松本穂香 映画『わたしは光をにぎっている』で主演

松本穂香「自分を好きでいるために、終わりを選ばなきゃいけないときもある」

松本穂香「自分を好きでいるために、終わりを選ばなきゃいけないときもある」

今年デビュー5年目となる松本穂香さん。連続テレビドラマ小説『ひよっこ』でその存在感が話題になり、ドラマ『この世界の片隅に』の主演に抜擢。今年は主演映画が公開されるなどいま勢いに乗っている俳優のひとりとして注目されています。

そんな彼女が完成した作品を見て「こんな風に泣いたのは初めてのことでした」と語ったのが、主演を務めた『わたしは光をにぎっている』(11月15日公開)です。松本さんに、終わりと向き合うことについて話を聞きました。

YA191023_0035

完成した作品を見て衝撃を受けた

——「自分が出ている作品なのに、こんな風に泣いたのは初めてのことでした」と、試写を見た感想をおっしゃっていましたが、他の作品とはどんなところが違ったと思いますか?

松本穂香さん(以下、松本):最初は、「どんなふうになるんだろう」って思っていたんです。全体的にセリフの少ない脚本の中で、私が演じた宮川澪はもっとセリフが少なくて……。これはやってみないとわからないなと。

でも、できあがった映像を見たら、想像以上にひかりや景色がきれいで、「この映画は観た人にすごく愛されるだろうな」と思ったんです。そういう作品に出られて幸せだなと温かい気持ちがわいて、自然と涙が出てきました。

過去にも自分が出演している作品を見て泣いたことはあるんですけど、あんなに温かく感じた涙は初めてだと思いました。

——幸せな涙だったんですね。

松本:はい。自分が主演の作品だと「このシーンうまくできなかったな」とか、「撮影中にあんなことがあったな」と思い出してしまって、客観的に見られないことも多くて。この作品は、遠くから撮って全体を見せる引きのシーンが多かったので、客観的に見られたのかもしれません。

——松本さんのおっしゃる通り。映像がきれいですよね。特に、温度を確かめるときのお湯に触れるシーンが印象に残りました。

松本:あのシーンは私も、監督の演出が独特だったので印象に残っています。「温度を確かめるときは、お湯を慈しむように」と言われて。お湯に触れるところは少しファンタジーみたいな世界で、お湯を出してからまた現実に戻るみたいな演出だったんです。

周りもぽかんとして聞いていたんですけど、とりあえず「やってみます」と言って、OKが出て。できあがったものを見て初めて、こんなシーンになっていたんだって。

劇中より

劇中より

「ひかり」ってなんだろう

——そのシーンで読まれる、詩人・山村暮鳥の『自分は光をにぎつてゐる』にグッときました。毎日、それなりに一生懸命働いているけれど、一生懸命やったところでいったい自分に何が残るんだろうと思うと心もとなくて。松本さんは、仕事を続ける中で感じる不安などはありますか?

「此の掌(てのひら)をあけてみたら/からっぽではあるまいか/からっぽであったらどうしよう/けれど自分はにぎっている/いよいよしっかり握るのだ」
引用:山村暮鳥詩集 (現代詩文庫)

松本:不安はいつもあります。お仕事をしていて、できることが少しずつ増える一方で、その分何かを失っているんじゃないかと不安になるんです。前はもっといろんな気持ちがあったのに、ちょっと慣れてきたんじゃないかとか。でもそれは忘れてはいけないことだと思うので、あえて不安にさせている部分があるかもしれません。「私、大丈夫かな?」と、小刻みに確かめないと、知らないうちに悪い方向に進んでしまうような気がして。

——心配性なタイプですか?

松本:それもあると思います。自信がすごくあるタイプではないので、ひとつひとつちゃんとして、自信をつけていくしかないというか。昔からそんな感じです。

——山村暮鳥の詩を読んで松本さんはどう思いましたか?

松本:「ひかり」ってなんだんだろうって。けど、なんとなくわかる気もします。撮影を終えて公開を控えたいま思うのは、それは「ずっとそこにあったもの」なのだろうなということ。そして、誰の手の中にもあるものなのだと思います。掴むとかでもなくて、元から。

この作品は、生まれたときから持っているものをやっと見つけられた、という物語だと思うんです。自分はまだ「ひかり」を見つけていない。持っていないからダメだと思ってしまう人もいると思うんですけど。そうではなくて、誰の心の中にも「ひかり」は最初からあって、自分に向いているものとか好きなものを見つけられるタイミングが人それぞれ違うだけなんだろうなと思います。

YA191023_0059

自分を大切にしたいなら「終わり」を選ぶことも必要

——いつか失われる大切なものとの別れや、「しゃんと終わらせる」ことがテーマですが、今回の作品から学んだことはありますか?

松本:(澪の)おばあちゃんが言っていた、「形のあるものはいつかなくなってしまうけど、言葉は残る」というセリフがすごく好きだなと思いました。本当にそうだと思うし、大切な人からもらった言葉や思い出は絶対に私たちの中に残っていて、それがまた新しい居場所につながっていくはず。終わりはただの終わりではなく、新しい出会いを連れてくるのだというのは思います。

——松本さんが終わってほしくないことは?

松本:人との関係です。ずっと仲がよかった人と何となく疎遠になってしまうのはとても切ないですよね。今ある繋がりはずっと大切にしていきたいなと思います。

——終わってほしくなかったけど、終わってしまった経験は?

松本:あります。好きな人、とか……(笑)。素敵だなって思った人にお相手がいたら、やっぱり諦めなくちゃいけないですよね。恋愛に限らず、私は自分を大切にする選択をしていきたいなと思っているので。

たとえば夢を追うために何かを諦めないと先に進めないとか。自分を大切にするために、何か終わらせる決断をしないといけないときもあるのかなって思います。

劇中より

劇中より

——自分を大切にって意外とわかっているようで難しい。心がけていることはありますか?

松本:繰り返しになってしまいますが、自分を好きになれる選択をすること。つい怠けてしまう日もあって、なかなか私もできないんですけど。でも、自分のことを嫌いになってしまうと、自分を大切にできなくなってしまうから。「怠ける自分と、頑張る自分、どっちが好き?」って。そのときの気持ちを大切に、好きになれるほうを選びます。

——どんな自分なら好きだと思える?

松本:そうですね……。大事なところは変わらずに、ずっと一生懸命でありたいというか。小手先でこなすようにはなりたくない。ちゃんと毎回必死に、調子に乗りすぎず、まだまだだな自分っていう気持ちで謙虚にやっていきたいですね。

■映画情報

mainvisual

『わたしは光をにぎっている』
11月15日(金)、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
配給:ファントム・フィルム
©2019 WIT STUDIO / Tokyo New Cinema

(ヘアメイク:倉田明美、スタイリスト:李靖華、取材・文:安次富陽子、撮影:青木勇太)

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

松本穂香「自分を好きでいるために、終わりを選ばなきゃいけないときもある」

関連する記事

編集部オススメ

仕事と恋愛、キャリアとプライベート、有能さと可愛げ……女性が日々求められる、あるいは自分に求めてしまうさまざまな両立。その両立って本当に必要?改めて問い直すキャンペーンが始まります。

後悔のない30代を過ごしたい。ありとあらゆる分野のプロフェッショナルに、40歳から自分史上最高の10年を送るために「30代でやっておくべきこと」を聞いていきます。

記事ランキング