毎日のファッションにも、そして生き方にも、自分らしいスタイルが欲しい。でも、「これでいいんだ」と自信を持って貫けるものはなかなか見つからないですよね。
前回、前々回から引き続き、『おしゃれはほどほどでいい 「最高の私」は「最少の努力」で作る』(幻冬舎)を上梓した、野宮真貴(のみや・まき)さんに自分らしいスタイルを見つける方法を聞きました。
第1回:野宮真貴さんに聞く「今を楽しむ工夫」
第2回:「最小の努力」で自信を手に入れるために
「毎日同じ」ほうが、よっぽどおしゃれ
━━前回は、おしゃれをしたい気持ちはあってもうまくいかない女性たちに、ファッションを楽しむための基本を伺いました。今回はもう一歩踏み込んで、「最小の努力」でおしゃれに近づくために、今日からでもすぐに実践できる方法を教えていただけますか?
野宮真貴さん(以下、野宮):まずは、「毎日、違う服を着なくちゃ」という思い込みを捨てること。自分のスタイルさえあれば、毎日、似たようなコーディネートでもいいですし、その服があなたを素敵に見せてくれるなら、色違いを着まわしたっていいんです。
考えてみれば、ツイッギーのミニスカート、マイケル・ジャクソンの白い手袋、アンディ・ウォーホルのシルバーヘア。スターと呼ばれる人々は、みんな自分のトレードマークを持っています。それに、おしゃれな人は意外と同じスタイルの服を来ています。
ファッションは自己表現なのだから、毎日違った私を見せる必要はないはず。トレードマークと呼ばれるくらいに何かを偏愛し続ければ、それがやがて「あの人といえば○○」といわれるその人の個性になっていくんですよね。
━━毎日、似たような服を着ていてもOKなんですね。それは、気がラクになります。
野宮:コーディネートを考えるのが苦手であれば、毎日、ワンピースにしてしまうのも手ですよ。ワンピースは、それ一枚で完成された形だから、さっと袖を通すだけで、最強最速のおしゃれが完成します。
━━おしゃれが苦手な人の場合、そのワンピースを選ぶのさえも難しいという場合も……。
野宮:確かに、ワンピースといっても、シルエットや素材感によっても雰囲気はさまざま。最初に何を選んでいいか迷うならば、「リトル・ブラック・ドレス」を選べば、失敗がありません。そして常に信頼のおける店員さんの相談することをお忘れなく。
シンプルな黒のワンピースが1枚あれば、アクセサリーやスカーフなどの小物を変えるだけで、カジュアルにもフォーマルにも活躍してくれるから、ワードローブに加えておいて損はないです。
━━平凡な人が黒いワンピースを着ると、無難な印象でまとまってしまわないですか?
野宮:そんな時こそ、赤の出番! 赤は大人の女性を素敵に演出してくれる色ですから、差し色としてバッグや靴、アクセサリー、口紅で取り入れれば、コーディネートがたちまち華やぎます。
ファッションとメイクの基本3原色は、赤・白・黒
━━ファッションは、色選びも重要ですね。
野宮:服もメイクも、基本のカラーを赤・白・黒に決めておくと、どの色の組み合わせで失敗することがないのでオススメです。
歌舞伎のメイクもこの3色ですし、赤・白・黒の組は昔から日本人が大切にしてきた色の組み合わせ。
この3色をベースに、全身黒ずくめのファッションのときは、そこにゴールドやシルバーの輝きをプラスしてもいいですし、首元にパールの白を加えるとレフ板効果も手伝って、表情も明るく見えます。
━━野宮さんといえば赤い口紅がトレードマークですが、前作『赤い口紅があればいい』に続き『おしゃれはほどほどでいい』でも、女性を美しくするアイテムとして赤い口紅をすすめていらっしゃいますよね。
野宮:赤い口紅は自分には似合わない、派手すぎる、唇だけ浮いてしまう。そう思い込んでる人が、すごく多いのです。でも、自分に似合う赤い口紅は顔色を明るくしてくれる効果がありますし、カジュアルな服の時でも、眉を描いて赤い口紅を塗るだけで、こなれ感やきちんと感を演出できるとても優秀なアイテムなんです。
もし、手元にある赤い口紅が似合わないと思ったら、諦めずにどうして似合わないんだろうと考えることが、エレガントな女性になるためには必要です。
肌にマッチした赤を選ぶ、紅筆で塗る、グロスで色を薄める、リップラインをとってしっかり塗る、手持ちの口紅と色を混ぜて塗る。そうやって自分に似合う赤を引き寄せていくことができると素敵に見えますし、ファッションが楽しくなってくると思いますから、途中で諦めないことが大事なんです。
いつでも愛のある選択を
━━なんだか、新しい一歩を踏み出せそうな気がしてきました! 最後に、これからおしゃれになって素敵な毎日を過ごしたいと願う女性たちに、メッセージをお願いします。
野宮:私は、迷うことがあった時、「そこに愛はあるか」を基準に考えるようにしています。他人や世間がどうこうではなく、自分の心に曇りのない気持ちこそが愛。この服が好きか、愛着が持てるかが、大切です。
そしてそれはファッションだけでなくて、生きることも同じです。この仕事に愛を持って向き合えるか、周囲の人に愛情を持って接しているか。愛あるものにこそ価値がある。そこを忘れなければ、おのずと後悔のない選択ができると思います。
おしゃれを追求する過程は選択の繰り返しで、迷うこともあると思いますが、そんな時にこそ基本を大切に、愛ある決断をしてほしいと思います。
おしゃれは、女性としての自分を大切に扱うことです。そして、今の自分、今この時間を楽しんでほしいと思います。
(取材・文:今富夕起、撮影:青木勇太)