映画『海を駆ける』インタビュー・前編

鶴田真由「自分が頂いてきたものは、下の世代に返さなければ」 映画『海を駆ける』に出演

鶴田真由「自分が頂いてきたものは、下の世代に返さなければ」 映画『海を駆ける』に出演

女優の鶴田真由さん。18歳で芸能界デビューして以来、映画、ドラマ、舞台などで活躍。最近は「旅好き」としても知られ、紀行番組やドキュメンタリー番組にも出演しています。

5月26日に公開される映画『海を駆ける』(深田晃司監督)では、俳優の大賀さんと親子を演じ、流ちょうなインドネシア語も披露しています。

深田監督作品への出演は『ほとりの朔子』(2014年)に引き続き、2回目となる鶴田さんに話を聞きました。

インドネシア・アチェが舞台のファンタジー

『海を駆ける』は、2004年のスマトラ沖地震で巨大津波に襲われたインドネシア北西部のアチェ州で全編を撮影。人間の希望や思惑には関係なく、人々の生活に恵みと災いをもたらす自然の姿と、アチェの街で暮らす人々の暮らしや国境や宗教を越えた人との交わりを描いていています。

日本から移住し、NGOで災害復興の仕事をしている貴子(鶴田さん)と息子のタカシ(大賀さん)の元に日本人らしき男(ディーン・フジオカさん)が海で発見されたという連絡を受ける。男は、インドネシア語で「海」を意味する「ラウ」と名づけられ、貴子とタカシ、親戚のサチコ(阿部純子さん)はラウの身元捜しを手伝うことになるが、ラウのまわりで不可思議な出来事が起こりはじめて……というストーリー。

(C)2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS

(C)2018 “The Man from the Sea” FILM PARTNERS

インドネシア語だらけの台本に「無茶振り!」

——この作品への出演を決めた経緯について教えてください。

鶴田真由さん(以下、鶴田):ある日、深田監督から台本が届いたんです。

——台本を読んでいかがでしたか?

鶴田:まずは、インドネシア語の多さに驚きましたね。ページをめくるごとにインドネシア語で、「え? またインドネシア語?」となって、これはインドネシアからの帰国子女がやったほうがいいんじゃないかと思うくらいの文量だったので、監督に「このインドネシア語は正気ですか?」ってメールしたんです。

そうしたら「正気です」って返ってきて……。「(インドネシア語を)話せない僕が言うのも何ですが、インドネシア語はとても簡単な言語らしく、数ヵ月で喋れるようになるらしいです」って書いてあって。「無茶振りだ!」って思いました(笑)

(C)2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS

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——かなりインドネシア語を勉強したとお聞きしたんですが……。

鶴田:撮影の2ヶ月前くらいからスタートしたんですが、確かに、監督がおっしゃるように文法はわりと簡単なんです。とはいえ、単語を覚えなきゃいけないから大変さは一緒なんですけれど……。でも女性名詞、男性名詞もないし、時制(過去・現在・未来)もないんですよ。

——そうなのですね。先生についてマスターされたんですか?

鶴田:はい。初日は、(息子役の)太賀君と一緒に受けていて、先生がセリフを読んでくれたときに、2人とも目が点になりましたね。一つも聞き取れないっていう……。愕然としたというか。「一体、これをどうやって覚えればいいの?」って。でも、何とかしないといけないので、できないっていう選択肢はないのでがんばりました。

(C)2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS

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——太賀さんとの共演はいかがでしたか?

鶴田:すごくお芝居の上手な役者さんですし、以前深田組でご一緒しているのでとてもやりやすかったですね。

——ディーン・フジオカさんとの共演は?

鶴田:ディーンさんは逆にセリフがほとんどない役なので、ご苦労されたんじゃないかな。ラウという役が自然の象徴のように描かれているので、とても抽象度が高いんです。

ディーンさんご自身も難しかったと思いますが、私もどのくらいの距離感でラウに接していいのか、すごく難しかったですね。

下の世代の才能に興味津々

——鶴田さんは18歳のときから芸能活動をされていますが、20代、30代を経て変わったことはどんなことですか? ウートピを読んでいる読者は働く女性が多いので、鶴田さんの仕事観の変化などをぜひ伺いたいです。

鶴田:自分が年をとった分、若い才能に興味があるかもしれないですね。

——それは若い俳優さんや女優さんってことですか?

鶴田:……も含めて、脚本家とか、監督もですね。才能の片鱗が見えると嬉しくなります。

脚本や演出の中に「その人が大切にしているもの」が見えてくると、一緒に育てていきたくなるし、自分にできることは提供したくなる。若い頃は自分が吸収することばかり考えていたけれど、自分が頂いてきたものは下の世代に返さなければ、と思います。

——なるほど。若い世代や下の世代をそういう目で見守るのも上の世代の務めなのかなと思いました。今回の深田監督の作品の魅力は何だと思いますか?

鶴田:静かだけど熱がある。社会に対して声高に問題提起をするわけではなく、なにげない日常会話の中にふっと忍ばせるのが上手だなと思いますね。観る側に何かを押し付けることなく、ちゃんとそこにタネを蒔(ま)く。そのさじ加減が素晴らしいと思います。

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※後編は5月26日(土)正午公開です。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)

■クレジット情報
衣装:A .Dupré
ヘアメイク:赤松絵利(esper.)
スタイリスト:鈴木えりこ(iELU)

■映画情報
【タイトル】『海を駆ける』
【公開表記】2018年5月26日(土)全国ロードショー
【クレジット】(C)2018 “The Man from the Sea” FILM PARTNERS
【配給】 日活 東京テアトル

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