弁護士・佐藤大和さんインタビュー最終回

上司と後輩の板挟み…。弁護士が説く、モメごとに巻き込まれた時の対処法

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上司と後輩の板挟み…。弁護士が説く、モメごとに巻き込まれた時の対処法

「いつの間にかモメごとに巻き込まれてしまうことが多い」

「チーム仲が悪くて、仕事がなかなか進まない」

上司と部下の板挟みになるウートピ世代のみなさんの中には、こんな悩みを抱えている方もいるでしょう。

2018年2月に著書『弁護士だけが知っている ムダにモメない33の方法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を上梓した弁護士の佐藤大和(さとう・やまと)さんに、全3回にわたって人間関係をなめらかにするためのコツについて話を聞くこの企画。

最終回は「モメごとに巻き込まれたときの対処法」について聞きました。

【第1回】人間関係のベストポジションの見つけ方
【第2回】弁護士が教える「衝突回避」のコミュニケーション術

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気づけばモメごとに巻き込まれて…

——ウートピ読者は基本的にコミュニケーションが苦手という人たちではないと思いますが、相性の合わない2人の板挟みになってしまう場合も多い気がします。例えば、真面目な先輩と自由な後輩の板挟みになるとか。後輩の態度にイライラして先輩が怒ると、こんどは後輩が「あの人の言うことは、もう聞きたくない」となってしまったり……。

佐藤大和さん(以下、佐藤):そうですね。アラサー世代ともなると、上司と部下・後輩との間で調整役になることも多いですよね。そういうときは、二枚舌もありだと思いますよ。相手の感情を逆なでしないように、相手が受け取りやすい言葉や態度に変換するのは自然なことですよね。

——そうやって言葉や態度を変えるのは、「私はどっちにもいい顔をして、嫌なやつだ」と、後ろめたさを感じる人もいるようです。

佐藤:なぜ後ろめたさを感じるか、考えてみましょう。チームのために二枚舌になったとしても、結果、怒られた後輩もハッピーだし、先輩もハッピーだし、企業にとってもハッピーですよね。三方良しだけど、なぜ調整役の人だけ後ろめたさを感じるのか?

——確かに、みんなハッピーですよね。

佐藤:スパイのような罪悪感もあると思いますが、恐らくその背後には、「二枚舌を使ったことがバレてしまったらどうしよう」という不安が隠れているはずなんですよ。

争っていた先輩と後輩が、いずれ仲良くなることも、なきにしもあらずですよね。そのときに、「あの時、あの人から○○と言われたんだけど」「えっ!? 私には○○と言っていましたよ」というふうに。つまり、なぜか調整役の人が悪者になってしまう可能性があるんです。損な役回りだなと感じて、後ろめたさというよりも、フラストレーションを抱えてしまうんですね。

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最後に悪者にならないためのリスクヘッジ

——佐藤先生は、クライアントと相手方の間に立つとき、不安はありませんか?

佐藤:どちらにもいい顔をしなければならないときは、双方が話した場合でも大丈夫なように、リスクヘッジをしておきます。

——リスクヘッジ?

佐藤:逃げ道を準備しておくんです。例えば、先輩と後輩の板挟みになった場合で考えると「私はその問題を解決するために、そうすることが最善の策だと思った。二枚舌だと非難されるかもしれないけれど……」と誰かに言っておく。そうすれば、問題を起こした当事者から「あの人はどっちにもいい顔をしていた!」と非難されたときに、第三者が「でもあの人は、悩みに悩んで、2人のためにそうしたみたいだよ」とフォローしてくれるんですよ。

——おお!

佐藤:板挟みになっていた人が、最後に悪い人になってしまったら、損ですからね。「悩んで苦しんだ結果、そういう方法を取らざるを得なかった」という見せ方をしておくことも大切です。そのあとは、周りが助けてくれます。

今回の本にも書きましたが、人間関係は「対応」と「演出」でいくらでもいい方に変えられます。人間関係を円滑に進めるために、演出をすることは、決して皆さんのマイナスにはなりません。

——自分が後で悪者にならないためには、どういう人を味方につけておけばいいですか?

佐藤:争っている2人と近しい関係の方か、自分を守ってくれるポジションにいる方に相談しておくのがいいですね。小さい会社なら、社長に伝えておくのもありだと思います。「私はこういう見せ方をしますので、何かあったときはフォローしてください」というふうに。もしくは、争っている2人のうち、片方に言っておくのもいいと思います。

先輩と後輩が争っているなら、先輩に対して、自分がなぜそうするのかを正直に話しておく。そうすれば「バレたらどうしよう」という不安は解消されますよね。

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チーム内で解決できない場合は「第三者に頼る」が鉄則

——人数の多い部署なら、モメごとがあってもある程度スルーできると思うのですが、3人とか4人とか、少人数のチームの場合はどうすればいいでしょうか?  関係の密度が濃いから余計にこじれやすそうです。

佐藤:少人数の場合は、それぞれ自分の立場がありますし、過度に介入することでよけいこじれることも多いですよね。そんな状況なのに、人間関係のトラブルが起きてしまったら、チームの外側にいる第三者に頼りましょう。解決のために、セミナーや講演会を仕掛けるのもいいと思います。

——第三者から指摘してもらうということですか?

佐藤:そういうことです。例えば「コミュニケーション」をテーマにした講演会を開くとします。講演会の担当者は、事前に社内の人間関係のトラブルを聞いておき、それをスピーカーに伝えます。スピーカーはそのトラブルを、たくさんある事例の一つとして紛れ込ませておくんです。

トラブルの当事者が講演を聞いて「あれ? これって今の私たちの状況に似ている」と気が付けば成功といっていいでしょう。このように、第三者に指摘されることによって、チームがうまくいくというのも、よくあるパターンです。

人間関係のトラブルで一番怖いのは、当事者がお互いにそっぽを向いてしまって、コミュニケーション不可になってしまうことです。これを解消するにはすごく時間がかかるし、周りも気を遣います。

——確かに……。

佐藤:これをなんとかしようと躍起になるほど、当事者同士の溝が深まっていくこともあります。私は人間関係には、「出会う」「育てる」「寝かす」というフェーズがあると思っています。出会いがあって、関係性が深まる中でヒビが入ったり、トラブルが起こったりするのはある意味自然なこと。その中で自分の手に負えないと思ったら、つながりすぎた関係から距離を置く、つまり関係を「寝かす」のが有効になることもあるはず。

人間関係は多かれ少なかれ崩壊と再構築で成り立っているものだと知っていれば、気持ちが軽くなるのではないでしょうか。チームを心配する優しい心は素晴らしいものですが、その優しさが自分を傷つけ、その傷が新たなモメごとのタネになる可能性があります。嫌われることを恐れてストレスを溜めるより、「どうしてもダメなら逃げよう」と思うくらいがちょうどいいと思います。「逃げ」も「次の一手」だと思えば、罪悪感もありませんよね。

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(取材・文:東谷好依、写真:面川雄大)

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