38歳で退職、世界で幸せを探してみた。堂原有美さん 第3回

旅の手配はスマホで。幸福度の高い国をめぐる旅のはじまり【世界で幸せを探してみた3】

旅の手配はスマホで。幸福度の高い国をめぐる旅のはじまり【世界で幸せを探してみた3】

「幸せってなんだろう?」「どうすれば幸せになれるんだろう?」——そんな問いの答えを探すため、30代後半で地元の広告会社を辞めて、3か月後には世界一周旅行に出発。幸福度が高いといわれる国々を周遊した堂原有美(どうはら・ゆみ)さんは、帰国したいま「幸せは、自分で考えて、自分で決めるものでしかない」と言い切ります。

16年間打ち込んだ仕事を手放し、新しい人生を歩き始めて見えたもの。27もの“幸福度の高い国”をめぐり、その地に暮らす人々とふれあって感じたこと。

堂原さんのお話から、“自分なりの幸せ”を見つけるヒントを探っていきます。

第3回となる今回は、仕事を辞めた堂原さんが出国前に整えた準備。そして最初に訪れた北欧の思い出を、振り返っていただきました。

旅で使っていたリュックサック

旅で使っていたリュックサック

行き先は「幸福度が高い国」のランキングを参照

——仕事を辞めて、世界旅行を決意。「幸福度と教育の相関関係を探る」という旅のテーマも決まり、心の準備は万端です。その後は、どんなふうに旅の詳細を決めていったのでしょうか。

堂原有美さん(以下、堂原):まずはどの国に行くか決めることからはじめました。「幸福度の高い国をめぐる」といっても、幸福度の指標はさまざま。そこで私は2つのランキングに注目しました。一つは、一般的によく知られている国連調査のランキングで、国民の幸福度を11段階で調査したものです。そこには、生活の質や人権レベルなどの分析も加えられています。

もう一つは、スイス調査機関のランキングで、純粋幸福度(「幸福を感じている人の比率」-「不幸を感じている人の比率」)の値を基準とするものです。

——2つのランキングの特徴は?

堂原:国連のランキングは、上位を北欧の先進国が占めています。その特徴は、GDPや社会制度、平均余命などが高い国です。当時、東アジアで一番高かったのは、156か国中25位の台湾。日本は58位で、残念ながらすこしずつ順位が低下中です。

一方、スイス調査機関のランキングでは、貧困が目立ったり、命の危険がある国が上位に。ベスト10圏内には、フィジーやフィリピン、コロンビアなど、楽観的で助け合い精神の強い国が入っています。調査方法によって結果が変わるのだと思いますが、より「心」にフォーカスできているのでしょうか。日本は、55か国中18位に入っていました。

※国連調査は2019年/スイス調査は2018年の結果より

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旅費は総額350万円は自腹で

——なるほど。そこから気になる国をピックアップして、実際にどれくらい旅をされたのでしょうか。

堂原:2か月間フィリピンの語学学校に通ったのち、半年くらいで残り26か国をまわることにしました。ひとつの国の滞在は1週間程度、というペースです。はじめはリーズナブルな世界一周航空券を取ろうとしたのですが、あれはすべての行き先と日程を決めなければ予約ができないんですよね。だからうまく活用できなくて、結局ふつうの航空券を使いました。バックパッカーほど節約はしないけれど、切り詰められるところは切り詰めるように心がけていたので、旅費の総額は350万円くらいだったと思います。

——クラウドファンディングや何か支援は受けましたか?

堂原:いいえ。全て自分の貯金から捻出しました。

——旅の手配をするだけでも大変そうです。

堂原:ほぼスマホで手配したんですよ。いまの時代だからできたなと思います。逆に言えば、旅先でスマホをなくしたら終わり(笑)。

中くらいのスーツケースとリュックをひとつずつ持っていったけれど、究極的には、スマホとクレジットカードがあればなんとかなると思いました。女性の一人旅なので親は心配するかなと思いましたが、やりたいことを整理して、企画内容とスケジュール、予算表をつくってプレゼンをしたら、すんなりOKをもらいました。

——親族への根回しも完璧! 旅の手配が無事に終わっても、次は、現地で「幸福と教育」の話を聞かせてくれる人を探すのが大変そうです。

堂原:そうですね。行き先を決めたら、まずは日本に居るうちからとにかくアポをとりまくりました。幸福や教育を研究している機関に連絡したり、知人のつてをたどったりして、お話を聞かせてくれる人を探すんです。旅の前半は本当に手探りでしたが、後半はどんどん友達のつながりが増えてきて、アポ入れがぐっとラクになりましたね。旅を通じて世界中に友達ができたのは、本当に財産です。

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「その人らしい仕事で頑張っていれば、人生安泰」という幸せ

——そうして準備を整え、ついに出かけた世界旅行。はじめはどこを訪れましたか。

堂原:以前にも訪れたことのある北欧からスタートしました。ヨーロッパからアフリカ、中東、アメリカ、オセアニア、アジアの順番にまわりました。やはり北欧はイメージどおりで、本当に幸せな国でしたね。

旅のスタートはフィンランドから。写真はランドマークのヘルシンキ大聖堂/堂原さん提供

旅のスタートはフィンランドから。写真はランドマークのヘルシンキ大聖堂/堂原さん提供

写真は新名所、美しい先進的デザインの図書館Oodi/堂原さん提供

新名所、美しい先進的デザインの図書館Oodi/堂原さん提供

——たとえば、どんな制度や空気が幸せにつながっていると感じましたか?

堂原:日本に比べて、人々に時間があるところですね。たとえば子育て中の世帯でも、夫婦ともに定時に帰ってくるし、夫もきちんと育児に参加するから、女性にちゃんと時間の余裕があるんです。そのうえで、「好きな仕事」にこだわり、転職や学び直しをすることにも理解がある。むしろ「それが当たり前」という社会が仕上がっているんですよね。

——北欧は、どうして「好きなことを仕事にする」とか「きちんと定時で帰る」といった仕組みが確立されているんでしょう。

堂原:たとえばフィンランドは人口が約551万人と非常に少ないうえ、資源も少なく、季候も非常に厳しい。生きることすら大変な国です。国民一人ひとりがきちんと働き、税金を納めてもらわないと、国が成り立たない。だからこそ、性別や年代を問わず誰もが心地よく働き、無駄なく生産性が最大になるような社会がつくられているんですよね。

例えば、仕事を辞めた人には、数年間学びなおせる制度が用意されています。それを活用すれば、合わない仕事を無理に続けることなく、スキルアップのために迷わず退職できる。結果的に、働くことの自由度が上がるわけです。

北欧諸国は投票率も高いし、政治が信頼されています。だから税金が高くても納得して払えるし、実際にそのお金は手厚い社会保障として返ってくる。個性を伸ばす教育を受けて、自分らしい好きな仕事を選んで、まじめに頑張っていれば、それで基本は安泰なんですよね。日本にはないその安心感が、幸福度につながっていると思います。

フィンランドといえばカモメ/堂原さん提供

フィンランドといえばカモメ/堂原さん提供

2つの幸福度ランキングに基づいて、世界旅行をプランニングした堂原さん。北欧を皮切りに、さまざまな国をめぐります。第4回では、アフリカや中東、オセアニアなどの「幸福度」について話してもらいました。

(取材・文:菅原さくら、撮影:青木勇太、編集:安次富陽子)

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