『脱!しあわせ迷子』前編

私はこのままでいいのだろうか?【脱!しあわせ迷子】旅の始まり

私はこのままでいいのだろうか?【脱!しあわせ迷子】旅の始まり

「幸せ」という概念に興味を持った著者の堂原さんは、長年勤めた広告代理店を辞め「幸福国」の調査に乗り出します。世界一周23カ国、幸福国を調査して気づいたことをまとめた『脱!しあわせ迷子 世界の幸福国を旅して集めた幸せのヒント』(いろは出版)が2022年6月2日に出版されました。

世界と日本で異なる価値観や教育、政治、社会の違い、世界から見た日本……。さまざまな経験から気づいた「幸せ」のために必要なこととは——? 本書から抜粋した内容を2本掲載します。

私はこのままでいいのだろうか?

行動の始まりは、世界一周をする5年ほど前だった。

広告業界で働いていた私は、「これは、誰を笑顔にするためにやっているのだろう? 誰が喜んでいるのだろう?」そんな疑問で頭がいっぱいになっていた。

私はこのままでいいのだろうか?

そもそも広告業界に入った理由は、幼少時代にさかのぼる。

当時の私は、イラストや文章を書くときは、わざとちょっといびつでおかしな表現をして、見た人を笑わせたり、楽しませたりすることに快感を覚えていた。学級新聞作りや、文集作りには積極的に参加し、演劇の台本を書いたこともあった。

それは、大学に入っても変わらず、より規模を広げていった。自分がおもしろいと感じた若い詩人の方に自ら申し出て、広告チラシを作らせてもらった。バイト先のフード店で使っていた食品がタスマニアンビーフだったのだが、偶然、タスマニアに短期留学をすることになったため、そこでたくさん牛の写真を撮り、大きなレポート新聞を作って店舗に貼ってもらった。自分のホームページを作り、人に楽しんでもらいたい一心で「植物ダービー(植物の生育状況を競って楽しむ)」などというようなおかしな企画を立てていた。

「これはおもしろい! 誰かが喜んでくれる!」そう思い立ったら、とことんやる。というのが、私の性格だった。

そして、大人になり、次の遊び場として選んだのが、広告業界だった。当時、一世を風靡(ふうび)していたおもしろいテレビCMや感動する広告に魅了され、私もそんな仕事がしたいと思い、広告代理店に入ることにした。

しかし、ふたを開けると、自分の想像とは全く違う世界に驚いた。

当たり前だが、行われているのは、遊びではなく仕事なのだ。案件の多くは、企業のメッセージを淡々と伝えるもの。おもしろい表現を求めるクライアントはごく少数であり、クライアントの担当者の好みだけで表現が決まってしまうようなことも多かった。広告の表現が効果的か、おもしろいかどうかなんて求められない。その上、仕事は激務で連日徹夜の生活。体力面も精神面もすり減っていく。

もちろん、楽しい仕事もあった。素晴らしい出会いもあった。それがあったから長い間続けてこられた。

けれど、「これは、誰を笑顔にするためにやっているのだろう? 誰が喜んでいるのだろう?」

そんな疑問は日々、頭の中に増えていく。

もっと、好きなことをしたい。私は、このままでいいのだろうか?

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