『ぼくたちの離婚』インタビュー第2回

「離婚=不幸」じゃない…結婚も仕事も合わなければ次に行こう

「離婚=不幸」じゃない…結婚も仕事も合わなければ次に行こう

離婚はできれば避けたいもの、というのは分かる。けれど、人々が離婚せずにいる理由についてはいまいちピンとこないものが多い。「家と家の問題だから」、「友人や親族に顔向けできないから」。——一体誰の人生なんだろう。

もちろん、それぞれに事情があることは重々承知だ。それでも、どうも世間には「離婚=悪」という過剰な“呪い”のようなものがあるように思えてならないのだ。

稲田豊史さんの新刊『ぼくたちの離婚』(KADOKAWA)はあらゆる離婚のエピソードを集めた本である。掲載されているのはすべて“男性側の言い分”。偏った主張であると筆者は前置きしながらも、彼らの妻との出会いから日常、別れに至るまでが臨場感たっぷりに語られる。これがもう、ものすごく面白いのである。面白い、という言葉を使うのが適切なのかは分からないが、面白いとしか言いようがない。

掲載されているだけでも13人。本には書けなかったエピソードを含めると20人以上の離婚話を掘り下げてきた著者の稲田さんに、離婚について語っていただいた。本記事を通して、人はどう離婚と付き合っていくべきなのか、離婚は果たして悪なのか、を考えていきたい。(全3回)

友人関係が足かせにも…

——前回、新しい離婚の形が昨今急激に増えたとおっしゃっていましたが、そのことによって離婚に対する世間体や周囲からのイメージも変わってきているのでしょうか?

稲田豊史さん(以下、稲田):問答無用で「離婚=失敗者」だった昔に比べると、マシになったと思います。でも、あくまでもマシにはなった程度ではないでしょうか。

また、東京と地方だと感覚は結構違っていて、地方ではまだまだ、離婚はカッコ悪くて褒められたものではない、という扱いなんですよね。後ろ指もさされやすいし、クラス会に出にくいという話も聞きました。行かなきゃ行かないで、「今回あいつ、なんで来てないの?」とLINEのグループでざわざわするような“逃れられない感じ”があったり、ずっと同じ友達グループで一緒にいるがために「友達関係を微妙な空気にしたくない」と枷(かせ)になったり……。妻と共通の友人がいるケースも多いですし。

——友達の人生ではなく、自分の人生なのに……。

稲田:それだけが離婚しない理由のすべてではないけれど、積み重ねなんです。「親に顔向けできない」「再スタートが大変そう」「友達関係が気まずくなる」と、いろいろな理由がひとつひとつ積み上がっていって、ある一定を超えると「離婚は無理!」となる。「離婚は面倒!」と言ってもいい。

都会だと多様なチャンネルの友人をつくることが可能だったり、同じ人たちとばかり濃密な関係を築くことが少なかったりするので、離婚によってある人間関係が気まずくなっても、「別のコミュニティがあるからいいや」と気持ちを切り替えられる。でも地方ではそうもいかず、「友達」という足枷(かせ)がひとつ余分に追加されてしまいます。

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各所に配慮して一斉に“情報解禁”

——なるほど。結婚生活を維持するストレスと、周囲の人間関係を乱すストレスをてんびんにかけて、後者の比重が大きくなる場合があるんですね。

稲田:外野は、「友達関係で離婚できない? そんなことで!?」と思うかもしれませんが、事例を聞くと理解できる部分もあります。

例えば、夫婦が二人とも、いくつかのLINEグループのメンバーだったという男性は、「離婚をグループメンバーに伝えるのが、ものすごいストレスだった」と言っていました。グループのトークで突然「僕たち離婚しました」と書くわけにはいきません。他のメンバーも、どう返していいか分からないですし。

——確かに……。

稲田:何カ月に1回しか会わないような大人の集まりにおいて、そんなシリアスな報告をするのは、はばかられますしね。その男性がどうしたかというと、まず奥さんのほうが、そのLINEグループから退会したそうです。そして、「え、なんで?」とグループがざわつく前に、あまり間を空けずに一人ずつ個別LINEで報告をする。全体グループに投げてしまうと、そのトーク画面の「お目汚し」のようになるから、と。

