『ぼくたちの離婚』インタビュー第3回

苦難を乗り越えれば“夫婦の絆”が強くなる? ぼくたちが結婚をこじらせた理由

苦難を乗り越えれば“夫婦の絆”が強くなる? ぼくたちが結婚をこじらせた理由

離婚はできれば避けたいもの、というのは分かる。けれど、人々が離婚せずにいる理由についてはいまいちピンとこないものが多い。「家と家の問題だから」、「友人や親族に顔向けできないから」。——一体誰の人生なんだろう。

もちろん、それぞれに事情があることは重々承知だ。それでも、どうも世間には「離婚=悪」という過剰な“呪い”のようなものがあるように思えてならないのだ。

稲田豊史さんの新刊『ぼくたちの離婚』(KADOKAWA)はあらゆる離婚のエピソードを集めた本である。掲載されているのはすべて“男性側の言い分”。偏った主張であると筆者は前置きしながらも、彼らの妻との出会いから日常、別れに至るまでが臨場感たっぷりに語られる。これがもう、ものすごく面白いのである。面白い、という言葉を使うのが適切なのかは分からないが、面白いとしか言いようがない。

掲載されているだけでも13人。本には書けなかったエピソードを含めると20人以上の離婚話を掘り下げてきた著者の稲田さんに、離婚について語っていただいた。本記事を通して、人はどう離婚と付き合っていくべきなのか、離婚は果たして悪なのか、を考えていきたい。(全3回)

「結婚は家と家の問題」って言うけれど…

——前回、「もっと気軽に離婚できる世の中になってほしい」という話で終わりました。「そんなこと言われても無理!」という人も少なくないと思いますので、もう少し掘り下げていきたいです。

稲田豊史さん(以下、稲田):よく聞く話は、「結婚は家と家が関わっているから、離婚は簡単にいかない」でしょうか。

でも、不本意な結婚生活を続けて苦しんでいることを、ご先祖様は喜びますかね? 家は大事だし、お墓参りにも行きますけど、個人の人生の大事な決断とは話が別。亡くなったおばあちゃんもきっと、孫がつらい様子なんて見たくないですよ(笑)。

それに、そんなに“家”が大事なら、むしろひどいパートナーが自分の親族になって“家”にその人の血が入ることは、喜ばしいことではありませんよね。

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——それはその通りですね!

稲田:だから、「家と家が~」というのは我々の世代で断ち切ったほうがいいと思っています。

もう一つ、「子どもがいるから離婚はできない」というケースもよくありますよね。これについては確かに簡単ではないと思います。ただ、僕が取材した中には、結婚したものの、自分の両親の不仲をずっと見てきたせいで、家族というものに苦手意識を持ち続け、悩んだ末に結局それが自分の離婚の理由になった人がいました。不本意な形で夫婦関係を続けていても、子どもに悪影響を及ぼす可能性はあるわけです。

もちろん、一人の親だけで育てる大変さや、経済的な問題、親が一人の子どもに対する周囲からの目線など、クリアすべき問題はほかにもありますが……。

その不快感が50年続くとしたら、耐えられるか?

稲田:夫婦関係がうまくいかないのに放っておくのって、ケガや病気なのに病院に行かずに放っておくようなものです。熱があるのに家でウンウンうなっているより、ちょっと頑張って病院に行き、薬をもらってきたほうが、結果的に回復は早いじゃないですか。

——ただ、自分が病気である、という判断をどの時点ですればいいのかは難しそうですね。根気よくコミュニケーションを取れば何とかなるかもしれない、と頑張る人も多いでしょうし、実際にそれで改善するケースもあるはずで……。

稲田:そこの判断は難しいです。一つ言えるのは、相手からのモラハラでボロボロになり、ほうほうの体で離婚した人たちは、共通して皆さん優しくて頑張り屋でした。地獄のような日々を過ごしていても、「この困難を乗り越えてこそ強い絆の夫婦になれる」と思ってしまう気質があったんです。

でも限界まで頑張ってしまった結果、結局心身を壊してしまった。だから、そのような自覚がある人は、「ここまで頑張れそうだ」という一歩か二歩手前で判断するくらいが、ちょうどいいのかもしれません。

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——モラハラパートナーの場合、結婚前に「この相手は危険」などと気付けないものなのでしょうか?

稲田:それも皆さん結構言われているんですよ。「なんで事前に分からなかったの?」と。

でも、確かに分からないだろうな、というケースは多いです。交際中に多少の違和感があったとしても、「後から考えてみれば、変だったかも」程度のものでしかありません。「あの時のあの違和感が、実はヒントだったんだ」は結果論でしかない。

そもそも、これから結婚しよう、親密になっていこう、という相手の気質をネガティブに捉えるのは、めちゃくちゃ難しいことです。

——首をかしげるような出来事があっても、良いほうに捉えよう、とバイアスがかかってしまうということでしょうか?

稲田:そうです。また、他人に相談するにしても、主観が混じって正確に伝えられないことは多々あります。相手に何か不信感や違和感があっても、結婚を考えるような交際相手にまさか重大な欠点があるなんて、みんな認めたくないんですよ。

だから、誰かに相談しようとしても「大丈夫だよね、これくらい」といった伝え方になってしまう。相談されたほうも、自分の一言で結婚間近なカップルの関係を解消する後押しはしたくないですから、アドバイスするにしても関係修復する方針を取りがちですし。

——そうなるといよいよ、どうしようもないというか……。防ぎようのない、誰にでも起こり得る話ということですね。

稲田:ただ、一つ分かりやすい方法として、交際相手にちょっとした違和感を抱いたら、「その違和感がこの先50年続くとしたら?」と考えるといいかもしれません。

例えば相手の所作。廊下をドンドン歩く足音、クチャラーなど。あるいは、自分へのちょいちょい傷つくダメ出しや、怒りの沸点の異常な低さなど。その瞬間だけなら「これくらい我慢しよう」と思えても、その不快感×50年を耐えられるかと自分に問うてみる。無理だと思ったら、いくら他人から「そんなつまらないことで?」と言われたとしても、関係を解消したほうがいいと思います。

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そもそも「結婚しない」選択をしたっていい

稲田:こういうことを言うと、「じゃあもう誰とも結婚できないじゃん」となるかもしれないですが、別に結婚しなくてもいいじゃないですか。

結婚したい理由を掘り下げていくと、実は自分自身の欲望ではなくて、「社会がそうだから」という人、結構いるんですよね。そういう意味では、「離婚=後ろめたくてみじめなもの」という価値観も、外から圧をかけて「結婚しなきゃ!」と焦らせる風潮も、どちらもなくなっていくべきです。

——社会にまん延する「こうあるべき」が、すべての物事をややこしくさせていますよね。

稲田:どこまでいっても、結婚している人はどこか「偉い」とか「何かやった感じ」がある。残念なことに、「結婚しているかどうか」「離婚歴があるかどうか」で優劣をつける物の見方が、多くの人々の心の中にうっすらあるんですよね。「そういう差別はよくない」と口では言っていても、完全に差別心がゼロかどうかと問われたら怪しい人は、少なくないでしょう。

結婚も離婚も、単なる生き方の選択肢でしかなく、優劣ではありません。そういう意味では、離婚して、その後自分なりに人生を謳歌(おうか)している人たちのエピソードが本にまとめられて公になることで、「離婚した男が全員寂しくて不幸でダメ男ばかりではない」と伝える役割は果たせたかなと思っています。

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(取材・文/朝井麻由美)

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