「部下ができたけれど、なかなか心を開いてくれない」
「正しいことを言っているはずなのに相手とぶつかってしまう」
「世代も性別もちがう“おじさん”と話すのが苦手」
といった働く女性なら誰でも一度はぶつかったことがあるであろうコミュニケーションの悩み。
表面上は社会人として最低限のコミュニケーションはできていても、実は伝え方や会話で悩んでいるという人も少なくないのではないでしょうか?
そんな働き女子の悩みを解決すべく、このほど初の著書『3秒で心をつかみ10分で信頼させる聞き方・話し方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を上梓した、日本テレビの解説委員・キャスターで、現在は夕方の報道番組『news every.』(月~金曜午後3時50分~)に出演中の小西美穂さん(48)に全5回にわたって話を聞きます。
これまで総理大臣や政治家、エコノミスト、俳優やタレント、スポーツ界の著名人など各界のエキスパートなど、のべ1700人に話を聞いてきたという小西さんがつかんだ会話のコツとは?
第4回目のテーマは「身構えている相手への声のかけ方」です。
【第1回】3秒で心をつかむ「ほんわか」って何ですか?
【第2回】世代も立場も違う“おじさん”との話し方
【第3回】「怖くならない」コミュニケーションのコツ
相手に寄り添う“マイナスの同調”って?
——これまでは自分と立場も世代も違う「おじさん」や、プライベートの会話の技術について伺いました。社内でも後輩や同僚に「どうやって声をかけたらいいかな」と悩むことがあると思うんです。
例えば、仕事で行き詰まっている後輩がいたとして、全員が全員「先輩、困っているんです」と言ってくるわけではない。まわりや上司に助けを求めないで、真面目な人ほど、全部自分でやろうとしていっぱいいっぱいになっちゃっている場合もあると思うんです。
小西美穂(以下、小西):これも聞き方なんですよね。例えば、「元気?」と聞かれるより、「最近ちょっと元気じゃないよね」と聞かれるほうが「そうなんです」と言いやすい。
「○○さんは順調だよね!」と言われるよりも「ちょっと手こずっている? この仕事難しいよね」と言われたほうが「そうなんです、実は……」と話しやすいことってあると思うんです。
——否定形から入るのってあまりよくないのかなあと思っていたんですが……。でも、確かにそうかも。
小西:否定形というよりも、相手の状況に寄り添ってあげる感じでしょうか。気持ちに寄り添う“マイナスの同調”から入ってあげるとものが言いやすいと思うんですよ。
身構えている相手の心をほぐすには…
——「私は間違っていない。なぜなら〜」と自分の正しさばかりを主張してくる人もいると思うんですが……。一応、話をしているからコミュニケーションをしているんですが、相手の話に耳を傾けないという意味で“閉じたコミュニケーション”をしているなって思います。
小西:「私は正しい」と言い張るのは、精一杯自分を守っていることだと思うんです。きっと自信がないのかな。
だから「できる?」と聞くよりも「あれ難しそうだから、まだできないんじゃない? 時間がかかるんじゃない?」というほうに言葉を回転させて言ってあげるとうまくいくかもしれないですね。
——言葉を回転……。
小西:私も番組でゲストをお迎えするときに「この方、緊張していらっしゃるな」と思ったら「緊張しますよね~」とまず言うんですよ。そして「私も本当に緊張するんですよ」と言うと、相手は「キャスターさんでも緊張するんですか?」と驚かれるんです。
——確かに驚きますね。でも、「キャスターも緊張するんだ!」と安心するかも。
小西:そうそう。例えば、「大丈夫ですか?」と聞いてしまうと相手は「大丈夫です」と答えるしかないんですよ。だから「大丈夫じゃないほう」で声を掛けてあげると、ほんわかできるというか、ちょっとリラックスできるんですよね。
だから、身構えちゃっている後輩の子には「私もこれよく失敗したんだよね」と言ってあげるだけでいいというか、そこでクスッと笑ってくれればもう十分なんです。
まずは自分の心をオープンにする
——本にあった「自慢話より、シクジリ話」ですね! でも、私のほうが先輩だから舐められちゃったら嫌だなっていうのもあるんですが……。
小西:そこはあまり身構える必要はないんじゃないかな。
「私も通ってきた道だし、失敗もしたよ」と言ったら「へー、そうなんだ。先輩も同じような失敗したんだ」と思って、がんばろうと思うかもしれない。
そうやってコミュニケーションができるようになったら、叱るときはピシッと「ここは前に言ったことだから、次は失敗しないようにやらなきゃダメだよ」と言えばいい。
——まずは寄り添って信頼関係を築くということですね。いきなり叱ったら、心を閉ざしちゃいますよね。
小西:そう。完璧な人なんだな、私のことなんか全然わかんないんだろうなって思われちゃうかもしれないでしょ? 自虐で笑いをとろうとまでしなくても、プチ失敗談でいいんです。
要は、自分をオープンにすることで身構えていた相手の心のハードルを下げてあげるってことですね。
※次回は3月3日公開です。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)