“いい波”が来たときにパーンと乗れない居心地の悪さ【ジェーン・スー×pha】

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「phaです。今日は何キロ走りました」はイメージに合わない

スー:そこかなり違うかも。ダイエットが成功するタイプですね。

pha:あーダイエットは、でも楽しくなさそうだな。僕、運動は全然習慣にならないんですよね。

スー:トライしたことは?

pha:何回かはあります。やせたいというのはそんなにないんですけど、肩こりがすごくひどいので、体を動かすしかない、と思って運動しようと思ったことがあるけど、やっぱり続かなかった。今も肩こりつらいって常に思ってます。

スー:運動は何やったんですか?

pha:一度ジムの会員になって、水泳とか自転車こぐのとかやってみたりしたんですよね。でも、運動してる時間がすごくつまんなくて全然続かなくて、ジムには毎日行ったんだけど、ひたすら風呂とサウナだけ入ってました。家に風呂がなかったので。

スー:私は継続ができてるのはスマホゲームのジュースジャムと仕事だけかな。運動も続けてますけど、スイッチを入れる負荷が非常に高い。でも頑張ってやってると気持ちいいから。

pha:気持ち良さがあるんですね。僕は運動で気持ち良さを感じたことがないかも。

スー:ありますね。オバさんはパーソナルトレーナーにつくのがいいですね。誰かにちゃんと指導してもらう。以前、ボクササイズにハマったことがあったんですけど、体を思い通り動かすために頭を使う、という流れができたのが経験として楽しかった。運動って、考えて脳を使わないと体が動かないんですね。脳を楽しませるために体を使うことばかりしてきたから知らなかった。

pha:うらやましいですね。そこは僕が全然できてないところです。

スー:「phaです。今日は何キロ走りました」みたいなのは、イメージ的に合わないですもんね(笑)。

pha:やる気がないってキャラやってきてますからね(笑)。

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自己啓発っぽい自分って嫌

スー:自分は外れ値だってことを、ずっと、気に病むというわけじゃないけど、治らないささくれみたいに感じていたので、それがいま生活の糧になってありがたいと思ってます。でも、「こんなんでも大丈夫、頑張ろう!」みたいなのが高まり過ぎると、自己啓発っぽくなって嫌ですけど。

pha:スーさんのそういうメッセージを必要としている人もいそうですけどね。

スー:自己啓発っぽい自分って嫌じゃないですか?

pha:確かに僕はやらないですけどね。僕はもともとライターとかではなくウェブ日記育ちだからというのもあると思うんですが、何を書いても自分のことを書いてるばかりになってしまうので、そこにちょっと引け目はありますね。スーさんはラジオでいろんな人の相談に乗ったりしていて、えらい、すごい、そっちのほうが人間らしい、と思う。

スー:phaさんの言葉も、場合によっては自己啓発っぽく受け止められたりしませんか?

pha:あるかもしれないけど、できるだけそう受け取られないようにしたいですね。そういうふうに受け取られると怖い。

だから、生き方とかについて「こうしたほうがいいよ」みたいなことは前よりも言わないようになってきてますね。最近は本当に自分の個人的なことしか書かなくなってきているので、社会に対してとか世間の人に対して何か言ってほしいと言われても、何も言うことが思いつかない。

スー:程度の差こそあれ、ノウハウみたいなものが求められるじゃないですか。役に立つのかと。

pha:役に立つもののほうが売れますよね。僕としては役に立たないもののほうが好きなんだけど。

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役に立つか分からない曖昧なものが好き

スー:タイトルとかどうしてます? 自分でつけてます?

pha:本ですか? 僕は本のタイトルをつけるのがすごく苦手で、わりと編集の人に考えてもらってます。個別の記事のタイトルを考えるのはできるんだけど、本のタイトルとなるとなぜかできない。

スー:例えば「がんばらないでも生きていける23の方法」みたいなタイトルがきたらどうします?

pha:それは嫌ですね……。

スー:でもそういうほうが売れたりして。

pha:めっちゃお金に困ってたら飛びつくかもしれないけど、余裕があるうちはやりたくないかなあ。書くことで自分にとって得るものがお金以外になさそう。

スー:生(なま)の自分を商業ベースに乗せるのって難しいですよね。その辺が吹っ切れている人は、ある種うらやましくもある。書こうと思えばハウツー自己啓発本は書けるんですけど、嫌。この、拒否反応って何だろう。

pha:僕も嫌ですね。読んでどう役に立つか分からないような曖昧なものが好きです。スーさんの対談集の『私がオバさんになったよ』とかも、はっきり役に立つメッセージがあったり、分かりやすく面白いネタが話されたりしているわけじゃないけど、なんとなくいろんな話が読めて、ときどき大きな笑いじゃないくすくす笑いがある、みたいな感じが良かったです。これくらいのテンションがいいですね。

スー:役に立たなさそうなところから、自分にだけ役立ちそうなことが感じ取れたりすると、読んでよかったと思います。小説とかもそうだな。何でもないところで励まされたりするし。

pha:あと、分かりやすいものを出して人気になったとしても、それで寄ってくる人があまり好きじゃないかも。

スー:ははは(笑)。そうですね、難しいですね。自分が書いたものに、お金を払って読んでくれる人がいるのはありがたいし、身に余る光栄なんですけどね。

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