよ。
「120歳まで生きてもハッピー、明日死んでも悔いがない」
――4つ目の「使う」とはどういうことですか?
中村:「お金」と「時間」と「エネルギー」のことです。今後、50代、60代、70代になっても働き続けられる健康な体と心を維持するために、今、この3つをどういうふうに使えばいいのかということです。
仕事をがんばる女性って、家に帰ってからもがんばっちゃうじゃないですか。平日は仕事をがんばり、土日は家事をがんばり。結婚している方だったら、なおさらですよね。
――がんばらざるをえない、という感じがあります。
中村:そうでしょ。それだと70代までに体が悲鳴を上げるかもしれませんよ。私も、仕事と家事の両立で大変な時期があったけど、食洗器を取り入れたり、金曜日に家事代行を頼んで部屋を掃除してもらい、土日はきれいな部屋でゆっくり休むようにしてましたよ。それに、家事代行を頼んだら、夫と私のどっちが食器を洗うか、掃除をするかで不毛な争いをしなくていいしね(笑)。
――そういうお金の使い方もあるんですね!
中村:そうそう。お金は稼ぎ続ける。そして貯金もし続ける。一番大事なことは、「120歳まで生きてもオッケー、明日死んでも悔いがない」というお金の配分、使い方をすること。そこさえ気をつければ、ハッピーに生きられると思います。
結婚するかしないか、子どもを持つか持たないか、この会社で働き続けるか続けないか。まだまだ何かと揺らぎが多く、定まらない女性の30代。どの道に決めても、「稼ぐ、貯める、守る、使う」の4原則さえ、しっかり守っていればハッピーに生きられると聞くと、少し安心できますね。
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