『かんたん仕込みですぐごはん』上田淳子さん 第1回

“料理スキルを身につける術”がなかった世代へ 料理の苦手意識を下げるコツ

“料理スキルを身につける術”がなかった世代へ 料理の苦手意識を下げるコツ

手抜き、時短、外食、外注……。料理する人の負担を軽くするようなハックやサービスはあふれているものの、「身体にいいものを食べたい」「経済的なことを考えると自分で作ったほうがいい」と考えると、なかなか切り離せない“料理”。どうせやるのならば、おいしいものを食べたいですよね。

「現代の働く女性たちは、子供のころから勉強も仕事も忙しくて、料理を学ぶ機会も少なかったはず。料理に対して苦手意識を持つのは当たり前のことです」

と話すのは、2019年3月に『仕込みと仕上げ合わせて最短10分! 帰りが遅くてもかんたん仕込みですぐごはん』(世界文化社、以下『かんたん仕込みですぐごはん』)を上梓した料理研究家の上田淳子(うえだ・じゅんこ)さん。上田さんに、料理する人の憂うつな気持ちを晴らすヒントになる“仕込みメソッド”について話を聞きました。

“料理スキルを身につける術”がなかった世代

——料理研究家に聞くのは叱られそうですが、毎日食事の支度をするのって、けっこう大変じゃないですか……?

上田淳子さん(以下、上田):大変ですよ(きっぱり)。私ですらそう思うのですから、いまのアラサー世代の人たちはもっと大変なのでは?仕事か家事のどちらかだけを選ぶわけにもいけないし、やらなきゃいけないことも本当にたくさんありますよね。独身や夫婦ふたりの時には仕事に比重をかけることができても、子育てが加われば、料理もないがしろにはできないし。1日が48時間あっても足りない、というのが本音じゃないでしょうか。

——そうそう、そうなんです!

上田:この世代の人たちは、残念ながら“料理スキルを身につける術”がなかった世代だとも思います。“花嫁修業”を強いられるタイミングもなかったと思いますし、男女平等といっても男性に自炊のプレッシャーがかかることもなかったはず。そんなふうに育ってきたのに、一人暮らしや結婚によっていきなり自炊を求められても、難しいですよね。それなのに「女なんだから料理くらいできて当然」なんて言われちゃうと、もう、聞きたくない!って、シャッターをおろして閉店したくなっちゃう(笑)。自炊ができないのは当たり前だって思わなきゃやっていられないですよ。

——料理のプロにそう言っていただけて、救われます……。

上田:3月に出版した『かんたん仕込みですぐごはん』は、そんな大変なみなさんに、私の知っていることでお役に立てたら……と思ってつくった本です。料理研究家として、手の込んだおいしい料理はたくさん知っています。だけど、みんながみんな難しい調理をできるようになるべきだ、とは思わない。だから、私の知っているノウハウをかみ砕いて、誰もが気軽につくれるようになるためのポイントをまとめました。

“仕込み”のあとは、仕上げまで10分

——この本で提唱している料理の“仕込み”について教えていただけますか?

上田:たとえば、肉に下味をつけておいたり、野菜をむいて切っておいたりというような、誰もがしている下準備です。平日の帰宅後にそれらの作業を一気にやろうとすると、ごくシンプルな時短料理しか選択肢がなくなってしまいます。

でも、仕込みがあらかじめ済んでいれば、調理の時間に制限があっても、必要な工程を抜かずに手をかけた料理が簡単につくれます。私自身も双子の子育てをしながら働いていたとき、リアルに使っていたメソッドです。

本書より

『かんたん仕込みですぐごはん』より抜粋

——仕込みだけを済ませておく……。全部仕上げてしまうつくりおきや、帰宅後にゼロからつくる料理より、ハードルが低くてよさそうです。

上田:そもそも自分の気持ちが上がらなきゃ、料理がツラくなるだけだと思いませんか? 
数工程仕込んでおくだけで、「帰宅してすぐにあのメニューがパパッとつくれるぞ」と、心に余裕が生まれるし、それが料理をする楽しさにつながるのではないかと思うのです。

——わかる気がします。自分で完成させるみたいな、ちょっとした達成感も得られそうです。つくりおきだと、食べきる事に達成感を持っていきがちというか……。

上田:あるからには食べきらなくちゃ、というプレッシャーも生まれますよね。それに、つくりおきってなかなか家族のテンションが上がらないんですよね……。どれだけ頑張ってつくっても、冷蔵庫でタッパーに入っているのを見たら「残り物じゃん」と思われてしまって。つくりおきすることで気持ちが楽になるなら素敵だけれど、そうでもないなら、仕込みに切り替えるのもいいと思いますよ。

——つくりおき苦手派としてはうれしい話です。仕込み、試してみたくなってきました!

上田:この本のレシピは、お料理初心者の方に実際つくってみてもらったり、ヒアリングを重ねたりして、より“現実的”な書き方を心がけました。たとえば、フライパンに火をつけるのは材料を入れる前か後か、弱火にするのは何分間か、ふたをするのかしないのか……近ごろの料理本では省略されがちな“行間”を、なるべく丁寧に補っています。読者の方々がつくるとき、できない手順があったら、お役に立てないわけですから。どんな方も失敗しないでつくれる、わかりやすさにこだわりました。

どこででも買える食材を使った、家族も喜ぶレシピ

上田:それからもうひとつ、材料はどこにでも売っている食品にこだわりました。ガラムマサラやローリエみたいな食材は、お店で食べればいいんです。生姜やにんにくも本当ならみじん切りにしたいけれど、そこをあえて「すりおろし」のレシピに変えて、チューブでも代用できるようにしています。

——本当に、私たちの現実に即した料理術だと感じます……!

上田:そういう意味では、餃子を載せるかどうかちょっと迷ったんですよね。平日の夜に、ちまちま包まないじゃないですか(苦笑)。でも、餡だけ仕込んでおけば難しくはないし、家族でつくればコミュニケーションにもなるから、あえて入れました。揚げ物もそう。成長期の子どもがいるお母さんだったら、やっぱり家族が喜ぶメニューのつくり方は知っておきたいだろうと思って……なるべく簡単なレシピに調整したつもりです。仕込みをうまく活用して、まずは週1でも週2でも、手料理の日を差し込めたらいいですよね。

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次回(5月26日公開予定)は、さらに具体的な“仕込み”のテクニックをご紹介します。

(取材・文:菅原さくら、撮影:大澤妹、編集:安次富陽子)

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