『生理ちゃん』作者インタビュー 前編

私たちが『生理ちゃん』に共感してしまうのはなぜ?

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私たちが『生理ちゃん』に共感してしまうのはなぜ?

女性と「生理」は切っても切れない関係です。毎月来られるのもうっとうしいし、来なきゃ来ないで不安になる……。そんな生理を擬人化した漫画「生理ちゃん」(KADOKAWA)。

キモ可愛い(?)風貌をした生理ちゃんが時に厳しく、時に優しく女性たちに寄り添うストーリーに「共感しかない!」「まさかの感動!」という感想が寄せられています。

著者の小山健(こやま・けん)さんに、生理ちゃんが生まれた背景や、女性に話を聞いて驚いたこと、ないがしろにされがちな男性の悩みなどについて、ざっくばらんにお話しいただきました。

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生理ちゃんは「リツイートされたい」という欲から生まれた

——WEBメディア「オモコロ」での連載「ツキイチ!生理ちゃん」のときから読んでいましたが、最初は「え! オモコロで生理のこと描くの?」と驚きました。生理をテーマにしようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

小山健さん(以下、小山):オモコロでは「生理ちゃん」以前にも定期的に漫画を描いていたんですけど、どれも今ひとつパッとしなかったんですよね。ほかのライターさんの記事がすごくリツイートされているのを見て、「自分ももっとウケるものを描きたいなぁ……」と浮かない気持ちを抱えていました。いままでの記事を分析して、「インパクトが勝負だな。よし、生理をテーマにしよう」と思ったのが、「生理ちゃん」を描き始めたきっかけですね。

——小山さんにとって、生理はどんなイメージのものだったんですか?

小山:生理には「そこ言っちゃう?」みたいな面白さがあると、ずっと思っていました。例えば、飲み会のときに「生理」って言うと、周りがザワッとするとか。以前、ブログでも、「生理のおっさん」という漫画を描いたことがあったんです。生理がおっさんの姿をして、玄関を開けて女の人のところに来るっていう話なんですけど……。

——設定は「生理ちゃん」と同じだけど、ビジュアルがおっさんなんですね(笑)。

小山:「この生理のおっさん」をブラッシュアップしたのが、いまの「生理ちゃん」です。あ、カッコ良く言いましたが、要するに使い回しです。

——生理ちゃんの1話目が公開されたあとの反響は、いかがでしたか?

小山:1話目を描いてみたら、ものすごく読まれたんですよね。女性の方から「男に何がわかるんだ」って怒られることも覚悟していたんですけど、怖いくらい肯定的な意見ばかりで……。ただ「ウケるといいなあ」と思って描いたのに、「描いてくれてありがとう」という感想をたくさんいただいたので、申し訳ない気持ちになりました。

生理のつらさは、女性同士でも分かり合えないことがある

–1話目の「主婦と生理ちゃん」で、既婚女性が家の中でぽつんと座って洗濯物をたたんでいるコマがありますよね。妊活がうまくいかないことについて、女性がボヤいた後、セリフも何もないコマが1つ挿入されている。私の知り合いが「このコマ、すごくわかる」って、わざわざ写真を撮って送ってきました。

▲『主婦と生理ちゃん』のワンシーン/(C)小山健/KADOKAWA

▲『主婦と生理ちゃん』のワンシーン/(C)小山健/KADOKAWA

小山:うちも子どもができない期間が長かったので、あのコマはそのときの体験がベースになっています。奥さんも僕も気持ちが沈んでしまって、仲が悪いわけじゃないけどうまくいかない、みたいな微妙な時期があったんです。「しんどいな……」という当時の気持ちを思い出して描きました。

——そういう背景があったんですね。2話目以降も、生理にまつわる女性のさまざまな悩みが出てきますよね。物語を作るにあたり、そういった悩みをどうリサーチしていったのか、すごく気になりました。

小山:2話目以降は、知り合いの女性たちに「生理の話を教えて」と言って、ネタを集めていきました。その中で「お話にできそう」と思ったエピソードを、物語に落とし込んでいった感じですね。

——落とし込み方が抜群だなって思いました。漫画として面白いけれど、共感もできるので。

小山:ありがとうございます。あるひとつのエピソードが特殊なのではなく、女性から聞いた生理にまつわる悩みは、似通っていた部分も多くありました。生理中はお腹や腰が痛いとか、パートナーと分かり合えないとか。女性同士でも案外分かり合えていないという話を聞いて、「意外に広がりのある話になるな」と思って描いたのが4話目の「スーパーヒロインと生理ちゃん」の先輩と後輩の話です。

——私も生理が重いほうで、寝込んだり立ち上がれなくなったりするタイプなんです。つらいときに、生理の軽い先輩から「そんなふうにならないでしょ」と言われて、カチンときたことがありました。

「エロは悪いこと」に感じる不満

——女性の生理だけでなく、6話目の「女子高生と生理ちゃん」の女子高生の話は、同級生の男子の性欲との対比が面白いなと思いました。

小山:僕は男なので、男の意見も描きたいなと思って。あまりにも「女性はこうなんだよ」ということを描き続けると、偏った視点のメッセージ性の強い漫画になってしまうという危惧もありました。

——いわゆる「男の意見」を擬人化した「性欲くん」は、出てくるたびに、わいせつな言葉を発しますよね。男性って、毎日そんなことを考えてるのか……って。「生理ちゃん」を通じて、男性の性欲についても理解が深まった気がします。

小山:男性の性欲って、すごく軽く見られている気がして、僕はけっこう憤りを感じていたんですよ。性欲を飼い馴らすのは本当に大変なんです。でも女性には「そんなもの、何とでもなるでしょ」ってないがしろにされがちで。女性にも性欲はあると思うんですけど、男性専用のお店の数とか、AVの売れ行きとかを見ていても、男女のそれが同じレベルとは思えないんですよね。

「ただ気持ち良くなりたいだけでしょ」って言われると、男はつらいんです。社会全体として「エロは悪いこと」みたいな雰囲気がある気がして。生理と同列にするのはどうなんだという意見もあると思いますが、ないがしろにされがちという点では似ていると僕は思うんです。

(取材・文:東谷好依、撮影、編集:ウートピ編集部 安次富陽子)

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