『駄目な世代』インタビュー第1回

「自分達だけ楽してすみません」平成の終わりに“駄目な世代”の私が思うこと【酒井順子】

「自分達だけ楽してすみません」平成の終わりに“駄目な世代”の私が思うこと【酒井順子】

「丙午(ひのえうま)」生まれ*で受験戦争はらくらく通過し、バブル景気で就職活動は売り手市場、50代になっても後輩気分が抜けない——。

そんな“バブル世代”の功罪について自虐とユーモアを交えながら考察した酒井順子(さかい・じゅんこ)さんの新刊『駄目な世代』(KADOKAWA)がこのほど発売されました。

1966年(昭和41年)生まれで、平成の始まりとともに社会人としての一歩を踏み出したという酒井さん。あと2ヶ月ほどで終わりを告げる平成を振り返りつつお話を伺いました。

*干支の一つで60年に1回まわってくる。丙午の年に生まれた女性は気性が激しく、夫の命を縮めるという迷信があり、1966年に出生率の低下が見られた。

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自分達だけ楽してすみません

——「やっぱりバブル世代っていいなあ」と思いながら、おもしろおかしく拝読しました。酒井さんがご自身の世代を振り返りながら『駄目な世代』を書いたきっかけを教えてください。

酒井:まえがきにも書いたのですが、自分の世代について、ずっと「ダメなのでは?」と思っていたんです。いつかはそんな我々でも花開くときがくるのではないかなって思っていたら、早や50代に。このまま終わりそうな気がしてきて……。

「なんでダメなのかしら?」というところを、考えてみました。その背景にあるものや未来は? ということで。

——私は昭和の終わりに生まれたのですが、「バブル」はテレビを通してしか知らないので、日本がイケイケだったころってどんな感じだったのかな? 本当にトレンディドラマみたいな生活をしていたの? と、とても興味があります。

酒井:うーん、楽しいのは楽しかったのですが、「これがずっと続くのは辛い」とも思っていました。さらに年をとるごとに、「楽しいだけではいけないのではないか?」みたいなことも、思えてくるわけです。「やっぱり辛い体験のほうが、実りを呼ぶのではないか?」と。

——それは下の世代を見て思うのですか?

酒井:そうですね。下の世代に対しては「自分達だけ楽をしてすみません」という申し訳なさと、「あなた達は何事も堅実に行動していてすごい」という尊敬とを覚えています。逆に質問なのですが、我々世代のことはどう思っていましたか?

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——そうですね、私が働き始めたのは10年ほど前なのですが、仕事を教えてくれたのはちょうど酒井さんの世代の上司でした。酒井さんの本にもあった「根性にうっとり」というか、根性論で叱られたり指導されたりというのはありましたね。でも、今はそういう時代ではないので、後輩には根性論で指導しないように気をつけています。学生時代の友だちと「なんか私たちの世代って昭和と平成の間で損してない?」ってよく話しています(笑)。

酒井:最近、スポーツ界でもセクハラやパワハラ事件など様々な問題が明るみに出ていますよね。「こういうことが、まだ続いていたんだ」と思ったのですが、我々の世代は、どちらかというとハラスメントの担い手側。根性とかガッツが素晴らしい、という方針で大学くらいまで育ったので。

大学時代は体育会にはいっていたのでいろいろと理不尽な目にもあいましたが、それに対してどうしても「ノー」と言えなかったものです。やっと「ノー」と言える世の中になってきたんだなとは思いますね。

——そうかもしれないですね。でも、私は1982年生まれで、私たちの世代も昭和の価値観で育ってきているので、「ノー」とは言いにくいというか、こっそりチクるくらいしかできなかったですね。人によるとは思うのですが……。それでも新卒のときと比べて世の中の空気が変わってきたなとは思います。

酒井:今は、スポーツの世界でも、上から言われたことをそのままやるというより、自分で考えることが大切になってきていますよね。仕事の世界でも「自分で考える」風潮が強くなってきてはいると思うのでいいことだなと思います。私たちは、言われたことをやる訓練はできているけれど、考える訓練はしてこなかった気が……。

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「平成」を振り返って思うこと

——ハラスメントと言えば、新語・流行語大賞に平成元年は「セクシャル・ハラスメント」(新語部門・金賞)が、平成最後の昨年は「#MeToo」(トップテン)が選ばれました。

酒井:30年かかってやっと言えるようになってきたってことですよね。

——酒井さんが就職された年が平成元年ですよね。働く女性として、この30年を振り返って「やっとここまできたか」のような感慨はありますか?

酒井:感慨……というよりは、ある意味、保守化している部分もあるように思います。

30年前と比べて、女性がすごく働きやすくなって、管理職も増えているかというと、そうでもない。女性政治家の比率も、他国と比べれば低いまま。それはやっぱり、結婚したり子どもを産んだりということと、仕事の両立がすごく難しいからだと思うんですよね。そんなに苦労するんだったら、もう専業主婦になりたいという人も多い。

30年で、ごくわずかしか進歩していないように思います。ただ、この30年をかけて整えてきた準備が、ようやく花開こうとしているような気はします。平成のうちに変化は目立たなくても、次の時代に大きく変わるのではないでしょうか。

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——そうあってほしいですね。結局、家事や育児と仕事との両立と言われるのは、ほぼ女性に向けての言葉であるし、いつまでたっても男性は不在なんだなと思います。

酒井:男性も育児や家事をするようになったと言われているけれど、今は先進的な人たちのみがしていること。けれどそんな事情も、次の時代になったらようやく変わってきそうですね。

(聞き手:ウートピ編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)

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