アダルトグッズメーカー営業・堀江もちこさんインタビュー最終回

周りの見る目を変えるには“継続”しかない “オナホ売りOL”の私が思うこと

周りの見る目を変えるには“継続”しかない “オナホ売りOL”の私が思うこと

25歳のときにAVやアダルトグッズを制作・販売するメーカー「トータル・メディア・エージェンシー」(以下、TMA)に入社し、以降、営業職として4年目になる堀江もちこさん。

堀江さんの著書『“オナホ売りOL”の日常』(光文社)には、若い女性がアダルト業界の裏方として働くことについて、リアルな現状が事細かに書かれています。

たぶん多くの方が気になるであろう「なんでこの仕事に就いたの?」「具体的にどんな仕事なの?」「偏見はないの?」の三本柱を中心にお話をうかがいました。全3回に分けてお届けします。最終回は、「周りの人に悪く言われてもいい、損してもいい」と話す堀江さんが周囲の目とどのように付き合っているか話を伺いました。

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クソリプはスルー

——若い女性がアダルトグッズやAVの営業に行くと、セクハラされそうだな……と正直思っていたのですが、本を読むとそんなことはないんですね。

堀江もちこさん(以下、堀江):裸を見すぎて、エロい気持ちが削られてしまった方が多いのかもしれません。

——「欲望としてのエロ」ではなく、「生活のためのエロ」。

堀江:そうなる方、いると思います。

——堀江さんはツイッターやブログもやってらっしゃいますけど、エロ相談とか来たりしませんか?

堀江:それが、全然来ないんですよ。自社商品の宣伝ばかりツイッターに載せているからですかね(笑)。

——相手はユーザーだから無視できない、ちゃんと答えなきゃ、みたいなしがらみもありますけど、堀江さんはどうですか。

堀江:私はコメントを返すのが面倒なときはスルーしたり、ひどいことを言う人はミュートにしたりしてます。実際に会った人には真摯に対応したほうがいいと思うんですけど、会ったこともない人ですし、いいかなって。自社製品を使った感想をくださった方はリツイートしたり、ありがとうございますってお礼を言ったりします。それ以外には特別な対応はしないかな。

——相手をイヤな気持ちにさせるために、アダルト業界で働く女性に「お前で抜いてやる」というクソリプを送る人もいるそうです。

堀江:そういう人を私が矯正できるとは思ってないので、もし私のところに同じようなクソリプが来たとしても、距離を置くだけですね。もしかしたら、その人には女性にそういう言葉を投げつけるようになった何か、女性不信になる何かがあったのかもしれない。でもそれは私が解決できることではないので。

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「女の子はすぐ辞めるでしょ」

——堀江さんがアダルト業界で働くうえで、障害になっている偏見はありますか?

堀江:本にも書いたのですが、「女の子はすぐ辞める」という偏見です。実際に言われたことがあって、すごく腹が立ちました。言った人のことは「そっちが早く辞めてしまえ」なんてそっと呪ってます(笑)。見返してやりたいって気持ちもありました。でも、ちゃんと仕事を見てくれている人は、最初に偏見があったとしてもどこかで変わってくれるんですよ。

——アダルト業界で仕事をしいてるというと、「どうして?」とよく聞かれると思うんです。それに対して、エロに社会意義があることを伝えたいとか、社会を変えたいみたいな思いはありますか?

堀江:全然ないです。そんな高尚なことをしているとは思ってないですし、自社製品のオモシロ以外の良さもよく知っているけれど、やっぱり便器型ホールなどに社会的意義を含めるのは嘘っぽいじゃないですか。

そもそも、エロは悪いことじゃないので、大義名分はいらないと思ってます。エロは自然なことなので、アダルトグッズも買いたい人が買って、使いたい人が使えばいいだけで、無理に勧めるものでもない。たくさんある娯楽のうちのひとつなんじゃないかと思いますね。

——そもそも、堀江さんはエロが好きなんでしょうか。

堀江:ものすごくセックスが好きとか、そういう好きではないですが、たとえばAV女優さんがすごくかわいらしくて素敵だな、という好きではあります。

——“推し”みたいな感じというか。

堀江:あ、たしかにそういうのに近いかもしれないですね。

——アダルト業界のここが好き、というのはありますか?

堀江:寛容な人が多い気がします。やっぱり偏見のある業界だから、ある部分、普通の世界に馴染めなかった人が来やすいのかなって思います。

——生きづらさや挫折を知ってるからこそ寛容な人が多い?

堀江:そうとは言い切れませんが、そういう部分は多いと思います。業界にはいろんな方がいますけど、本当にエロが好きで来た方ばかりじゃないんですよね。もともと映画を撮りたかったけど映画業界に行けなくてAVを撮っているとか、そういうパターンもありますし。最初からAV業界を目指していた方ばかりではないように感じますね。

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継続が周りの目を変える

——あの、聞きづらいんですけど、「女性社員がAV出ました」みたいな作品あるじゃないですか。そういうオファーが来ることは……。

堀江:全然ないですね。切なくなるくらい来ないです。でも、この業界に入って1年くらいは、「いつデビューするの?」と思われていたそうです。でももう5年も営業として務めているし、そういう目はなくなったと思います。

——さっきの「女の子はすぐ辞める」の偏見もそうですけど、堀江さんは継続することで周りの目を変えてきたんですね。

堀江:そうかもしれません。結構「普通」だよと、もっと多くの人に知ってもらいたくて、本を書きました。特殊な仕事だと、勝手に他人に思われることが、ちょっと私には苦しくて。だから、本を読んで少しでも見方を変えてもらえたらうれしいですね。個人的には、特に5章を読んでほしいです。この業界に入ったきっかけや、「女の子扱い」されたこと、彼氏と別れたことなどを書きました。

——そういえば、書籍の台湾翻訳版のオファーが来ているそうですね!

堀江:まだオファーが来た段階なので、発売がいつになるかは未定ですが、台湾にはイベントの仕事で行ったりもしているのでうれしいです。カタコトの中国語でお客さんと話したりもしたので、あのお客さんが翻訳版を買ってくれるといいなと思ってます。

——最後に、ちょっとだけ海外事情についても聞かせくれませんか?

堀江:台湾のアダルトショップには、日本のアダルトトイがたくさん入荷されています。ヨーロッパやアメリカのメーカーももちろん置いてありますが、日本の商品は特に多かったです。

——エロのセンスが近いんでしょうか。

堀江:そうかもしれません。台湾のアダルトEXPOすごいですよ。みんな、日本のAV女優さんに会いに来てるんです。中華圏はAVを製作できないので、日本のAVが人気。日本のAV女優さんも大人気です。ナマで会えるめったにない機会だから、熱意がすごくて圧倒されますよ。またぜひ行きたいですね! 海外のAVファンとお話しするために、数年前から中国語の勉強をしています

——時間外に外国語の勉強……! 今後の展望は?

堀江:どの業界もそうだと思いますが、アダルト業界の先行きもかなり不透明です。でも、好きになったこの仕事を、この業界を維持する何かを見つけられたらいいなと思っています。

(取材・文:須田奈津妃、撮影:青木勇太、編集:安次富陽子)

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