マンガ家の西原理恵子(さいばら・りえこ)さんが4月15日、「セシオン杉並」(東京都杉並区)で開催された「区民健康フォーラム2018」に登壇し、「自立した女子の生き方、育て方」をテーマに講演しました。
西原さんが去年6月に発売したエッセイ『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』(角川書店)は累計27万部を突破。発売から約1年たった今も書店に平積みされ、売れ続けています。
講演は同書の制作に携わったフリーライターの瀧晴巳(たき・はるみ)さんが聞き手となり、西原さんとの対談形式で行われました。
今回は、講演の模様と西原さんのインタビューを全5回にわけてお届けします。
「専業主婦の幸せ」はもろい
瀧晴巳さん(以下、瀧):西原さんは娘さんに子どもの頃から「社長の奥さんじゃなくて社長を目指そうよ」って言ってきたとか。
西原理恵子さん(以下、西原):専業主婦だと家もキレイだしおやつもあるし躾も行き届いていていいんですよ。
でもね、専業主婦って、夫が浮気しない、暴力を振るわない、 病気もなくて会社も潰れない。そういう条件がすべてそろった上での“お仕事”なんですよ。「専業主婦の幸せ」ってもろいんです。
人って病気になって治ってもなかなか元に戻らない。現役に戻るのが大変なんですね。そういうことを考えたときに何があっても仕事は続けてください。
人ってお金がないと獣になる。お金がなくて憎しみ合うっていう一番の地獄ですね。
瀧:女の子も若くて威勢がいいうちは、なかなか、うまくいかなくなったときのことまで気づけないから。
西原:結婚相談所だと、若くておっぱいとお尻がキレイな女の子たちってチヤホヤされますよね。でもそこから10年、20年経ったらすごく惨めな思いをします。どうしてそんなことでしか自分を測れないのかってね。
若いうちに「やだ、困っちゃった」って言えば誰かが助けてくれますよね。でも40歳を過ぎて「やだ、困っちゃった」なんて言ってもツバ吐かれますからね。
そうなるまでにやっておかないといけないことってたくさんあるんですよ。仕事のキャリアとか人間としての優しさを磨くとか。
若い男の子はほら、ハタチ過ぎて外出たらボロッかすにやられてそれなりに修行が積めるんだけれど、女の子のスタートって誘惑が多い。私は、地方でキレイな女の子たちがあっという間に中出しされていなくなっちゃうのをいっぱい見てたのね。
キレイな子ほどあっという間にやられちゃう。その地区一番のイケてる不良に。でもその地区一番のイケてる不良ってその地区一番の無職のバカってことだからね。
で、18歳で離婚してまた20歳くらいでダメな男に引っかかってって、人生がガタガタになっていく。
お金がないと男も捨てられない
瀧:西原さんだって地元でそんな女の子を散々見てきて「私はそんな轍(てつ)は踏まない」って上京したはずなのに、半年で無職の男の人と暮らしてたんでしょ?
西原:そうなんです。散々苦労して、浪人してやっと武蔵美に受かったのに、無職の男と同棲しちゃうっていう初っ端からやらかすんです。高知にいたから「無職」ってそんなに抵抗なかった(笑)。
私がもろかったのはそういうところで、なんでもいいから家に誰かにいてほしかった。一人でいることがすごく寂しくて、新しいバッグがないと出かけられないとか、新しい靴がないと外へ行けないっていう女の人、いるでしょ? 私です(笑)。で、新しい靴(男)が見つかるまで古い靴(男)を履き続ける……私です(笑)。
無職の男と同棲して、それでも自分で一生懸命売り込みをして大学3年生のときに月収30万になった。それで新しい部屋に移ろうってなったときにやっと気づいたんです。でっかいゴミ(男)がいたって。
だから娘に言うんです。「“ダンシャリ”の“ダン”は男のダン。お金がないと男も捨てられない」って。それで大学3年の時にやっと“男捨離”できたんです。
(取材・文:ウートピ編集部・堀池沙知子)