季節の変わり目で肌の調子がイマイチ、暖かくなってきたのは嬉しいけれど化粧崩れが気になってきた、そろそろ紫外線も気になる……と肌にまつわる悩みは尽きないもの。
「20代の頃と比べて皮脂が減ってきたな」など、自分の肌の変化を感じている人も少なくないのではないでしょうか?そこで、花王スキンケア研究所で上席主任研究員を務める次田哲也さんに「肌との付き合い方」について3回にわたってお話を聞きます。2回目のテーマは、「スキンケアの方法」です。
【1回目】花粉と“ゆらぎ肌”の関係は? 気をつけたい春の肌ストレス
肌につく「汚れ」の種類
——スキンケアに関する情報は世の中にあふれていると思うんですが、今回は改めてスキンケアの基本について伺えればと思いました。
次田哲也さん(以下、次田):我々は「洗う」「補う」「守る」の三つがスキンケアとして大事だと考えているんです。
では、「洗う」って何だろう? ということを考えていくと、洗うのは「肌の汚れ」なんですが、「汚れ」には体から出る汚れと外からつく汚れがあるんです。
体から出る汚れは皮脂、汗、垢なんですが皮脂は水では落とせません。なので洗顔料できちんと落としてあげないといけないんですね。
外からつく汚れは、今の季節で言ったら花粉、黄砂ですね。そのほかホコリやスモッグ、化粧品です。
化粧品は落とさないといけないってわかるけれど、なぜ皮脂も落とさないといけないの? と思うかもしれませんが、皮脂をそのままの状態にしておくと遊離脂肪酸に変性してしまうんです。肌にとって悪いものなのできちんと落とさないといけないんです。
朝起きたときの「潤い」の正体は…
——「遊離脂肪酸」……初めて聞きました。
次田:ところで、遊離脂肪酸はいつ作られるかご存知ですか?
——えっ、いつだろう……。
次田:実は寝ている間なんです。だから、朝の洗顔は大事なんです。
——そういうことだったんですね。夜にクレンジングも洗顔もしたんだからキレイというわけではないんですね。
次田:朝起きて「ちょっと潤っている?」と思うかもしれませんが、それって脂が変性したものなのできちんと落とさないといけないんです。
——洗顔料でってことですよね?
次田:はい。なので洗っても潤いをキープできる洗顔料を選ぶのが大事かなと思います。
——そうか……。「潤ってるー」って喜んでる場合じゃなかったんですね。「お湯だけで洗顔するといい」というのもよく聞きますが、今のお話だとダメってことですよね。
次田:脂はアブラで落とすのが基本なので、そういう意味では水だけで洗うというのはやめたほうがよいです。洗顔料できちんと洗って化粧水をつけましょう。
——はい。
スキンケアのキモは「血管力」
次田:洗顔のあとは「補う」ということなんですが、花王では表面的なスキンケアだけではなく、内側からもケアをしていくという部分を大事にしているんです。そこで大切になってくるのが「毛細血管」です。
——あ、前回も出ましたね。
次田:そうです、そうです。前回も説明した通り、毛細血管は皮膚に栄養、酸素など必要なものを届け、老廃物、二酸化炭素など不要なものを回収する働きをしているんですが、毛細血管には常に血液が流れているわけではなく、必要に応じて血液が流れるように調節されているんです。
で、この血流を調節する力(血管力)がきちんと働いている人は肌の状態がすごくいいんです。逆に血管力が低い人は肌荒れしやすい。
——血管力を高めるためにはどんなことが必要ですか?
次田:炭酸入りのスキンケア剤を使ったり、ぬるめのお湯に浸かってマッサージをしたりするのがいいと思います。毛細血管を刺激することになって血管の反応が上がるんです。
また、世界2大ポリフェノールのひとつで、コーヒー生豆に含まれる「クロロゲン酸」を摂取するのもいいですね。飲料もありますし、根菜類にも含まれているので積極的に摂るといいと思います。
クロロゲン酸は寝る前に摂取すると、自律神経系に作用して血管が拡張するんです。交感神経から副交感神経優位することで、血管がパッと緩むので血流も流れて毛細血管まで届くようになる。リラックスもするので、眠りの質も上がって肌も調子がよくなるんです。
——表面的アプローチだけではなく、内部からもアプローチするというのが大事なんですね。
次田:そうですね。スキンケアの話に戻りますが、きちんと汚れを落としたら「保湿」も忘れずにしてください。皮膚の乾燥で一番まずいのが雑菌なんです。乾燥した部分から雑菌が入りやすくなり、ニキビのもとになったりもするので、乳液や美容液、クリームでの保湿は欠かさずしてほしいですね。
オールインワン化粧品は使ってもいい?
——そういえば、1本でスキンケアができるオールインワン化粧品も忙しい女性に人気ですが、どうなんでしょうか?
次田:日々技術が発達しているので、否定はしません。
でも、「なぜ、お医者さんは総合漢方薬じゃなくて、それぞれの症状に合った薬を処方するのか?」と考えていただければわかりやすいかなと思うんですが、やはり一つ一つの化粧品の働きのパフォーマンスを高めようと思ったら「すべて一度にやってしまおう」というのはなかなか難しいところはあるのかなと思いますね。
——わかりました。ありがとうございます。次回は、スキンケアの「守る」という部分、紫外線対策について教えてください。
※次回は4月3日(火)更新です。
(取材・文:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)