フェミニズムは「ゴムが伸びたパンツ」くらいがちょうどいい

フェミニズムは「ゴムが伸びたパンツ」くらいがちょうどいい

2017年の放送開始から記念すべき第100回の放送を迎えるSHELLYさんMCのAbemaTV「Wの悲喜劇〜日本一過激なオンナのニュース〜」のテーマは、「2021年秋 緊急開催!オンナたちのガッカリ大会 日本はどうしてこんなに世界に遅れてしまったの?!SP」。

コロナ禍の中でもなんとか無事に開催することができた東京オリンピックですが、開催までには、セクハラまがいの演出案や、大会組織員会での性差別発言など、数々のジェンダー問題が噴出しました。

今回番組にゲスト出演した法学者でフェミニストの谷口真由美(たにぐち・まゆみ)さんに、フェミニズムの今について聞きました。

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「ほっといたりーや!」という問題が多すぎる

——番組の中でも、今回の東京オリンピック絡みのジェンダー問題から始まり、眞子様のご結婚をめぐる騒動、SNSでの誹謗中傷、不倫、選択的夫婦別姓、フェミサイド(女性をターゲットとした殺人事件、傷害事件)などさまざまなトピックが取り上げられました。

谷口真由美さん(以下、谷口):本当に盛りだくさんでしたね。私自身は普段からニュース番組のコメンテーターとして「エロからテロまで」を守備範囲としているので、いつも通りですが(笑)。

ジェンダーの観点からさまざまな問題がメディアで取り上げられますが、一番感じているのは、お節介するべきところと、しなくていいところが逆転してしまっているのではないか、という点ですね。眞子さんのご結婚も、女性が子どもを産むか産まないかも、著名人の不倫も、本来なら他人が介入すべき問題ではないですよね。むしろ「そんなん、本人たちの問題なんやから、ほっといたりーや!」と思います。

それに対して、妊婦さんがコロナ禍で病院で適切な治療を受けられずに亡くなったとか、虐待で弱い立場にある人が亡くなったとか、そういう問題には積極的にお節介していかなくてはいけませんよね。なのに、本来介入すべき問題がほっとかれてしまって、どうでもいいことばかりにメディアが口を出す。そういう逆転現象が特に気になります。

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課題解決型のフェミニズムをやっていきたい

——フェミニズムは自由に生きていくための一つの武器だと思いますが、武器だけ渡されてもいつどこでどのように使えばいいかわからないという問題もあります。

谷口:そうですね。フェミニズムという武器や、いろいろな権利は与えられたけれど、それを幸せに生きていくためにどう使えばいいかわからないという状況にある女性は、まだまだ多いですよね。例えれば、車と運転免許はもらったんだけど、道路交通法を知らないみたいな。

——そうですね。自分がどういう社会に生きていて、どういうルールに従わないといけないかを知らないまま世の中に放り出されている女性は多いと思います。谷口さんは法学からアプローチするフェミニストですが、法学の観点から問題を捉えるとどうなりますか?

谷口:学問としてのフェミニズムには様々なアプローチがありますが、大きく分けて「課題発見型」と「課題解決型」があるのかな、と感じています。例えば、社会学をベースにしたフェミニズムは、社会の中にどんな問題があるのかを見出して言語化していくスタイルで、私のような法学者はすでに明確となった問題を、社会制度の中でどのように解決していくかを考えます。

既存の法律の枠内で解決できるのか。新しい法律を制定しなくてはいけないのか。解釈を変えればなんとかなるのか。そういう観点から問題解決の落とし所を探っていきます。

——面白いですね。法学的アプローチは「解決すること」に比重があるんですね。

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フェミニズムは「ゴムが伸びたパンツ」くらいがちょうどいい

——フェミニズムが、私たちが生きていく上で本当に役に立つものになるためにはどうすればいいでしょう?

