「きっちり計ることにこだわりすぎない」“伝説の家政婦”タサン志麻さんが「やらない」こと

「きっちり計ることにこだわりすぎない」“伝説の家政婦”タサン志麻さんが「やらない」こと

“予約の取れない伝説の家政婦”として知られるタサン志麻さんの新刊『伝説の家政婦 沸騰ワード10レシピ3』(ワニブックス)が2月17日に発売されました。日本テレビ系で放送中のバラエティ番組「沸騰ワード10」の公式レシピブック第3弾で、志麻さんが芸能人にふるまった料理のレシピが紹介されています。

素材の味を生かしたシンプルなフランスの家庭料理に、芸能人をはじめ多くの人から支持を集めている志麻さん。新刊の発売を記念して、志麻さんにお話を伺いました。前後編。

調味料は「きっちりと計りすぎない」

——志麻さんが料理や家事で「これはやらない」と決めていることはありますか?

タサン志麻(以下、志麻):私の仕事は家政婦なので、いろいろな人の家で料理を作るので料理に関してはこだわりがありません。「何の塩を使っているんですか?」とよく聞かれるのですが、全然こだわっていなくてサラサラした塩(焼き塩)を使うことくらいですね。だから、調味料や食材で「あれがないから買ってこなくちゃ」というのはほとんどないです。逆に「これがなかったらあれで代用しよう」ということはよくあります。

「やらない」と言えば、「計らない」ことです。ずっと料理をやってきたのでなんとなく感覚でわかるんです。でも、料理を生業にしていない人たちも同じだと思います。

例えば、毎回きっちり大さじや小さじで計っていると、計ることに意識がいってしまって、いつまでたっても感覚的に「これは50㏄の牛乳」というのがなかなか覚えられないんですよね。だから、ある程度最初は計っても、慣れてきたらキッチンにあるグラスやスプーンなど、違うもので計ってみて感覚で覚えていくのもおすすめです。料理って、15gが12gになっても、50㏄が60㏄になってもそこまで変わらないから。きっちり計ることに神経を使ってしまうとすごく肩が凝っちゃうと思うので、いったんそこから離れてみるのもよいかもしれません。

本やテレビでレシピを伝えるときは分量を伝えないといけないので、きっちりした作りになってしまうのですが、結局、計ったとしても味噌や醤油などメーカーによって味が違うのでちゃんと計ることにそこまで意味がないのかなとは思います。

——例えば今、家にあるこのグラスでは50ccの牛乳はどのくらいか? というのを知っておくといいかもしれないですね。

志麻:いいと思います。私がよく使うのがトマト缶で、トマト缶はだいたい400ccくらいなので、「トマト缶1に対して200㏄の水を入れる」というレシピだったら、缶の半分だけ水を入れて計っちゃっていますね。

——缶もきれいになるし、洗い物も減らせますね。

志麻:そうなんですよ。意外と無駄な洗い物が多いんですよね。例えば、日本の料理番組は調味料や材料をきっちり計っているけれど、フランスの料理番組だともっとざっくりしています。その辺に置いてあるカフェオレボウルで「カップ1杯」と言っていたり(笑)。そんな気持ちで料理を作れたら楽しいだろうなと思います。

「家族で食べる時間」を優先 時間の使い方は?

——メディアにも引っ張りだこで毎日お忙しい生活を送っていると思うのですが、時間のやりくりはどうされているのでしょうか? 例えば優先順位をつけているのか、やらないことを決めているのか……。

志麻:仕事以外の優先順位の一番が、家族で食べる時間なんです。家族は、1歳、3歳、5歳の子供たちと夫のロマンで、ロマンが29歳、私が43歳です。そういう意味で、性別も性格も年齢も国籍も違う家族が、同じことを一緒に楽しめる時間ってあまりないんです。

例えば、5歳と3歳の子供がチャンバラごっこをしていて、時々一緒にやることはあるけれど、彼らと同じように「楽しい」と思えるかと言ったらそうではない。子供が寝たあと、私は韓国ドラマにハマっていて、ロマンはゲームに夢中ということもしょっちゅうです。そういう意味で、夫婦だったとしても、同じものを一緒に楽しむというのはなかなか難しい。

そんな中で、食べることはどんな人も一緒に楽しめる唯一のことだと思うので、食べる時間を一番大切にしたいと思っています。その時間が取れないのであれば、料理を作る時間を省いたり、買ってきたり、掃除もきっちりやらなかったりしてもいいのかなと。まずは家族で一緒に食べる時間を確保する。それが最優先です。

同じ家庭でも状況によって役割分担は変わる

——家事の役割分担はどうされていますか?

志麻:保育園の送り迎えや行事はロマンが行っています。うちは夫婦の国籍が違うから、保育園の子供の送り迎えに私が行かなくても「お母さんはどうしたんですか?」とは言われないし、それが普通と思われている感じです。

家事や子育ての役割分担も家族が決めればいいことだと思うのですが、時期によっても変わるんですよね。特にうちは昔はロマンは飲食店で働いていたので、夜出勤して朝まで仕事というリズムだったんです。その当時は、料理も子育ても掃除も私がやっていたのですが、ロマンが「子供と接する時間が全然ないから嫌だ」と言い出して、コンビニで働いたり宅配代行サービスの配達員をやったりしていたんです。でも、コロナ禍で仕事がなくなってしまった。今は私と一緒に仕事をしています。

——それぞれの家の事情やコロナ禍のような外的要因によっても生活スタイルは変わるわけですもんね。

志麻:同じ家庭でも時代によって変わっていくんですよね。それで回っていれば別にいいのかなと。例えば、どちらかがすごくきれい好きでどちらかがすごくだらしないとかだったら大変かもしれないですけれど……。そう言えば、うちもそうですね。ロマンが掃除をすると基本ぐちゃぐちゃなんです。洗濯物も畳むけれど、畳み方もめちゃくちゃだし、私の洗濯物を自分のところにしまうのでよくケンカになるんですけれど(笑)。でも、それはロマンを嫌いになる1番の理由かと言ったらそうではない。「何があっても志麻の味方だよ」と言ってくれるところがロマンのすごく好きなところなので、靴下がなくなっても小さいことかなと思えるようになってきました。ケンカになりそうなときはそういうことを思い浮かべていますね(笑)。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)

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