峰なゆかさんインタビュー第2回

彼女が『アラフォーちゃん』を描かない理由「どの世代にも通じる話だな…って」

彼女が『アラフォーちゃん』を描かない理由「どの世代にも通じる話だな…って」

「週刊SPA!」にて2011年に連載がスタートした漫画『アラサーちゃん』。主人公の“アラサーちゃん”はじめ、“ゆるふわちゃん”“ヤリマンちゃん”“オラオラくん”“文系くん”など個性的なキャラクターに自分や自分の周りの人を投影し、思わず引き込まれていったという人も多いのではないでしょうか。

2019年11月、約8年の連載期間を経て、ついに最終巻が刊行。自身もアラサー期間を漫画とともにかけぬけ、現在35歳になった、著者の峰なゆかさんにお話をうかがいました。

私に必要なのは最低限の水と食料と“モテ”

——『アラサーちゃん』の連載が始まったころ、峰さんは25歳で、書き終わった今は35歳。同じ「アラサー」というくくりの中でも、だいぶ違いますよね。

峰なゆかさん(以下、峰):全然違いますよね。

——私は25歳のときには30歳になるのが怖くて、でも30歳を超えたら意外と楽しくて、「いいじゃん、人生」という感じですが、峰さんはいかがでしょうか。

峰:自分がいざ恐れていた年齢になってみると、「いったい私は何を心配していたのか……?」みたいな感じですが、自分が今、35歳の女性として「35歳、別に楽しくやってるよ」って若い子に言ったとしても、「うわあ……」って思われるんだろうなとわかってるから、「35歳楽しい!」って言いづらいですね。

今、年上の女性たちが「40代になってからが最高に人生楽しい!」と言うのを聞いても、「いや、嘘つくなよ」って感じになるんですよ。でも、自分が20代のころに「30代楽しい!」って言ってる人にも「いや、嘘つくなよ」って思ってたし、だから自分が40歳になったときも、まあ楽しいと思うんでしょうけど。

ただ、40代が楽しいっていう理由が、人によりけりじゃないですか。「男性にセクハラされたり、言い寄られなくなってラク!」みたいな意見を聞くと、うーん……って思っちゃうんですよね。「楽しい!」ってのと「加害されにくくなくなった!」って違うと思うし。

——結果的にそうなってラク、なのはいいんですけど、それを求めて40代になるっていうのも、なにか方向性が違う気がしますね。

峰:本人が楽しいならそれでいいんですけど、自分が口説かれない40代を目指したいかといったら全然目指したくないって思います。私にとって“モテ”ってアイデンティティーというか、最低条件なんですよ。最低限の水と食料とモテがないと私は生きていけないという感じで、人生の最大目標ではないけれど自分が最低限の文化的な生活を送るために必要なものだと思っているんですよね。

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欲望を持って表明すること

——「アラサー」「アラフォー」といった年齢のくくりに限らず、私たちはいろんなカテゴリーにくくられがちです。それが不本意なカテゴリーのこともよくありますよね。

峰:不本意なくくられ方……たとえば「毒舌キャラ」みたいなのは嫌ですね。そういうのでなければ、私は別にカテゴライズされても気にしないです。

でも「まんこ臭くなさそう」カテゴリーならちょっと嬉しいかも。私、それ言われたことあって、めちゃくちゃ嬉しかったですよ(笑)。

——(嬉しい……のか?)。そういえば、『アラサーちゃん』はクンニに関する話題が多いですよね。

峰:私としては、通常の分量のクンニを入れているつもりでしたよ! それなのに「クンニネタがめっちゃ多い」って言われるから、世の中の人、生活の中のクンニの割合がちょっと低すぎるんじゃないですか?

やっぱり、アラサーの間の変化としてけっこうあるなって思うのが、「女はどんどんクンニが好きになっていく」ということだと思うんですよね。周りの友達の意見を聞いてみても、セックスの二本柱は「クンニと勃起力」。

——なかなか友人同士でどんなセックスや前戯が好きかという話はしないので、貴重なお話をありがとうございます……。

峰:クンニをしてほしいという欲望をまず自覚できていて、さらに表明できるというのは、自分に自信があるということにも関わってくる部分だと思うんです。「(本当はしてほしいのに)クンニは恥ずかしいから嫌だ」みたいな感じって、もったいないですよ。

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『アラフォーちゃん』を読みたいと思えなかった

——続編として『アラフォーちゃん』を描く予定はないんでしょうか。

峰:ありません。『アラサーちゃん』を描き始めたときは、割とアラサー女性に世間の注目が集まっていたんですよね。それまで「女と言えば25歳まで」だったのが、アイドルでもアラサーの子が出てきたり、女優さんでも一番売れてる層がアラサーだったり。あと、AV女優はアラサーになると完全に「熟女枠」だったのが、「きれいなお姉さん枠」になったりして、アラサーのイメージがものすごくよい方向に変わったときだったんです。

そういうのもありつつ、でもアラサーという単語には、「ちょっとイジれる」みたいな空気もあって、それが注目を集める理由になっていたんでしょうね。

そういう、年齢で分けるみたいな空気感が薄くなっている今、『アラフォーちゃん』っていうタイトルの本を出して売れるかと考えたとき、私は厳しいと思ったんですよね。まず自分が読みたいかと考えたら全然読みたくないし。

——読みたくないと断言するのはなぜですか?

峰:私は、23~25歳くらいまで、ずっとアラサーになる恐怖におびえていたんですよ。ずっと怖い怖いって、20代前半のうちからアラサーのことばっかり考えてたんです。ずっと考えていたから、アラサーに対して思うことやネタがたくさんがあった。一方、30代になってからは、『アラサーちゃん』のネタのことばっかり考えていたからか、アラフォーに対する思い入れが特にないんですよ。

それに、『アラサーちゃん』って、アラサー限定の話じゃなくて、ほかの年代でも成り立つ話なんです。もちろん、アラサーならではの話もあるっちゃあるんですけど、登場人物が20代前半だろうがアラフォーだろうが、ネタはあまり変わらないと思っていて。

以前、「女子高生アラサーちゃん」っていうタイトルの漫画を描いたことがあって、それは、アラサーちゃんたちが女子高生だったころの話なんですが、描きながら「服装が制服になってるだけで、いつものネタの感じと変わらないな」と思いました。

要するに『アラサーちゃん』というタイトルではありますが、どの世代にも通じる女の話なんですよね。だから、『アラフォーちゃん』を描く必要はないと思っているんです。

(取材・文:須田奈津妃、撮影:面川雄大、編集:安次富陽子)

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