仕事ができて優秀なのに、なぜか評価されていない女性の先輩。学生時代から優秀で同期の出世頭だったのに中間管理職になった途端、出世が止まってしまった女友だち。私のほうが真面目に仕事もして結果を出しているはずなのに、同期の男性に比べて上司からの評価がイマイチな気がする……。
「女性活躍」と叫ばれているわりには、昇進してキャリアアップする女性が少ないのはなぜ? 優秀なはずなのに評価がパッとしないのはもしかしたら「仕事」や「出世」のルールを知らないからかも……。
そんな、女性が気づきにくい「ルール」についてつづった秋山ゆかりさんの新刊『自由に働くための仕事のルール』『自由に働くための出世のルール』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が5月に同時発売されました。
20代でボストン・コンサルティング・グループ(BCG)で戦略コンサルタントとしてビジネスの基礎を学び、その後ゼネラル・エレクトリック(GE)やIBMなどのグローバル企業で管理職を歴任。現在は事業開発コンサルタントとして活躍中の秋山さんに、働き女子が知っておいたほうがいいことについて4回にわたって伺いました。
第2回目のテーマは「それでも出世したほうがいい理由」です。
一番辛いのは中間管理職
——前回は、「管理職になりたがらない女性は多いと言うけれど、自由を失わないためのキャリアをきちんと考えてほしい」というお話でした。今回は、女性たちが「出世」したほうがいい理由について詳しく教えてください。
秋山:出世したほうがいい理由については、2004年に出版した『ミリオネーゼの仕事術<入門>』という本に書いたんですが、20代で離婚をして病気になったときに病院のベッドの上で、「私はこのまま何もなさずに死んでいくのかな?」「何もないまま人に頼って、あるいは国に頼って生きていくしかないのかな」と思ったときに仕事ができて稼げる人間になりたい、そのためには年収1000万円を稼げるようになろうと目標を立てて、目標を達成するには管理職を目指さないと厳しいなと思いました。
そしてもう一つは「自由」のためです。
——それは具体的にどういう意味ですか?
秋山:これまでのキャリアを振り返って、一番大変だったのが課長職時代でした。部下の面倒を見なければいけないし、自分の上には部長、本部長、役員、社長がいる。みんなそれぞれ言うことが違って、丸投げされて自分の時間の自由もきかず、上を見ながら下を見ながら、私はどこを見て仕事をしていけばよいのだろうか、管理職は辛いものだ、と毎日思いながら働いていました。
でも、このゾーンを抜け出し、役職があがれば、自分で全部決められるし、時間も自由がきくようになる。私は会社員だけでなく、音楽家としても活動を続けていたので、音楽もやり続けるのであれば、自由が欲しいと思いました。
もう一つは、スタッフ職であっても会社の問題点は上に上げることはできるけれど、では大きく変えられるか、というのは上の気持ち次第なんですよね。課長時代は、部下から突き上げられて上に伝えられるけれど、抜本的に変える施策にまで持っていけるかというとそれは難しかった。
じゃあ自分が部長、本部長に上がっていったらどうかというと、自分がおかしいと思ったら、説得するのは役員だけになります。自分の部署のことは自分の好きなようにできますよね。そういう意味で、出世をすれば変えたいと思うことは変えられるという意味での「自由」です。
——中間管理職にとどまるのではなくて、その先にいくともっと大きな「自由」が手に入るということですね。
秋山:上の人たちを見ていて「結構、自由だな」と思ったんです。「その違いは何だろう?」 と考えたときに、大変なのは男性も女性も関係なく、中間管理職が大変なんだな、と気づき、1日も早く抜けたいと思いました。
向いてなかったら辞めればいい
——そうなのですね。でも、管理職になるのは責任も大きいし、自分には難しいのでは? と思ってしまうんですが……。
秋山:できなかったら、向いてないと思ったら、辞めればいいんです。
——えっ、それでいいんですか?
秋山:私はやってみてダメだったり、本当に自分は向いてないなと思ったりしたら、方向転換をすればいいと思っています。
——30代になると、この歳になって大きな失敗はできないと思ってしまい「石橋を叩いて渡らない」ことも結構あるんですが……。
秋山:みんな成功したときの話はするけれども、失敗の話はあんまりしないですよね。上に上がっている人たちもみんなひどい失敗をやっているものです。「数打てば当たる」ではないですが、そんなに成功率は高くない。逆に数をこなさなければ成功もしないし、成長もしないんじゃないかなと思っています。
——秋山さんにそう言われると「そんなものなのか」と気が楽になります。
秋山:私は事業開発の領域でずっと仕事をしています。事業開発とは、会社の次の成長の軸になる事業を作る仕事で、買収で作る場合もあれば、新規事業を立ち上げるケースもあるんですけれど、上場企業の成功率って5パーセントぐらいなんです。95パーセントは失敗してるんです。
仕事も同じだと思います。成功するのは100本打って5本。その5本のことを一生懸命、人に言ってまわるので、いかにも、その人のキャリアが成功しているように見えるけれども、実際はたくさんの失敗もしていると思います。
——そうなんですね。
秋山:もちろん自分の成長という点でも、仕事のより大きなところに関与ができるので、管理職になってよかったなと思ってます。見える景色がまったく変わりますよ。
※次回は7月17日(火)掲載です。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)