2021年3月に開催されて大きな反響を呼んだ、伊勢丹新宿店マ・ランジェリーと森田敦子さんによるフェムテックイベント「センシュアル・ライフ」。この連載でもレポート(https://wotopi.jp/archives/116285)したように、その反響を受けて同年7月には第2弾が実現。そして、3月1日まで第3弾が開催されています。
今回のテーマは「“わたし”を一番に愛すること」。わたしの気持ちを高めて自愛に導いてくれるランジェリーや、わたし自身を知りいたわることをサポートするフェムケアグッズが並びます。
その会場で、今回のイベントに込めた思いを、キュレーターである森田敦子(もりた・あつこ)さんにお聞きしました。
テーマは「自愛」、自分が満たされていなければ人に与えられない
——なぜ、「自愛」をテーマにされたのでしょうか?
森田敦子さん(以下、森田):これは、私が植物療法を学ぶスクールで伝えていることなんです。パリ13大学で性科学を学んだ際、まず自分を愛することが大切だと教わりました。一方、日本では調和を重んじるがゆえ、自分の意見を言えずにいたり、人の目を気にし過ぎたり。男女のパートナーシップも同様で、家庭では自分のことより子供、家族を優先して、気付けば自分のことは置いてけぼりに。その結果、何が幸せかわからない、何が好きかわからなくなっている方が多いと感じます。人に合わせるというのは、きれいに聞こえるけれど、わき上がった思いに蓋(ふた)をして相手を優先してしまっては、自分の中が空っぽになってしまいます。自分が空っぽになってしまうと、相手、周りの人にいいことができるわけがないんですよね。ましてや、自分が健康でなければ人をケアすることもできませんから、自分の心とからだをセルフケアすることが重要だと、スクールでは教えます。
「フェムテック」と言いますが、本当のテクノロジーは女性のからだの中に備わっています。そのホメオスタシス(恒常性)のためにもセルフケアすることからスタートしてほしいと思い、「自愛」をテーマにしました。
12年間の介護施設での臨床をもとに、ケア製品を発売
——今回は、初めてトリートメントオイルや入浴剤などの介護ケア製品が並びますが、その理由をお聞かせください。
森田: 介護ケア製品は、ずっとやりたかったことなんです。私は13年前から広島にある医療・看護・介護施設「メリィハウスグループ」で、植物療法によるケアを行ってきました。そこでは、痛み、浮腫、褥瘡(じょくそう)、皮膚の炎症などの手当て、陰部の洗浄や汚物による臭いなどにも対処しています。そこでの臨床をもとに処方したトリートメントオイルや入浴剤などを施設内で使用していたのですが、「家庭でも使いたい」との声が多くなり、それならと製品化したのが、今回が店頭初展開となる「Mesoins(メソワン)」です。介護ケアは、お世話される人、する人、それを近くで見ている子供たち、と順番に必要となることなんです。だからフェムケアの延長にあると思っています。「フェムテック、フェムケア」は、きらびやかに若い人たちにだけ「デリケートゾーンのケアをしましょう」「キラキラしましょう」と言っているわけではありません。いくつになっても、心とからだに自愛を持ってケアして欲しい、そこにこの商品がつながるのではと思っています。

初の店舗展開となる介護ケアプロダクツ「Mesoins(メソワン)」。ナチュラルな原材料にこだわり、なめらかなテクスチャーのトリートメントオイル(4,950円〜)や優しい香りの入浴剤(6,380円)、口内環境を整えるオーラルジェル(2,750円)・スプレー(2,750円)、アロマの消臭スプレー(4,400円)などを展開。
本当のイノベーションはこれから
——「自愛」のために、ランジェリーが果たす役割は何だと思われますか?
森田: ランジェリーは、女性の一番大切な部分を包むもの。心地良い肌触りに包まれると抱きしめられたような安心感がありますし、美しいランジェリーを身に着けたからだは裸よりきれいで、ワクワクして気持ちを上げてくれます。ランジェリーにはそれぞれの役割があり、それはまさにエネルギーであり自愛ですよね。
——今後、さらに伝えていきたいこと、新たにチャレンジしたいことはありますか?
森田: 全ての女性にフェムテック・フェムケアを根付かせるための本当のイノベーションはこれから。私は去年がそのイノベーション元年だと思っています。それにイノベーションは、女性だけが盛り上がっているのではなく男性の力も必要。企業の中で働く女性たちに対し、どんなフェムテック・フェムケアが提案できるか、根付かせるか、そして幸せになるために力を注ぎたいです。
2021年の新語、流行語大賞にもノミネートされた「フェムテック」という言葉。最近は「フェムケア」という言葉と共に、かなり浸透してきてはいるものの、それを活用したり意識したりしている人はまだ限られます。その点、幅広い年齢層が訪れる百貨店でのフェムテックイベントはその意識づけにも大きな役割を果たすことでしょう。今後、こういったイベントが地方でも開催され、さらなるムーブメントの広がりになることを期待します。
「センシュアル・ライフ3 produce by WOMB LABO」
会期:2月23日(水)〜3月1日(火)
会場:伊勢丹新宿店 本館 3階 センターパーク/ザ・ステージ #3
特設サイト:
https://www.mistore.jp/shopping/feature/women_f2/femtech2_w.html