谷口:もっとゆるゆるになればいいと思います(笑)。

私が二十歳そこそこだった頃、とあるフェミニズムの会合に顔を出した際、化粧をしていたことを責められたことがあったんです。「化粧は男に媚びる行為なのに、それをしているとは何事か?」というわけですね。正直なところ、それを言われた時は「フェミニズムこわっ」と感じました。

当時もそんな人ばかりではなかったのですが、そんなイメージがフェミニスト像として作られてきたこともあったので、「まんまやん」って思ってしまったんです。そのままフェミニズムから離れそうになりましたが、もっともっと自由なフェミニズムとも、フェミニストともたくさん出会いました。

だからこそ、下の世代の女の子には窮屈でないフェミニズムを伝えていきたいなと思っています。自由を獲得したい、解放されたいからフェミニズムやっているわけですから。ブラジャーは苦しいから、スポーツブラやカップ付きキャミソールになっていったのと同じで、もっと緩められたらいいのに、と。さらにいえば、ブラジャーをしたくない人は、しなくてもええんちゃうん、と。例えれば、ゴムが伸びたパンツくらいの緩さ。パンツも新しいのよりはき古してゆるゆるになったくらいがちょうどいいでしょう(笑)。

——名言ですね(笑)。

谷口:勉強した人が増えてくると、どうしても「こうあるべき」という「べき論」が増えてしまうんですね。でも、実際にはそういう考え方もあるけど、こういう考え方もあるよね、でいいと思うんです。フェミニストは一枚岩である必要はありません。一枚岩じゃないとダメ、フェミニストを名乗る限りこうあらないとダメというのを、押し付けてしまいそうになるんですね。仲間だと思っているから。でも、目の前の問題を解決するためなら、差異を乗り越えて共闘するという大同小異ができないと、いつまでも「オッサン」に勝てないんです。

保守のフェミ、中道フェミ、右翼フェミ、左翼フェミ、過激フェミ、いろんなフェミニストがいていいんです。それを同じ色じゃないとダメとなったらしんどいですよね。幅があっていい。そもそもフェミニズムは未完の理論です。それが社会の中でどういうふうに発展していくかを見守り続ける、鷹揚で、大局的なフェミニズムがいいんじゃないと最近強く思います。

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——「ゆるフェミ」のすすめ以外にも、できることはありますか?

谷口:あとは、若い女性のリーダーをどんどん育てていきたいですね。私、実はもう「40歳以下の女性リーダーの育成」にしか興味がないんです。30歳で産んだ娘が今年で16歳で高校から女子校に通っているのですが、それまでとても生きづらかったと最近教えてくれました。学校を変えようとして生徒会に立候補しても、まわりから「目立ちたいんでしょう」と言われて浮いてしまったり。

そういう積極的な若い子を見ると、私たちフェミニストは「希望やなー!」と絶賛してしまいますが、実際には周囲から理解を得られず、つらい思いをしているのかもしれません。同調圧力が強い日本社会の中で、リーダーになろうとする女の子たちを一人にしない。味方になって、サバイブするための術や知識を与えてエンパワーし、しなやかで、たくましいリーダーを増やしていきたいんです。たとえ周囲に理解者がいなくても、世の中に誰か一人でも理解者がいれば、人間、生きていけますから。

170年前、幕末に人材を輩出した私塾、松下村塾には男性しかいませんでした。今、私が作りたいのは女性のための松下村塾です。今すぐ物事が変わらなくても、小さく種を撒き続ければ、170年後には変わっているかもしれない。いや、できればもうちょっと早めに変わって欲しいですけれど。そう信じて今年からサロンにも力を入れています。

「谷口真由美塾」https://www.facebook.com/groups/438666017243440
※入塾審査があります。

■番組情報
男子は見なくて結構!男子禁制・日本一過激なオンナのニュース番組がこの「Wの悲喜劇」。さまざまな体験をしたオンナたちを都内某所の「とある部屋」に呼び、MC・SHELLYとさまざまなゲストたちが毎回毎回「その時どうしたのか?オンナたちのリアルな行動とその本音」を徹底的に聴きだします。

Wの悲喜劇「2021年秋 緊急開催!オンナたちのガッカリ大会 日本はどうしてこんなに世界に遅れてしまったの?!SP」は2021年11月6日(土)午後10時から放送。

(ウートピ編集部)

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