そういうやり取りを個別で済ませた後、グループに残った夫がしれっと「次いつ飲む?」と投げて、日常に戻したのだそうです。この段取りを決めるために奥さんと二人で緻密な計画を立てているわけですから、それもまた相当ストレスだったようで。もうできれば話したくもない相手なのに、「何日の何時に情報解禁ね」とか話し合うわけですよ。

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——情報解禁……。もはや仕事ですね。

稲田:しかも、一つのグループにだけ情報解禁すると、そのメンバーが夫も参加する別のグループのメンバー個別に「あいつら離婚したってよ」と本人の口より先に連絡が行ってしまい、変な空気になりかねない。だからすべてのグループで一斉に情報解禁。さながらマスコミのプレスリリースですよ。

一斉と言っても、個別の一斉送信はできないので、半日くらいかけてスタンバイして、次々送信する。頭と終わりだけ定型文のコピペにして、間だけ個別にメッセージを変えて、先輩にあたる人には敬語で……。うっかりして「〇〇さん」という宛名の部分を変えそびれて送ってしまい、大恥をかいたとも言っていました(笑)。

——そうやって具体的に説明されると、めちゃくちゃ面倒なのがよく分かります。

稲田:たまに、結婚式を挙げたばかりなのにすぐ離婚する人がいますよね。理由を聞くと、結婚式の準備の時点で、もう関係を続けられない状態になっていたんだけど、招待状も出しちゃったし親族一同にも顔向けできないから、とりあえず式は挙げたというんですよ。

周囲からすると、「離婚の意志が固まってるのに、なんでわざわざ挙式を……?」と思ってしまいますが、「結婚します!」とあちこちに触れ回った手前、それをひとりずつ撤回していく労力や精神的負担よりも、不本意でもなんでもとりあえず結婚式を挙げてしまうほうがラク、ということなんでしょう。すべてが終わってから、しれっと「離婚しました」と一斉に伝えるほうが、精神的負担は少ないと。

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離婚=転職? 合わなければさっさとやめていい

——恥ずかしながら、そういう事情を知らなかった今までは、うまくいっていない夫婦に対して「嫌ならさっさと離婚したらいいじゃん!」と思いっきり他人事のように思っていたのですが、そう簡単にもいかないことがよく分かりました……。

稲田:でも、まさに「嫌ならさっさと離婚したらいいじゃん!」とライトな感覚で離婚できるような世の中になっていくべきだと僕は思っています。離婚に際しての足枷(かせ)の話をいろいろしましたが、結局は世間が離婚を重く捉え過ぎているからこうなっているわけで。

——そうですね。“世間の目”さえなければ話はもう少しシンプルになります。

稲田:転職で例えるなら、「この会社にいたらダメだ!」と30歳で気付いて転職するのと、45歳で気付いて動き出すのとでは、当然30歳のほうがいい環境で再スタートを切れます。それは離婚も同じ。少なくとも、僕が話を聞いた方々は、誰一人として離婚して後悔している人はいませんでした。人間の時間は有限ですからね。「嫌だなぁ」と思いながら現状維持を続けるのは、現状を変えた先にある楽しい時間をドブに捨て続けるのと同じです。

——合わないのに無理に続けるのは、お互いのためにもならないですね。

稲田:そうです。会社にしろ、結婚生活にしろ、合わなければお互いのために解消したほうがいいんですよ。そもそも、人間は年齢とともに価値観ごと変容する生き物ですから。変容し続ける二人の人間が婚姻関係を続けていくには、めちゃくちゃ努力する必要がある。それを怠れば、どうしたってズレが生じるんですよね。価値観が何十年も「合い続ける」ほうが奇跡とすら思います。

——環境や経験や年齢によって考え方や感覚は変わりますからね。

稲田:自分に正直な人であればあるほど、ちょっとのズレに我慢できなくなって苦痛がたまる。結婚したばかりの頃はこう言っていたのに、こういう考え方だったのに、話が違うじゃないか、と。でも、どの程度、どういう方向に相手が変わっていくかなんて結婚前には分からないですし、仕方ないことです。

だからこそ、気軽に「やーめた!」と言いやすい環境があると、いくぶんかラクになると思います。今の世の中、3社4社転職するのは何も珍しくないですし、離婚もそれくらい社会が許容してくれるものになっていってほしい。そうすれば、離婚に躊躇(ちゅうちょ)して苦痛が続くこともなくなりますから。

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(次回は12月9日公開です。「離婚はケガであり、風邪であり、治すべきものである」)

(取材・文/朝井麻由美)

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