「一生懸命説明しているのに相手から微妙な反応をされた」
「良いアイデアを思いつくのになかなか企画が通らない」
「中間管理職だけれど、上司や部下とのコミュニケーションの仕方が分からない」
そんな悩みを抱えている人に向けた『得する説明 損する説明―できる人の話し方、その見逃せない法則』(SBクリエイティブ)が3月に発売されました。
著者は、シンガポール発の歯科製品ブランド「Zenyum(ゼニュム)」の日本法人社長を務める伊藤祐(いとう・たすく)さんで、説明上手な人の“口ぐせ”を真似(まね)するだけで、説明がうまくなるとっておきのフレーズ40個を厳選。使用例と併せて紹介しています。
新卒で入社した外資系コンサル時代は説明下手で同期からも遅れをとっていたという伊藤さん。説明上手な人たちが共通しているフレーズを使うことで、話している内容は変わらないのに周りからの評価が激変したという伊藤さんにお話を伺いました。

著者の伊藤祐さん=本人提供
なぜ今、「説明」なのか?
——本書を執筆されたきっかけを教えてください。
伊藤祐さん(以下、伊藤):SBクリエイティブの編集長の方にお声がけをいただいたのが直接のきっかけです。これまでビジネス書を多く手がけてきた彼が話していたのが、「世の中にはビジネス書を中心にいろいろな説明本があるけれど、説明が苦手な人がそれらの本でうまい説明の仕方を学べるのか? というと、結構ハードルが高いのではと感じている」と。「とりあえず『これだけ覚えればOK』というフレーズ集のような本を作りたい」とおっしゃっていて、私自身もその思いにすごく共感しました。
例えば、専門知識や文章能力、企画力もあるのに、会議での説明の仕方が分かりづらいがゆえに企画が通らない人、商品に関する知識は豊富なのに、お客さまに向けて的を射た説明ができないがゆえに営業成績が上がらない人も多いと思います。逆の言い方をすれば、分かりやすい説明をするだけで「この人デキるな」と思われる。本にも書いた私自身の経験からも、説明がうまい人のフレーズを真似(まね)するだけで変わってくると言うのは実感としてあったので、お話を受けることにしました。
——本を執筆するにあたり特に意識したことは?
伊藤:何よりも「そのまま使える」を重視しました。難しい背景説明などはそぎ落として、本当にシンプルにフレーズと使いどころを紹介してます。パラパラと見て「これは使えそう」というフレーズをそのままコピペできるようにしました。「本を読んで終わり」というよりも、デスクなどすぐに手に取れる場所に置いて「次は大事な会議だから、使えるフレーズはないかな?」と探していただけると良いかなと。プレゼンや会議のたびに実践を続けていってもらえるとうれしいです。
——英単語や語学の勉強と一緒かもしれないですね。繰り返し口にすることで身に付くっていう……。
伊藤:そのフレーズがクセになると思うんですよね。本では「結論から申し上げると」や「なぜかと申しますと」などのフレーズを40個紹介していますが、1日に1つ、どれか使ってみようと意識するだけで、説明のうまさは向上していくと思います。
——本では、新卒で外資系コンサルのアクセンチュアに入社した伊藤さんが、自分の「説明力のなさ」に絶望した経験も綴(つづ)られていました。そもそも「説明」に注目したきっかけはあったのでしょうか?
伊藤:ある時に「仕事のほぼすべてが説明なんじゃないか?」と思ったんです。結局は言葉で何かをするのが仕事だと考えていて、こうして取材を受けるのも、逆に取材をするのも言葉だし、社内の会議も社外への営業も言葉なんですよね。資料作成で文章を書くことも、言葉を使って相手に何かしらの行動を促すためだと思うんです。
仕事をしている人で説明がまったくできない人はいないし、逆にすごく得意な人もあまりいない。だから、「説明を突き詰めれば、すべての仕事がうまくいくのでは?」という仮説が立ちました。そんな仮説を頭に置きながら、すごく優秀な上司の説明を聞いていると、フレーズや型みたいなものが見えてきました。そこで、彼らが口ぐせのように使っているフレーズを抽出して誰でも使えるようにしたら、「みんなの仕事が楽になるのでは?」と思いました。
会社や職場のカラーによってフレーズを使い分けて
——伊藤さんが外資系コンサル時代に「で、いったい何が言いたいの?」と言われたように、私も先日、「何のためにこの会議を開いたの?」と言われました。早速この本のフレーズを使っていきたいと思うのですが、会社や組織のカラーによって使えるフレーズは変わってきますか? 例えばトラディショナルな会社において、上層部に対するコミュニケーションのコツはありますか?
伊藤:まずは、その人の話を一回は受け入れてみることでしょうか。本の後半に書いた「まさにおっしゃる通りです」など、「この人は自分の味方なんだ」と思わせるようなフレーズを使うといいかもしれないですね。逆に成果ベースの会社の場合は、「結論から申し上げて」や「率直に申し上げて」というコミュニケーションのほうが好ましいかもしれない。会社のカルチャーや色によってどのフレーズを使うべきか、どのフレーズが響くかは変わってくる可能性はあります。
——ちなみに、説明上手のフレーズと同じように、上司への報告書作りや資料作成も、うまい人の真似(まね)をしていれば上達しますか?
伊藤:資料作成に関しては、僕自身のメソッドがあります。noteに「わかりやすい資料作成の極意」として、無料でまとめているのでこの記事を読んでいるみなさんにもぜひ活用いただければと思います。
(聞き手:ウートピ編集部、堀池沙知子)